伊集院光の「同窓会に行った話」がすごかった。

2013年に入って、ラジオが充実している。「伊集院光深夜の馬鹿力」「爆笑問題カーボーイ」「バナナムーン」「オードリーのオールナイトニッポン」とこれまでに聞いてる他に、今年から始まった「ダイノジ大谷のオールナイトニッポン」「アルコ&ピースオールナイトニッポン」「東京ポッド許可局」と、レギュラー放送だけで、六本。それに加え、12回と限定だった「加藤浩次の金曜WANTED!」、伊集院と電気グルーヴNHKFMで競演したり、ダウンタウン浜田とオカモトズのハマオカモトが親子対談したり、開催自体は二年ぶりで全員揃ったのは初めてとなる、JUNKパーソナリティが勢揃いとなった日曜サンデーと、イレギュラーな放送でも胸が熱くなるような放送をして、深夜ラジオをMDに録音していた高校時代よりも聞いてる。これで、能年玲奈のガールズロックスも聞かないといけないのだから、終わりですよ。
他にはアンジャッシュ児嶋をゲストに迎えたエレ片の「お笑いリハビリスペシャル」、オードリーではツチヤタカユキ氏の話、バナナムーンは、日村が三年かけた本歯を入れたり、ポルシェを買ったりとトークのネタが盛りだくさんだったことも印象深い。ラジオの当たり年と言っても過言じゃない。
古典落語に「あたま山」という噺がある。この話は、あるケチな男がさくらんぼを食べ、その種を、捨てるのはもったいないからということで飲み込むと、頭から桜の木が生えてくる。すると、その桜の木を見るために人が集まってくる。そのうるささに耐えかねて、桜の木を切ると、そのあとの穴に水が溜まり池となる。そこで釣りをしだす人が集まって、また騒がしくなってくる。そして耐えきれずにその男は、池に飛び込んで死んでしまう。
唐突に伊集院光が2013年3月26日放送の深夜の馬鹿力で、この噺の解釈を話し始めた。
「(最後に自殺した)主人公の気持ちが明確に分かるようになったね!桜好きなんだね。花見はしたいんだね、友達とも仲良くしたいんだね。でも仲良くしたいっていうことの交換条件にある煩わしいことが、こいつは受け入れられないんだね。だから、ずーと桜が見たくて、花見の列に加わりたいんだよね。だけど孤独でアレになっちゃう。結果、自殺しちゃうっていうストーリーなんだよね。俺も楽しい宴会はしたいんだよね、でも交換条件になってる煩わしいものを受け入れる位だったらいいや、って自分では受け入れてるつもりなんだけど。ああ、そういうことなんだな。」
あたま山」に、元祖シュールといった位置付けしかしていなかった自分が恥ずかしいと思えるほどに、この解釈は目からウロコだった。コミュニケーションと自意識という側面から見るなんて、と。
自分も桜は大好きだけどお花見の会場のノリが苦手だから、花見に行かないか、夜中に一人で見るかになっちゃう、と話す。
 この話だけでも、記憶に残っていくような話だったのだけれど、ここにちょっとつながる体験談を、少し前の2013年2月26日の同番組で話していた。内容は「同窓会に行った話」。今のところ、今年一番、なんだったら伊集院光のこれまでにしてきたフリートークのなかでもトップに入るほど、本当に凄かった。
まず同窓会があることを知ってから、行こうか行くまいかで悩んでいて
Twitterにそのことをつぶやくと、リスナーから「伊集院さん、昔ラジオで、クラス会は行く後悔か行かない後悔かどっちにしても後悔するって言ってましたよ。だったら、行って後悔のほうがネタになっていいんじゃないですか?」と言われ、仕事が終わったらね、といった感じになったはものの、なんとなく行けない理由を探してしまう。
結局、自分はクラス会に行くことになったけれど、そうなると来ない側の人たちのことまで考えてしまう。いじめられていた人はもちろんだけど、特に学生生活の中で目立ったところもなかったのに卒業文集に「なぜだろう、辿り着いたら絶句する」と一言だけ書いていた女の子。来ない側に、見下されているし、見下されていたんだろうなあというところまで思考が巡ってしまうと言う。
伊集院光の一番の親友だったK君は、若くして亡くなっているとのことなのだけれど、同窓会の前に、お仏壇に手を合わせに行くことを決めて、K君の実家に行くと、「最初、ひとっ気がないから、越したのかなと思って。ちょっと冗談で当時のように、子供が友達を呼ぶみたいに呼んでみたら、ぐっと涙が出てきちゃって」なんかしていると、珍しく弟が出てきて、「これからクラス会だから、一番仲良かったK君とお母さんに挨拶しようと思って」というと、「お母さんが老人ホームにいますって言われちゃって。それも今日老人ホームに入りました。……あ、そうなんだ……。うん、じゃあ……。」と言われる。
「今のくだり、全然いらないでしょ。俺もいらねえなって思って。」と笑う。
同窓会会場に着いて、飲んでいるとF君の話になる。
F君は、家が貧しくて背も低くてひょろひょろしてる、鉄道が好きな子で、たまに伊集院光少年に拾った珍しい切符をくれたりしている友達の一人だった。
F君は、切符に書いてある知らない街を想像するのがすごい楽しいと言っているのを、伊集院光少年は「F君、大人だなあ」と思っていた。
そんな風にF君の話をしていると、唯一伊集院光と連絡を取れた、先のK君とも含めて親友だったO君が、何の話してんの?と入ってくると、そうそうそうと急に言い出す。
「俺、これF君から30年前に貰って未だに取ってあるんだよねーって言って、財布の中を探り出して、30年前に貰ったO駅(O君の名字と同じ名前)から何千円だか何百円だかの、うちの近くの駅までの切符を取り出して、で、O君が、『これをさー、貰ってさー、O駅ってのはどこにあるんだろうってF君に聞くんだけどさ、あいつは鉄道詳しいから、どこどこで乗り換えてとか教えてくれるんだけど、何回かあるうちに分からなくなってさあ。いつかO駅に行きたいってなってたの思い出したよ。財布、何遍も変えてるんだけど、これ取ってあるんだよねー。』って言うのね。」
聞いていて、鳥肌が立つ位の、すごく感情をざわつかせるというか、揺さぶってくる話だなあと、聞いていて思った。
最後の最後に
「来た人と盛り上がったのは楽しかったけど、来なかったやつばっかのこと考えちゃったって話を、(お開き後の)立ち話をしているときに、自分が別のクラス会に呼ばれていないことを話の流れで知っちゃって。俺、呼ばれてねえの。今の今まで、クラス会に来れないやつの可哀想さとか気の毒さとか、ちょっと違う流れとか、ドラマチックなこと話してんだけど、高校ってとこに変えてみたら、俺全く声かかってねえの。」
というオチもつける。その後に流れる電気グルーヴの「The Big Shirts」含めて最高だった。
伊集院光は、感情や価値観の揺らぎを、そのまま揺らいでいるものとしてトークにする。喜怒哀楽どの感情にも属さないもの、または、それらすべてが絶妙な配分で混じり合っているものをそのまま伝える。
ただ、同窓会に行ったという話だけでなく、行くまでの薄い葛藤、亡くなった友達の家に行ったら手を合わせることができなかった切なさ、来ていない人の確認することができないそれぞれの理由や、そこにまつわる偶然。ペーソスという言葉からもはみ出てしまうような感情を、おもしろを交えながら話す。
マーブル模様がそれだけで一つの模様のように、感情だけじゃなく、時間軸が配分こそあれ、それぞれが同列となっている話が出来るのは、「伊集院光がラジオで話す」というメディアだから出来ることだと改めて思った。