バナナマン単独ライブ2017「Super heart head market」感想

 バナナマン単独ライブ2017「Super heart head market」見てきました。
 2年ぶり2回目という清水健太郎の出入りみたいな頻度のバナナマン単独ライブの座席はまさかの1列目センターから横3席以内のほぼセンターと最高の席でした。先に席に着いていた隣の人が、座ってすぐの俺に、ヤバイっすねと話しかけてきたので、ヤバイっすねと笑いかけるという一幕があった。
 ライブはというと、単純に、ここ数年で一番のライブだった。「あんなに忙しいのにライブをやっている」ということを差し引いても、いや、差し引けるからこそ、出色の出来栄えだとファンとして誇れます。二時間半近い公演時間を余すことなく楽しんだライブの帰り道は、自分が今一番面白いと思っている人達が、今一番面白いと思っているものを自分がこんなにも楽しめたという幸せの余韻にひったひたに浸かってふわふわしてしまっていた。なので、これから書くことのほとんどは、感想というよりは「何で最高なのか」という自分のための理由付けでしかない。
 一本目のコントで流れてきた蝉の鳴き声と、開場を待っている時に劇場の外で聞いていた蝉の鳴き声が混ざり合って、現実と虚構の壁を溶かしながら始まったライブは、「Super heart head market」といういつもとちょっと違う不思議なライブ名に相応しく、日常からそう離れていないところにいるコントの登場人物たちの心と頭は、ほんのちょっとの非日常の中で困ったり、ぶつかったり、勘違いをしたりする。
 バナナマンのこれまで演じてきたネタを思わせる題材やワードやキャラが出てきながらも、手癖でこなしているわけでも、集大成というのもちょっと違う、まさしく今のバナナマンというべきものを存分に味わうことが出来た。その中でも特に嬉しかったのは、最近はなりを潜めていたブラックな部分が見え隠れしたことだった。バナナマンのブラックさは、バナナのシュガースポットと同じで、それはとても甘い甘い蜜の味だ。
 これはきっと、エンドトークで話していたという設楽統が「なんでライブやんないといけないんだよ!」という怒りモードに入っていたことと、『バナナムーンGOLD』で放送されたラジオコントSPが理由にあるのだろう。来年以降の単独で、もっとブラックなネタが一本でもあれば、ギュッと締まった一味違う単独になるんだろうなと思うととてもわくわくする。
 日村勇紀がこれまでと変わらずにバナナマンの動を担当していたことは言うに及ばず、何といっても、「Super heart head market」は設楽統の魅力が存分に詰まった設楽統祭りだった。設楽統の心と頭が舞台上に散りばめられていた。全員が違うキャラクターで、未だに、あのコントの衣装おしゃれだったなとか、あのコントのビジュアル最高だったな、あのコントでの仕草を真似してえな、あのコントであんなことしてくれたと反芻している。
 全てのネタが本当にどれも良かった。バナナマンの単独ライブは2013年の「Cutie funny」で二周目に入ったと、それで卒論を書けるぐらいに考えている。爆笑だけを目的にしていないコント。それが今回の「Super heart head market」で到達していたように思えた。それはきっと、バナナマンの魅力の一つである「関係性」が昇華されていて、どのネタからもそれが感じられたからだ。赤えんぴつですら、いつもより優しく感じられた。特に、とあるネタでは登場人物二人の何年間もの付き合いが見えて、バカバカしいシーンなのに笑い泣きしてしまいそうになった。
 プレイヤーにキャリアハイがあるように、ファンにもキャリアハイがあるとしたら、バナナマンファンは今がその時なんじゃないだろうかとたまに思う。もちろんそれはプレイヤーのキャリアハイとも合致していることが多いのだろうけれども、好きになりはじめて色々と情報を収集してしばらくして好きの度合いが落ち着いたあとに、また何かをきっかけに好きになるということがいかに達成されがたいことか。
 そのくらい、最近のバナナマンは『乃木坂工事中』での「ヒム子どっきり」や、『日村がゆく!』でのバラエティモンスター増強プログラムを受けている姿だったり、『バナナムーン』では日村勇紀ホールインワンを出したことで生まれたTシャツや帽子を作ったりする流れや、先述したラジオコントだったりと、ファンにとっても最高な状態にある。
 個人的な事をいえば、今年の4月から新しい職場になったのだけれど、明日初出勤だという日曜日の夜に『せっかくグルメ』を見ていたら出てきたアジフライが無性に食べたくなったので、近くの食堂で少し前のバナナムーンを聞きながら、一人でアジフライ定食を食べていた。食べ終わってお金を払い、帰る道すがら信号が変わるのを待っていると、曲対決で設楽統が選曲した奇妙礼太郎がカバーした「悲しくてやりきれない」が流れてきた。その時に、やったるからな、という逆説的な力が湧いてきたのを覚えている。
そんな中でのライブは、期待していながらも、心の隅には「楽しめなかったらどうしよう」という不安があった。そういう意味で、ある種の到達点のようなライブを一列目で見ることが出来て、神様的な何かに「いや、全然好きでいてくれて大丈夫だから」と背中を押されたような気持ちになった。
 だから、まだまだ好きでいられる。
 来年まで、笑顔でさらば出来る。