石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

『コント「お前、ホンマ最低やな!」王決定戦』雑感

 東京に行くことが決まったので、何かライブはないかと探していた時に、見かけたライブタイトルと座組に惹かれて行ってきました『コント「お前、ホンマ最低やな!」王決定戦』。その感想と防備禄です。
 MCは、レイザーラモン。MC仕事は年に一回しかないらしく不安だということに加えて、HGが趣味の柔術のスパーリングで喉を潰していた(RG「趣味で柔術すな」)のだけれども、出演している芸人に対して、キングオブコントで見たあのネタは面白かった!といった舞台袖やテレビで見たであろうその芸人への知識や優しさを持って接していたので終始温かく、そしてそれがうまい具合にネタの最低さを引き立てるという台風が出来るメカニズムのような相乗効果を産み出していた。
 披露されるコントのコンセプトもさることながら、ネタ尺が8分というのがとても良かった。実力者達のネタなわけですから、八分でも強度が違って飽きさせず、優勝のかもめんたる以外の全てのネタも本当に面白かったです。こういう言い方はあまり好きではありませんが、コスパ良すぎでした。二回目があればぜひ行ってみてください。
 以下、ネタばれありの覚書。

ザブングル『バイトの面接』
 トップバッターでもあり、ライブの趣旨を説明するに相応しい、オーソドックスな「お前、ホンマ最低やな!」なネタでした。これを若手がやってもあそこまで面白くはならないはず。20年選手の力を見ました。
このネタは、KOCの予選で引くほどスベったとのことだったのだけれども、この日にウケたことで闇に葬られずにすみました。
 ちなみに、レイザーラモンの二人は、加藤に「カッチカチやぞ」「悔しいです」を振らずに、松尾に徳永英明を歌わせていました。

・空気階段『渡辺篤史の建もの探訪
 ラフターナイトで年間チャンピオンにもなったほどの実力の空気階段のコント。建物探訪に来た渡辺篤史が、家主の奥さんと犬、最後には家主を殺して犯すという、タランティーノでもどれか削るだろう、「これが俺らの、けものフレンズや!」という咆哮が聞こえてきそうな単独でも出来ないネタ。例えば、このライブの二回目があったとして、同じネタをやったとしても、誰も文句は言えないほどに「お前、ホンマ最低やな!」だけで言えば図抜けて一位なコントだった。
 何より怖いのは、ネタを書いているのが、水川かたまりというかわいこちゃんの方。
客席で悲鳴をあげる人が批判されるけど、コントで悲鳴が出てもむべなるかな、という感じだったし、むしろ誰か悲鳴をあげろと思った。余談ですが、ラフターナイトのエル・カブキのネタで神田うのが何回も結婚式をあげているというくだりが出たときに客席から小さな悲鳴が出たことがあるのですが、あれ以外の正しい客席からの悲鳴を僕は知りません。
 空気階段は、わらふぢなるおと合わせてコントが面白いコンビなので、いずれはKOC決勝に上がってくることは間違いないと密かに思っています。

・マツモトクラブ『ホームにて』
 バンドを辞めて地元に帰ることになったバンドマンのところに、元のメンバーが駆けつけて別れの挨拶を告げるも、実は・・・・・・という前半の多くをフリに使った贅沢なネタ。そんな信頼されているマツモトクラブだから見られるコントは、しっとりとしたビターな「お前、ホンマ最低やな」だった。
 次はツーマンライブもやっている、ルシファー吉岡とのコンビで出てもいいかもしれない。
 
かもめんたる『元彼』
 単独か何かですでにあるネタなのでしょうか。今回東京に行ったのは、バナナマンの単独ライブが理由だったのですが、前後でライブを探している時にかもめんたるが見られるこのライブに気付いた時はとても嬉しかった。ラッキーかもめんたるは、ラッキーのなかでも上位に入ります。その位、かもめんたるが好きなので、何の不安もなくネタを見たのですが、やっぱり面白すぎますね。
ネタは、家でくつろいでいる槇尾が、携帯電話の着信音で彼女が携帯電話を忘れていることに気付く。男からの電話だったので出て、自分は彼氏だと伝えるも、元彼だと名乗る男はそれを「別れた彼女が自分を諦めさせるために声色を変えて男のふりをしている」と言い張ってきかないというものでした。演技力、構成、ボケの精度とパワーと重さ、どれをとっても納得の優勝でした。
 ちなみに彼女の元彼が何だったら嫌かというと、自主製作映画を撮っていたら嫌だろうということから着想を得て作られたコントとのこと。
 改めて思いましたが、かもめんたるは、爆笑問題デビュー時のコント「進路相談室」や初期のバナナマンのような、じめっとした質感を持った陰湿なコントをやらせたら随一ですね。相手を追い詰めるネタはまだあれども、そういった感触のコントはほとんど消え去ってしまっているように思えるので、突っ切っていってほしい。最高です。

ジャルジャル『オーディション』
 福徳が扮したチャラ男番長というピン芸人が、ネタ番組のプロデューサーである後藤ところにオーディションを受けにくるというネタ。予想通り、ピン芸人は面白くないネタを見せるのだけれども、そこからの展開がまさに唯一無二のジャルジャルのコントで面白すぎた。あのグルーヴはジャルジャルしか出せないですね。ちょっとよだれ垂らすくらい笑ってしまった。噂では、作ったネタが五千を超えているらしい。衆生を救う千手観音様の五倍。だからなのか、ジャルジャルのネタを見るたびに、他の人達のネタでは到達していないところに触れられる気がする。
 通な見方としては、福徳が変なキャラクターをやっている時、後藤の“無”の表情に注目することです。あれは絶対に笑ってしまう。散々くだらないことをやった後にカタルシスを持ってくる構成まで含めてお見事でした。
秋から単独始まるみたいなので、とても楽しみです。

さらば青春の光『臓器売買』
 明転板付きでヤクザの森田が電話口に向かって関西弁で捲し立てるだけで、赤坂見附が一気にどや街の空気になる。森田がいる事務所に入ってきた東ブクロは、ギャンブル依存症で、借金が出来たので自主的に臓器を売りに来たのだけれども、かつすでにもう売るところは無いくらいに体がすっかすかな最低な奴というコント。
厳密に言うとボケていない東ブクロに、一つも外さずにツッコミまくる森田という、さらば青春の光のスタイルを貫いたコントは爆笑だけでなく、見ていて気持ちがいいです。
童貞のスティグマを背負っているのでスキャンダルの件で一切笑えなくなっていた東ブクロに対して、いつの間にか笑えるようになっていることに気付いたのも収穫でした。
 
天竺鼠『抜き打ちテスト』
 天竺鼠は最低なやつというよりは変な奴の方(コント「何かヘンな奴、来たぞ!」王決定戦)じゃないかと思っていたのですが、やはり今回の出場者のなかでも一番一筋縄でいかなかった。
教師の川原が抜き打ちテストを行い、生徒の瀬下がそれを受けるというネタの始まりは、オーソドックスなネタかと思わせておきながら、その正体は瀬下が空気椅子のような状態をキープさせられるというハードな筋肉いじめコントだった。
 椅子がなくても足を曲げたら椅子に座っているということになるというコントにおける叙述トリックのせいで、足の痛みを耐えるために大声を出したりする瀬下が、テスト中に騒いでいる最低な奴になってしまうという入り組んだ構造を持ったネタでした。
 下半身の筋トレを全くしないのでその仕組みに気付くのが遅れたことが悔やまれます。

バナナマン単独ライブ2017「Super heart head market」感想

 バナナマン単独ライブ2017「Super heart head market」見てきました。
 2年ぶり2回目という清水健太郎の出入りみたいな頻度のバナナマン単独ライブの座席はまさかの1列目センターから横3席以内のほぼセンターと最高の席でした。先に席に着いていた隣の人が、座ってすぐの俺に、ヤバイっすねと話しかけてきたので、ヤバイっすねと笑いかけるという一幕があった。
 ライブはというと、単純に、ここ数年で一番のライブだった。「あんなに忙しいのにライブをやっている」ということを差し引いても、いや、差し引けるからこそ、出色の出来栄えだとファンとして誇れます。二時間半近い公演時間を余すことなく楽しんだライブの帰り道は、自分が今一番面白いと思っている人達が、今一番面白いと思っているものを自分がこんなにも楽しめたという幸せの余韻にひったひたに浸かってふわふわしてしまっていた。なので、これから書くことのほとんどは、感想というよりは「何で最高なのか」という自分のための理由付けでしかない。
 一本目のコントで流れてきた蝉の鳴き声と、開場を待っている時に劇場の外で聞いていた蝉の鳴き声が混ざり合って、現実と虚構の壁を溶かしながら始まったライブは、「Super heart head market」といういつもとちょっと違う不思議なライブ名に相応しく、日常からそう離れていないところにいるコントの登場人物たちの心と頭は、ほんのちょっとの非日常の中で困ったり、ぶつかったり、勘違いをしたりする。
 バナナマンのこれまで演じてきたネタを思わせる題材やワードやキャラが出てきながらも、手癖でこなしているわけでも、集大成というのもちょっと違う、まさしく今のバナナマンというべきものを存分に味わうことが出来た。その中でも特に嬉しかったのは、最近はなりを潜めていたブラックな部分が見え隠れしたことだった。バナナマンのブラックさは、バナナのシュガースポットと同じで、それはとても甘い甘い蜜の味だ。
 これはきっと、エンドトークで話していたという設楽統が「なんでライブやんないといけないんだよ!」という怒りモードに入っていたことと、『バナナムーンGOLD』で放送されたラジオコントSPが理由にあるのだろう。来年以降の単独で、もっとブラックなネタが一本でもあれば、ギュッと締まった一味違う単独になるんだろうなと思うととてもわくわくする。
 日村勇紀がこれまでと変わらずにバナナマンの動を担当していたことは言うに及ばず、何といっても、「Super heart head market」は設楽統の魅力が存分に詰まった設楽統祭りだった。設楽統の心と頭が舞台上に散りばめられていた。全員が違うキャラクターで、未だに、あのコントの衣装おしゃれだったなとか、あのコントのビジュアル最高だったな、あのコントでの仕草を真似してえな、あのコントであんなことしてくれたと反芻している。
 全てのネタが本当にどれも良かった。バナナマンの単独ライブは2013年の「Cutie funny」で二周目に入ったと、それで卒論を書けるぐらいに考えている。爆笑だけを目的にしていないコント。それが今回の「Super heart head market」で到達していたように思えた。それはきっと、バナナマンの魅力の一つである「関係性」が昇華されていて、どのネタからもそれが感じられたからだ。赤えんぴつですら、いつもより優しく感じられた。特に、とあるネタでは登場人物二人の何年間もの付き合いが見えて、バカバカしいシーンなのに笑い泣きしてしまいそうになった。
 プレイヤーにキャリアハイがあるように、ファンにもキャリアハイがあるとしたら、バナナマンファンは今がその時なんじゃないだろうかとたまに思う。もちろんそれはプレイヤーのキャリアハイとも合致していることが多いのだろうけれども、好きになりはじめて色々と情報を収集してしばらくして好きの度合いが落ち着いたあとに、また何かをきっかけに好きになるということがいかに達成されがたいことか。
 そのくらい、最近のバナナマンは『乃木坂工事中』での「ヒム子どっきり」や、『日村がゆく!』でのバラエティモンスター増強プログラムを受けている姿だったり、『バナナムーン』では日村勇紀ホールインワンを出したことで生まれたTシャツや帽子を作ったりする流れや、先述したラジオコントだったりと、ファンにとっても最高な状態にある。
 個人的な事をいえば、今年の4月から新しい職場になったのだけれど、明日初出勤だという日曜日の夜に『せっかくグルメ』を見ていたら出てきたアジフライが無性に食べたくなったので、近くの食堂で少し前のバナナムーンを聞きながら、一人でアジフライ定食を食べていた。食べ終わってお金を払い、帰る道すがら信号が変わるのを待っていると、曲対決で設楽統が選曲した奇妙礼太郎がカバーした「悲しくてやりきれない」が流れてきた。その時に、やったるからな、という逆説的な力が湧いてきたのを覚えている。
そんな中でのライブは、期待していながらも、心の隅には「楽しめなかったらどうしよう」という不安があった。そういう意味で、ある種の到達点のようなライブを一列目で見ることが出来て、神様的な何かに「いや、全然好きでいてくれて大丈夫だから」と背中を押されたような気持ちになった。
 だから、まだまだ好きでいられる。
 来年まで、笑顔でさらば出来る。

石を掴んで潜め的ベストラジオ2016

毎年おなじみ、私的なラジオの年間ベスト10です。
暇つぶしにどうぞ。

【10位  ゲスト:ハライチ/『バナナムーンGOLD (2016.12.24)』】
 2016年10月に、2年間半続いたデブッタンテから、深夜12時からの一時間放送へと昇級し、うしろシティとハライチはそれぞれの単独の番組が始まり、ハライチのラジオは、『ハライチのターン!』として生まれ変わった。何が良いって番組名がいい。
『ハライチのターン!』自体は、実質の放送時間が三倍になっても、間延びすることもなく、ネクヤンこと根暗ヤンキーである岩井のエッジの効いたトークやクレイジーなトーク、澤部の気付かれた話や気付かれたかった話などと毎回面白い放送となっている。その中で、「ションテンガリアー」「メゾネットタイプ圧勝」「お前は俺の木偶なんだからよぉ」というキラーワードも生まれた。
そんなアベレージヒッターがあるからこそというのもあるけれど、とりわけ本放送よりも、バナナムーンGOLDに、ハライチの二人がゲストで出た回が良かった。
 前の週に急性胃腸炎で倒れてしまった設楽を助けられる人をゲストに迎えるということで、テレビ出演本数2位である設楽に次いで3位のハライチ澤部と、その相方である岩井が呼ばれた。
澤部をメインに呼ばれたと思いきや、「ピン仕事決まったかと思ったら、バナナさんなんだよ。」と岩井が言うように、唯一岩井をピンで呼んでくれるコンビであるバナナマンだからか、トークでも終始、岩井がフィーチャーされていた。
 『ハライチのターン』ではリスナーからの同じ質問には頑なに答えなかった、設楽からの「どういう人を見てお笑いになろうと思った?」という質問には「完全に爆笑問題さん見て入りました」と答え、バナナマンについては、「『登龍門F』とかで見てました。日村さんが女のネタやってました。それをめちゃくちゃ見てました。ブラジャーしててTシャツめくったら胸もまれて気持ちよがって。やめろ!みたいに言って。でも設楽さんが最後お前ブスだなって言ってすげえ怒るっていう」とも答えていた。
 最後はバナナマンとハライチで、私物をクリスマスのプレゼント交換。
 岩井のタヌキの柄の手ぬぐいは澤部に、澤部の家族で藤子F不二雄ミュージアムに行った時にとったプリクラは日村に、日村の美顔ローラーは設楽に、設楽の香水とテニスボールは岩井に当たった。岩井が何故手ぬぐいを持っていたのかについては、実は、設楽が手ぬぐいを好きということを知った岩井が、それに憧れて手ぬぐいを集めるようになったという。可愛いね、岩井。
 澤部が「おぎやはぎさんもそうですけど、その世代は好きなんですよ、岩井のこと。」と言う様に、これからも隠れて愛される岩井であってほしい。

【9位 芝浜論/『東京ポッド許可局 (2016.1.10)』】
サンキュータツオが、古典落語の演目である芝浜についての考察を披露した回。「芝浜」といえば、立川談志が得意とした噺のひとつで、酒を飲んで仕事に行かなくなった魚屋の勝という男が、妻に仕事に行くように言われて、ひさしぶりに仕事に行ったら芝の浜で当時としては大金の42両が入った財布を拾ったもんだから、家に帰ってきて友人を呼んで宴会を開いてしまう。しかし、翌日、奥さんからは「お金を拾ったのは夢だ」と言われたことにより、反省し、心を入れ替えてお酒を絶ち、真面目に働くようになる。三年後の大みそか、立派な店も持ち、幸せな年末を過ごしている。そんな時に奥さんから実はお金はあった、こんな大金があったらあんたはもっと駄目になるからと思って隠していたと言われる。そこでひと悶着あったものの旦那は妻を許し、主人は奥さんからお酒を勧められるが断ってしまう。
「よそう、また夢になるといけねえ」
サンキュータツオは、この有名な「芝浜」と言う落語にある違和感を引っかかりに、理屈を重ねて解体していく。
例えば、何故腕もよく、夫婦仲のいい漁師である魚屋の勝がお酒に溺れて仕事に出なくなったのかについては、子供を亡くしたことによる失意からと推理する。
そしてサンキュータツオは「実は言葉にはなってないけど、そういう二人の関係が一番奥底に流れている。ということを考えるとですよ、あると思っていたものがなかった、出来ると思っていたものが出来なかった、これがそのまま財布という形で象徴されているんですよ。」「(芝浜は)お金の執着から脱却する話なんですよ。夫婦にとって子供が出来なかったということの呪縛から解き放たれる話だったんじゃないかな」と解説する。
他には、芝浜が三遊亭圓朝作であると言われている通説に着いても、三遊亭圓朝の全集に入れられていないことなどを根拠に否定していく。理屈に理屈を重ねていくだけでなく、そこから行間を読むというまさに、東京ポッド許可局らしい知的好奇心をビンビンに刺激する放送でした。

【8位 若林のキューバ一人旅/『オードリーのANN(2016.8.7)』】
 オードリーの若林が、一人でクーバに、いや、キューバに一人で旅行に行ってきたトークゾーンは良かった。いつもなら、吉留明宏akaビックスモールンのゴンでも引き連れていくのだけれども、今回は一人で行ってきたという。
 社会主義国家なので道路には広告がなく、あってもチェゲバラの名言などの看板があるだけで暗いというようなキューバの街並みや、人見知りのガイドのマルチネス、闘鶏場とホセ大佐、ビーチで島崎敏郎みたいになってしまった話なの、たっぷりと旅行の話が聞けた。
 若林が「(国営のキューバンジャズで凄い有名な)サックス奏者の演奏を聞きながら」モヒート飲んで葉巻吸って、キューバンジャズ聞いてたら」に春日が「生意気だな、早くホテル帰れよ!」と突っ込んだのは痛快だった。
 雑誌『ダ・ヴィンチ』での「どいてもらっていいですか?」でもキューバ旅行の話を書いていたので、合わせて読んでほしい。

【7位 放送1,000回記念/『爆笑問題カーボーイ(2016.6.15)』】
 1997年の4月に始まった爆笑問題カーボーイが20年目に突入した今年、ついに放送1,000回を迎えた記念すべき回。リスナー歴としては2000年に聞き始めたので、16年になる。オープニングトークはたっぷりするのかと思いきや、これまでの放送の振り返りをあっさりと終える。
 太田が「振り返るほどの歴史じゃないと思うよ」といったように、振り返りも20分ほどで終えて、その後はゲストに来た南海キャンディーズの山里相手に『テラスハウス』の話を延々とするところが太田らしい。
 第一回のオープニングトークの音源も流されたその後に、田中が「今日で放送1,000回!火曜JUNK!!爆笑問題カーボーイ」と言った後に、過去の音源を使った特別なOPが流れた。
 『太田「初めて出るからまだピカピカなんだよ」「(田中)バカじゃねえの、お前は!」「(太田)プーライ!」「(太田)実は今日、田中がいません。金玉腫れちゃいまして」「(田中)98ガール!」「(太田)みんなそれで謝ってよ。ディレクターの小塙も。」「(小塙)もうしわけありませんでした。」「(太田)あれ〜、みょーに変だな〜」「(田中)メロンはだって美味しいじゃないか!」「(太田)美味しくない!メロンは他人の評価によってお前は好きなだけなの!」「(田中)でですね、4月8日の火曜日深夜から、爆笑問題Upsがスタートー!やっほー!!」』 
爆笑問題カーボーイが素敵なところは、毎回、最後の最後にサザンオールスターズの「素敵な夢を叶えましょう」をバックに太田のショートコントがあって、それでブースの中が笑って、歌が流れて終わるところだ。毎回笑い声のあとに少しだけしんみりして終わるラジオはまだまだ続く。

【6位 ゲスト:古館伊知郎/『ラジオビバリー昼ズ(2016.6.13)』】 
 2016年に一番注目した人といえば古館伊知郎なのだけれど、その進撃の狼煙となったような放送。ある意味、さながら韓国映画の『オールドボーイ』のように十二年間監禁されていた男と、70歳に近付いてもなおマシンガンのように喋る男の殴り合いのようなトークの応酬は講談のようで、油断すると振り落とされて、音を聞いているだけになってしまう。
2016年3月末に、古舘伊知郎は十二年勤めた『報道ステーション』を降板し、その最後に、八分ほどの一人語りをしていた。
後任の富川アナへ期待する言葉や、キャスターを勤めることとそのなかで抱えていたであろう葛藤について、淀みなく話していた。例えばそこには本音しかなかったのかどうかを知る術はない。ただ十二年の代償が八分ぽっちだったとも言えるのじゃないかと思うと、テレビという器の有り様について色々と考えてしまう。
古舘伊知郎は最後に、細川たかしの『浪花節だよ人生は』の一節「人の情けにつかまりながら、折れた情けの枝で死ぬ」を引用し、「死んでまた再生します」と言った。我がに対しては「死ぬための資格を取れ、話はそれからだ。」と思った。
それから古館のテレビ進出は、『すべらない話』の出演を筆頭に、楽しくもある反面、どこかでその他の出演者に対してかかってこい、「殺してみろ」と言っているようにも思える。  
月に一回ではあるものの、古館伊知郎のANNGOLDも始まっているので、2017年はテレビと合わせて、楽しんでいきたい。

【5位 ゲスト:ウーマンラッシュアワー中川、バイきんぐ西村瑞樹『オードリーのANN(2016.4.24)』】
 春日が、ウーマンラッシュアワー中川とバイきんぐ西村でキャンプに行ったら、中川の左手が燃えた話(2016.4.3)を経て、その二人がゲストとして登場した回。
中川は何度もゲストとして来ていたので、そのやばさはリスナーも周知のところではあったのだけれども、西村がブースに来るのは初めてとなる
どうにか西村から何かを引き出そうとする若林のジャブに、西村は「ぼく、誕生日にシビアなんですよ」「わたくしもチャンピオンの一味ですよ」と答えるなどして、登場してからずっと、空ぶかしとフルスロットルのきわをナチュラルに繰りだす。その攻防はたまらないかった。中川の「チャンピオンと言われたら嬉しいけど、チャンピオンじゃないと言われても別に悔しくは無いですよね」もたいがいだけれども。
 番組中、西村の彼女から突然メールが来て、「風呂上がりに血行をよくするためにバレリーナのようにつま先立ちをしている」「ローションを食糧庫に保存している」などが暴露され、西村の彼女に電話までかけるも、彼女の「(西村の好きなところは)まっすぐな性格」で安定のガチャ切りで終了。
 若林の落ち込むことはないですかという質問への「熱めの風呂入って、ちょっとストレッチして、血の巡りをよくしたらすぐ寝れる」という西村の答えは2017年の指針としたい。
 2016年の後半から、ネタ番組だけでなく、バラエティでも、ジョーカー的に出てきてはその底知れなさがピックアップされつつあるので来年も楽しみです。
 おまけとして最後に、瑞樹さん関係で一番はっとした『ダウンタウンなう』でのダウンタウン松本の言葉を紹介します。
「(西村はポンコツだけど)ただあいつは噛まない。噛んだりネタが飛んだりってのがない」。
 
【4位「アルコ&ピースの友達の、ピースとハイライトです。」/『爆笑問題カーボーイ (2016.9.28) 』】
 アルコ&ピースの『アルコ&ピース D.C.GARAGE』の初回放送が終った直後の、『爆笑問題カーボーイ』は番組名物、50分超のOPトークだった。とあることを受けて、太田は、様々なこと、だけれども一点に集約する話をした回。過去にやっていた「太田はこう思う」というスペシャルウィークの企画を彷彿させられた。
はじめは、古館伊知郎と京都へとロケに行った話から始まり、仏教の話へと移る。
 「(仏様が)悟りを開いたときに、あ、この境地を弟子に伝えないといけないってときに、どうしても言葉っていうものが必要になってくる。仏像であったり。でもそれって、どんどん真実から、真理から離れていくんだけど、でも人間ってのは不器用なもんで、言葉ってものを使わないと、それを伝えることができない。それって自己矛盾じゃないですか、言ってみれば。」と太田は言い、それはアインシュタイン相対性理論を思い付いた時のような学問も一緒だと話す。
 そしてそれは、人間は一生かけて赤ん坊にもどるようなもんだと続ける。
 「赤ん坊の時にあー!!って泣いて、出てきたときに、あー!!って泣いて、あれ、苦しくて泣いてるんですか。全部ですよ。あれが全部なんです。苦しみも悲しみも恐ろしさも喜びも、何もかも人間が誕生する生命が生まれたってことを表現しているのが赤ん坊なんです。おぎゃあって泣くのが、あれが全てなんです。でも、あれをそのまま伝えることができないから、人間は言葉を学ぶ。実は俺達がこうやって喋っているのはあの赤ん坊の泣き声なんです。泣き声を分割して、悲しみです、喜びです、苦しみです、ちびです、かたたまです!あらゆるところを遠回りして、おぎゃあに戻ろうとしてるんです。」
 そして、柳田國男の体験を受けての小林秀雄が講演で話した「学問をする人は、こういう感受性がないとやれないんです。民俗学なんてものはこういう感受性を持っている人じゃないと、学問なんてもんは出来ないんです」という言葉を引用してこう続ける。
 「よく勘違いしがちなのは、表現っていうのは、表現の豊かさ、表現のみが大切って思うけど、そうじゃないんです。本当に大切なのは、受け取る側の感受性なんです。受け取る側の感受性を持つ人がどれだけその人の周りにいるかっていうことなんです。だから、どんだけ自分の話を面白いと思って聞いてくれるぐらいに、魅力的な人間であるかっていうことが、コミュニケーションが達者な人なんです。つまり、受け取ろうとする人が多い人、赤ん坊なんです。」
 そこから、爆笑問題の漫才とネタ作り、女の子同士の話、立川談志の「肉体と精神」、三遊亭圓朝の落語作成、『ENGEIグランドスラム - フジテレビ』での三遊亭円楽の「猫の皿」の話になっていった。それは、偶然かもしれないけれど、サザンオールスターズの『ピースとハイライト』にも通じるものだった。
 CMも流さずに太田が話し続けた後に、田中が言ったのは「おしっこしたくてしょうがない」。落語か!!
 
【3位(最終回)春歌アーティストの乱『アルコ&ピースANN0(2016.3.25)』】
 単発放送が2012年なので、足掛け五年に亘って放送したことになるアルコ&ピースのANNシリーズの最終回。放送前の『おぎやはぎのメガネびいき』では、番組のADが、出待ちに備えている有楽町のジョナサンで放送前から待機しているアルコ&ピースのリスナーをレポートしてそれを放送するなど、否が応でも高まっていく。
深夜三時になって始まった最後の放送では、「春歌アーティストの乱」という、アーティスト同士が喧嘩をするという、季節ごとに行われるお決まりの企画が始まる。お決まりだからこそ、常連のリスナーだけで振り切った放送が行われた。
アーティストの乱という企画自体もともと混沌とした生もののメールテーマなのだけれど、最終回というふわついた気持ちの中行われたものだからなのか、「喧嘩したくなったから」という一番やばい理由で復活したゆずの岩沢というカードが飛び出すという最高の出だしを切りながらも、番組のOPの曲名にひっかけたにステレオマン、そこから派生したモノラルマン、CDマン、お味噌汁ごくごくマンが登場し、アルコ&ピース二人が声をそろえて「最後だっつってんのに」と頭を抱える。
結局、優勝は剛腕でねじ伏せるようにキマグレンとなったのだけれど、その時の酒井の「キマグレンだああああ」という咆哮は忘れられない。
最終回が、粘土くらい跳ねなかったという事実は、アルコ&ピースANNシリーズの最終回に相応しく、すがすがしく爆散したと胸を張って言いきれる。
 その前の週の総括スペシャルで終われば有終の美を飾れた気もしないでもないけれど、そんなことは関係ない、そう、僕らはもう、一人じゃないのだから!
 実際、そのまま半年後の10月に、TBSで『アルコ&ピースのD.C.GARAGE』が始まるのだから、たまらない。同番組ではまだまだなりを潜めているけれども、イベントではコロッケの早食いをやるなど、静かに狂っているのでまだまだアルコ&ピースのラジオに夢中になる日が続きそうだ。

【2位 「えー、ドナルド・トランプです」/『爆笑問題カーボーイ(2016.11.16)』】
 太田の母親の告別式の話をOPトークでした回。
 喪主の挨拶で「えー、ドナルド・トランプです」と言ったのが評判悪かったという話から始まったのだけれども、終始ブースは笑いに包まれていた。
 ああ、太田の母っぽいなと笑ってしまったのは、田中は太田の母の印象は煙草を吸っていた姿を振り返ったところだ。
「ほんとに煙草吸ってたわー。お前のお袋の一番のイメージはコタツで老眼鏡かけて咥え煙草で小説読んでる」「細くて長い煙草(モア)をこう吸ってね、灰皿が火鉢みたいになってる。どんだけ、吸うんだよ、お前ら家族っていうさ。」
 太田は、今にも母が亡くなりそうだという時に、そばにいることが出来たという。
「うちのお袋ね、若い頃、越路吹雪さんのLPレコードそれこそ聞いてて、一回でいいからコンサートに行ってみたい。ただ、越路さんのチケットって取れなかったんです、当時。結局越路さんも早くに亡くなっちゃったもんですから。あーでも、好きだったなーって思って、俺確かi-podに入れてたけどどうかなって探したら出てきたんですよ。慌てて耳に入れて、お袋の。でー、『愛の讃歌』。俺もかたっぽで聞きながら、段々数字下がってきて、『愛の讃歌』終って、『バラ色の人生』始まって、ちょっとずつちょっとずつ下がっていって、『バラ色の人生』終わると同時にぴーって息が、こと切れました。これはもうね、息子として見ててもね、立派な女だなと思いました。」
 全く湿っぽくなかったこの放送を聞いている間、太田の優しさをずっと感じていた。そして、優しさというのは、例えば人種や国境だけじゃなくて時間やあの世とこの世の壁を無くすのだと思った。
 感受性の話も、今回の放送も、一貫して爆笑問題らしさが出ていて、そしてそれが1,000回目よりも後のものであるということは、嬉しかった。
 あとは、何度か会って仲良くさせてもらっている方がまさかの『爆笑問題カーボーイ』のメールNo1グランプリで、優勝するということが驚きでは一番でした。プーライ!!

【1位 ♯160/『くりぃむしちゅーANN(2016.6.17)』】
 2008年12月末に、惜しまれつつという言葉では足りないほどに愛されていたにも関わらず終了した番組『くりぃむしちゅーのANN』が、7年半ぶりに復活した。
 長い間待たされていたことによる不安は期待と安心と同じくらいあったのだけれど、
そんなものは、開始から数分で飛び出した「タマキンの中で熟成させていた」「カチコミにいく」「勘で食後二錠よ」という今後二十年は味がするパワーワードによって吹き飛ばされた。そして、リスナーは一日たりとも忘れていない「ガネック」や「例えてガッテン」などを綺麗さっぱり忘れていた上田にリスナーはカリカリさせられたものの、この七年半間、くりぃむANNは続いていて毎週聞いていたような気持にすらなった。
 パネェ質問を上田にやって、コーナー「例えてガッテン」をやって、最後の最後に、有田が歌う銀杏BOYZの「夢で逢えたら」を歌っている間に、あっという間に二時間の放送は終わってしまった。
 「ちょうどこのラジオを聞いている期間はちょど人生のなかでも底だったな」という自分のしょうもない思い出に浸る暇もないほどに、くだらないだけの二時間だった。
 それからしばらく余韻に浸っていたのもつかの間、半年後には♯161(2016.12.6)が放送された。その回では、直前に有田が結婚を発表していたというサプライズもあったり、裏番組の爆笑問題カーボーイでは、麻生久美子verの「夢で逢えたら」も流されるという粋なこともあった。
 ニッポン放送よ〜、またやってくれるわけにはいかないか。

【総評】
今年は、何といってもラジオ業界的にはラジコのタイムフリーとシェアラジオが始まるなどしたという革命的な出来事がありました。
 個人的には、時間を取れなかったことだけでなく、ラジオの音源を聞いているプレイヤーをi-pod touchからウォークマンに変えたことや、実験的にi-pod shuffleに変えてみるなどしたけれどもその変更があまりしっくりせずに、聞く時間が少なくなってしまったことというのが大きかったです。そのため、新しく始まったラジオなどもあまり聞けずに単発の特番をチェックする程度でした。ニューヨーク、三四郎星野源を聞けていないですし。
 エル・カブキについては、マイナビラフターナイトでの優勝を逃してしまったために、特番をするチャンスが手に入らなかったということにがっかりしていたら、「お笑い有楽城」で優勝して、ANNRのパーソナリティー権をゲットして、これから放送される予定であるということが嬉しかったです。
 僕から以上!

エル・カブキ 単独ライブ「年刊実話」感想(アンケートに変えて。敬称略なのは自意識が過剰だから)

 エル・カブキの単独ライブ「年刊実話」を見てきました。
 今年一年一番楽しませてもらった漫才師の久々の単独ライブ、平日開催とか知ったこっちゃねえ、行かなきゃハドソンだろ!ということで行ってきました。
 ライブが始まり、エル・上田が大仁田厚に、デロリアン林が昔のビートたけしに扮していることに気付いた時は、やばい、ビタ一文分からないぞと焦りはしたものの、エル上田が電車での痴漢への護身術としてチキンウイング・アームロックを伝授するという漫才が始まると、不安は一気に消えて恍惚だけが残り、90分間ずっと笑っていた。
 「年刊実話」というだけあって2016年というネタの宝庫の年を、90年代後期から少し前までの芸能界のアラや、インターネット上にスペースデブリの如く漂う一行を添えながら、縦横無尽に駆け巡った90分一本勝負な漫才は、これが空中殺法を超えた四次元殺法というやつかと思わせるもので、一気にこの一年を振り返ることが出来た。
その他のネタは、解散報道から大麻、不倫といったものから、御馴染み、芸能人を掘り下げるものであったりとTBSラジオのラフターナイトで聴いていたものから、単独ライブならではの少し崩したネタまで見られて大満足だった。でたらめな手話を披露したタマサンカ・ジャンティのことを「シュワちゃん」という最高のネタが見られなかったのだけが心残りだった。
 エル・カブキはネタのマニアックさと、毒っけに焦点をあてられることが多いけれど、漫才のテンポもとても心地良い。これは漫才が上手いということもあるけれど、根っこにある爆笑問題が大好きという小さな共通点が共鳴しているような気がして、嬉しくなる。
漫才の合間に流れる幕間映像もよかった。プロレスネタだけでなく、90年代のセンスが爆発している「マネーの虎」のアイキャッチのパロディの幕間映像もよかったのだけれど、特に、水が流れ落ちている滝の映像が流れて、何だと思っていたら、最高のタイミングで「これまでの情報量が多すぎたため、癒しの映像を流しています」というテロップが流れたのは最高だと思ったと同時に、爆笑問題が単独ライブを終えたあとに、見に来ていた糸井重里が楽屋で爆笑問題の二人に「もう少し抑えてくれないと、疲れるよ」と言ったというエピソードを思い出した。
間の緩急で笑いを取る漫才は何千本と見てきたけれど、情報量の緩急で笑いを取る漫才は始めてみた。
実際笑い疲れてしまって、不意に時計を見てみた時に、一時間しか経っていなかったのには得も言われない興奮を覚えた。
 エル・カブキの漫才で、「そんなわけねえだろ!」とか、「バカなこと言うなよ!」という類のツッコミが出ないのは、デロリアン林が本当のことと、言わないでもいいことしか言ってないからで、エル上田はそんな林のことを否定しない。誰にも伝わらないだろ、という点でのみ、咎めている。彼らの嘘のない漫才は、つい先日も職場で隣の席の女性に「土人って言葉を放送している時点で、言っていいってことになりますよね」と言って苦笑いされた自分にとってはとても優しく、職場で冗談を言った後に、すぐに「や、嘘ですけどね」と間を極度に恐れる前座の落語家のような早さで保険を打つ自分にとってはとても格好良く見える。
 終演後は、普段は書かないアンケートに内容のない感想を書きなぐった。 
 その後は友人と合流し、居酒屋で、ビートたけしがタイタンライブで演じた「人情八百屋」の深読みから、バナナマンの単独ライブ「Pepokabocha」、爆笑問題の「歳時記」とかの話を、エル・カブキの漫才に当てられたこともあって、たかだかレモンサワーを二杯飲んだだけのくせに野弧禅の如くに一方的にまくしたてるように話した。
 そんな二時間ほど飲んで、西武新宿線の駅の近くに取っていたホテルへと向かっている帰りに、すれ違った集団を見ると、エル・カブキの二人と、若手と思われる人達だった。
迷ったけれども、この偶然を逃すよりはと、声をかけて、単独ライブが最高だったこと、また来年もやってほしいことを伝えた。
すいません嘘吐きました、緊張して挙動不審になって言いたいことを全く伝えられなかったです。ANNR楽しみにしています、とくらい言えば良かったな。

春が来た!俺はオードリーが爆笑問題の太田さんにスーパーボウルの帽子をプレゼントしていたという情報だけで、新年度を晴れやかに迎えられたぞ!!

 仕事帰りに寄ったコンビニでアイスを選んでいたら、中学生もアイスを買うために横に来た。それを見たその女子の友達が「冬なのにアイス買うの?」と聞いて、「うん、まあ」みたいに明確に答えなかったその女子に対して「わかるよ、冬でもアイスは美味いよな」と思ったのと同時に友達の方には「世の中には一年中アイスを食べないと生きていけない人種がいる」ということを強く訴えたかったけれども、そうすると意味が分からないし、その友達のほうもセックスを覚える季節に自ずと知ることだろうと思い、バニラ系のアイスクリームを手に取った。
そんな冬を乗り越えて、4月が来た。
新年度はバナナムーンのエンディング曲でかけられた松任谷由美の「春よ、来い」を聞いて、今更ながらその天才性に震えてしまったことと、新しいグループへの移動から始まった。仕事自体は変わらないのでそこに問題は無いけれど、移動したグループの女性陣が、挙動や声がエロすぎる人妻、真面目な人妻、非正規雇用なのに仕切っている女、かわいこちゃん後輩、未知数の新規採用という多牌な状態に今から戦々恐々としている。男性陣は、移動に当たってその同期から評判を聞いたら出世欲が強い人と、いないことが多い班長、俺は俺でやはり頭がおかしいので、始まる前から終っている逆キッズリターン状態。
 ツイッターを見ていたら、相互フォローの方が行ったライブの話をしていた。「中MCで上田さんが『最近ラジオリスナーがファンになってくれる。先日も沖縄から来てタイタンライブを観た次の日にエル・カブキを観にインディーズライブに来た人が出待ちをしてくれた』という話をしていて、それが完全に芽むしりさんの事で興奮しました。」ということに、路上アンケートを受けたときほどにこちらも興奮してしまった。実際に自分のことですし。恐らくその方がそのライブに行っていなかったら、千川という土地の風の文学となっていたことでしょう。
 エル上田さんといえば、こちらもツイッターで「全部敵で全部味方という謎の感覚が身に付いた最近だからこれで良いような気もした。」と言っていた。
 俺も「ロンドンとパリを見ているから」というワードが受ける飲み会に助けられながらもその関係性に甘えることはしないようにしようと思った。
新年度スタートです!

小説を某新人賞へと応募した

先日、ここ半年くらい手をつけていた小説を某新人賞へと応募した。
普段思っているようなことやツイッターの再放送みたいなことを文章にして、それだけではなんだからと誤魔化し気味に完全な創作を加えて、無理やりにジョイントさせてみたオリジナルの小説。どうなるかは分からないし発表も忘れた頃に出るという位に遠いので、手応えあり、ぶぱぱぶぱぱぶっぱー!という感じでもないので、何ともいえないふわっとした気持ちになっている。
今まで小説を書いてみようという気持ちはあっても何を書けばいいのか全く思い付かない、書きあぐねているという状況で年齢を重ねてきたわけだけれども、あれ、これをこうすればそのまま小説のていを成させることが出来るんじゃないかと思い立って書き出してみた。
ブログとは全く違う筋力を使うような作業を経て少しだけ書いたものは、粗筋のようなただの文章で度肝を抜くくらいつまらないもので驚いた。
そこからは、自分で大喜利の問題を出してはそれを解くという作業をずっと続けるという日々だった。仮に才能の片鱗があるとしたら、仕事から帰宅して寝るまでの数時間取りかかることが全く苦じゃなかったというところだろうか、なんて自分を鼓舞しながらだったので、楽しかった。楽しかったと言えば報われなかったとしても良しという保険になってしまうのでこれくらいにしておくけれど。
途中途中で詰まった時に、「あれ、他の小説ってどんなやって書かれているんだっけ」と本棚の本を取り出して読んでみると、これがまあ新鮮な気持ちで本を読めたりして、それも小説を書いてみて気付けた。
何にせよ、好きなジャンルのオリジナル作品を作るということで単純にオススメな娯楽の一つだなと思った。

石をつかんで潜め

タイタンライブを見終わった後、同行してもらっていた方と、サイゼリヤに寄ることにした。普二人とも、「たけし見れてよかったですねえ」としか言えないようにぼーっとしたままだった。それから別れて、翌日は新宿で「ココからコレからvol8」見てきました。
去年はバナナマンの単独ライブを見ることが出来たし、爆笑問題の漫才もオードリーの漫才も見てきたし、ビートたけしの落語を見たんだったらこれ以上お笑いって見るものなくないか、と思いながら、「俺はお笑いファンとして余生に入った・・・・・・」とぶつぶつ言いながら見た余生で最初のお笑いは、小島よしおが二体のマリオネットを駆使したネタ「小島リオネット」で、最高のスタートを切れた気がした。
 「ココからコレから」はエル・カブキがゲストに出るということで見に行ったライブだった。エル・カブキはTBSラジオのラフターナイトによく出ていてそれはもう美しい漫才をしているのだけれども、やっぱり最高だった。
どこが最高だったかというと、デロリアン林は、バレンタインではバイト先の子からサラミをもらうという話をした後に「サム・ライミじゃないですよ」と言ったり、企画の時に舞台上がる時に、MCがツイッターと言ってるのを聞いて、「ちょっと〜、古いよ?まだ山路さんの話してるの?」と言ったりと、返す返すも最高だった。
漫才はXJAPANの面白いやつ「運命共同体」や、東京フレンドパークの面白いやつ「来園者」などが飛び出していた。
 ライブが終ったあと、品のない行為だということは知りつつも、共産党議員を刺殺した極右の青年(沢木耕太郎『テロルのすべて』より)の気持ちでエル上田さんを出待ちした。先に綺麗な女性からチョコを貰ってるのを見たので「すいません、チョコないんですが」と俺がつまんないことを言ったら「じゃあダメだよ」と優しく返してくれた。
 東京に住んでいないので、「ラフターナイトでしか漫才は聞けていないけど、大好きだ」ということを伝えたり、そのほか個人的に胸が熱くなる話を聞けたりして、最後に写真を撮ってもらった。俺は鈴村あいりと同じくパブ解禁していないし、自分でも見た事ないくらい気持ち悪い顔して笑っていたのでアップは出来ないけれど、良い思い出になった。
話している間は終始恥ずべき対応だったが、エル上田さんに「大学生?」と言われて、「え?そんな若く見えます?」としょうもない返しをしたのは、俺の中のカキタレ根性が出てしまったのかもしれないと思って、小諸そばであじ天そばを食べながら、悔いた。
家に帰って改めて、写真を見返すと本当に尖りの欠片もない顔をしている自分がそこにいたので、ちょうどいい機会だと思って30過ぎて「俺だって日藝中退したかった」もないだろ、と思って、ブログのタイトルを「石をつかんで潜め」に変えた。
これも『芽むしり仔撃ち』からの引用のようなものなので、結局は何かを纏ってお笑いを見ていくだろうな、と思った。