TVウォッチャー福永の誕生「時間がある人しか出れないTV」

ナインティナインの岡村が出演しているTBSの深夜番組『時間がある人しか出れないTV』は時間がある人が、時間がかかることに挑戦するという番組だ。
この日の企画は「真のワイプの女王決定戦」というものだった。ワイプとは、バラエティ番組などでVTRが流れている時に、画面の隅に小さくあるスタジオ部分の出演者の顔を映している小さな枠組みのことであり、そのワイプに顔が映った状態でコメントが放送された回数を数えるという調査方法だ。2015年1月1月5日から18日までの12時から13時までの昼帯、19時から番組終了までの夜帯&深夜帯の民放五局で放送された全188番組が調査対象となる。
 ここで、企画にまつわるゲストとして矢口真理が登場する。「どうですか、最近は」と岡村に聞かれた矢口は、「時間ありますよ。このお話いただいた時に、VTRで調べる要員だと思っていたんですよ」と薄くひと笑いを頂く。事故を起こす前、矢口がワイプの女王だという話になると、矢口は「有吉さんにあだ名で、ワイプモンスターって言われたんですよ。そこから、ワイプっていう仕事がちゃんとあるだって思った時に、もっと気合い入れて頑張ろうって思った。絶対集中を切らさないぞ。」と語る。矢口がこの話をしているのは何回も聞いているが、矢口が元アイドルで、『MUSIC STATION』を始めとした音楽番組が出自ということを考えると、いかにセールスランキングや懐メロ音楽特集VTRなどで、大げさに口ずさむなどしてワイプで目立つかということを叩きこまれ、身につけていったということは容易に想像できるので、このエピソードは審議対象だ。有吉という名前を出して、その行為に箔をつけているという気がしてならない。そんな誤魔化しは冷めるだけで、走馬灯をワイプ越しで見ていきますくらいの気概を欲しているのよ、こっちは。
 集計を担当するのは、人力舎所属の若手芸人、フルパワーズの二人だ。フルパワーズの二人は、同番組での「年末年始最もウケた人を調べよう」という企画で初登場しほぼ監禁状態の中、仕事をやりきった。その後のスタジオでの結果発表の後に、フルパワーズはどっきりの形ですぐに今回の企画のために、またすぐ監禁されたわけだがこれが大正解だった。このどっきりに対して、福永の「友達といっぱい遊ぶはずだったのに」でウケていたが、それ以外にも大内の「関ジャニ∞のえげつないほどのチームワーク。太刀打ちできないって思いました。全員ボケれて全員ツッコめる。特殊訓練受けているんじゃないか」や、福永の『爆笑ヒットパレード』での岡村の2笑いに対して、岡村が異議を唱えるも「まごうことなき2笑い」「楽しそうにはやっていたが、基準には満たしていなかった」と切り捨てる。他には「年末年始の疲れからか、口にヘルペス出来ている人結構いるんですよ。それをいじると何故か異様にウケるんですよ。それをいじると国民のツボか?ってくらいウケるんですよ。」「みんなヘルペスって言いたいし聞きたいし」という、笑いの教科書の脚注にしか加えられないような手法も見つけていたりと、なかなかの仕事をしていた。これらの企画を抜きにしても、大内喬史、福永雄一というフルネームからするライター臭がすごい。
番組で、大内は「太った関西人」、福永は「気持ち悪い顔」と紹介されているように、このフルパワーズの二人、くりぃむしちゅーがまだ改名する前、コンビ名が海砂利水魚だった頃、伊集院光が二人を「人を一人殺してそうな方と、人を二人殺してそうな方」と言っていた以来の犯罪者顔なのだけれど、その二人が監禁されてTVを見続けさせられるという画面にぴったりとハマっている。特に福永はシャープな顔をしているため、耳にイヤホンをさし、TV画面を凝視するさまは、さながら『時計じかけのオレンジ』でのルドヴィコ療法を受けているアレックスだ。
 ビジュアルだけじゃなく、福永はTVウォッチャーとしての才能も開花し始める。最近、バラエティによく出ている小島瑠璃子に対して、「小島瑠璃子さんって第二の矢口真理さんって言われていて、結構伸びると思っていたんですけど、今のところゼロなんですよ。出てはいるんですけど、小島瑠璃子さんって表情が凄い豊かでコメントはあまりしない。感動のVTRで泣いていたりとか、表情のグラディエーションが凄くて見あきないリアクションはしていた。」と話す。
 調査三日目、TVウォッチャーの福永はその小島瑠璃子が別の番組では多彩なワードで12ワイプポイントを獲得したことについて、「番組によって使い分けているというか、衝撃映像系の番組は演者が多いので、コメントしても目立たないので顔で顔でっていう感じなんですけど、ここは人数が少なかったのでワードワードで一気に稼いでいますね」と評していた。小島瑠璃子がどこまで考えているのかはわからないが、芯を喰った視点だ。アルコ&ピースの酒井にLINEのアカウントを聞かれた時に即座に「え〜、わかんないんです〜」と答えるくらいクレバーな小島のことなので、そこまで考えている線が濃厚だ。
 そんなこんなの調査の結果、ランキングが完成した。
 10位から4位までは、いとうあさこ鈴木奈々ハリセンボン近藤春菜、YOU、大久保佳代子、SHELLY、大島優子となっている。
もう一人、小島瑠璃子と並んでスタジオでも本命となっていた、鈴木奈々ハリセンボン近藤春菜と並んだ8位タイとそこまで伸びなかった。鈴木奈々は「本当に普通の今年基本言わない。すごいすごい、嬉しい嬉しいと繰り返す系」「ただ動きが凄いんです。途中からガッと立ち上がってワイプから完全顔切れている」というスタイルであることを発見する。ハリセンボン近藤は、他のランクインされている女性タレントと比べて、「笑いを取りに行くワイプ」「マンリキでボケてくる」「8位という位置ではあるが、一個一個のウェイトがでかい」と毛色が違うと指摘する。
 番外編として、峰竜太のワイプについて、「ワイプで老人褒めまくり」事件が紹介されていた。福永が気付いたのは、その名の通り、峰竜太がワイプで老人を凄く褒めるというもので「『アド街ック天国』の街角オシャレコレクションみたいので、最初パッパッパッて女の子がいっぱい出るじゃないですか。最初若い子ばっかだと、峰さんが、なんか若い子ばっかだなって調子だけど、途中からご老人に切り替わったら瞬間に、来たよ、来た来た来た、カワイイー!ってめっちゃテンション上げ始めてた」という瞬間を話す。それに対しての「峰竜太さんの生き方が垣間見えた」「本当に奇麗だと思っている感じはしなかったですね。褒めているとき目が死んでいたんで。」という福永のワードもなかなかどうして切れ味がいい。
 そして、三位から二位は、指原莉乃、おのののかで、一位であり真のワイプ女王はベッキーという調査結果となった。結局ベッキーが一位という、身も蓋もない感じにがっかりしてしまったわけだが、それ以外はまさに現在のバラエティを切り取ったような鯖よりも足が早そうな、だからこそ素晴らしいランキングだった。ちなみにおのののかは、年越し番組で「顔が綺麗な金玉に似ていると言われた」と言っていたがそれは残念ながらウケてはいなかった。あと、岡村の「テレビに魂売った人じゃないと出来ない」というワイプ仕事へのコメントについての言葉も残しておきたい。
 バラエティに出ている女性タレントといえば、「頭がいいと言われる問題」というのがある。その裏に、「バラエティに出ている女性タレント頭いいと評することによって、自分の審美眼褒めてほしいだけ説」や「反学歴のための錦の御旗になっている説」もあるにはあるが、それは文科系男子大学お笑い学部ラテ学科の卒業論文の機会に譲るとして、このワイプ仕事もまたそれを測る材料となると思うが、この中で一番頭がいいのは誰だろうか。
 個人的には、バイきんぐ小峠と付き合うために、バカのフリをしながらも、きちんと外堀を埋めていっている坂口杏里推していきたい。座付きの構成作家ではなく、軍師がついているとしか思えない。本気で好きだとしても、ママタレントを目指すためだとしても、何故小峠なのかというところが、限りなく心をざわつかせてしまう。本当は頭がいいのか、ただただ、優秀な軍師がついているだけなのか見極める能力がないことが悔しい。