石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

バナナマン単独ライブ2019「s」のライブビューイング感想

バナナマン単独ライブ2019「s」のライブビューイングを見てきました。客の入りはほぼ満員で、バ帽もちらほらと見かけました。普段どこにいるのよ。

毎年毎年、今年は面白くなかったらどうしようという気持ちがあるのですが、また今年もそんな気持ちは簡単に消し飛び、帰りには「いやあ、バナナマンの『今』というどろっと濃いシュガースポットを堪能することが出来たなあ」という気持ちに浸ることになりますが、今年もそうでした。

ライブビューイングの回が収録回ということもあり、今回が記録に残るということなのですが、今年は、この回がバチっと成功したみたいで、エンディングでは、2日目の1本目のコントで日村さんが完全に飛んだ話をしていました。このエンディングが見れるのもライビュならではで、エンディングが始まる瞬間までそのことを忘れていました。

コントは、6本で、⑴ボスがやられた⑵佐々木へのサプライズ⑶ジョニーの店にて⑷脱出ゲーム⑸赤えんぴつ⑹結婚式でした。タイトルは仮です。

一番好きなのは、3と4でした。

バナナマンの単独の満足度は、会話で笑わせるコントから、動きやノリを軸にしたコントまでと幅広いことで、さすがに昔よりキレッキレの笑いは少なくなっているものの、そのぶん、より「人生の一場面を切り取ったらコントになっていた」という自然な笑いになっていて、かと思えば、その中でも急に、日村さんがラジオでふいに見せるヤバさを出してくる感じのように、怖くなってしまうボケを挟むあたりは、まさに「今」のバナナマンの全てが入っているような気はします。今回のコントを、例えば10年前のバナナマンが演じたとして、このどっしりとしたコントがやれるかというと

もしかしたら全く別物になってしまうんじゃないかという意味でも、やっぱり、この重厚なコントこそがバナナマンの「今」なんだと思います。

でも、⑶ジョニーの店は一人三役を、しかも、それが目まぐるしく場面展開するというもので、今のバナナマンにこれをやられたら、かが屋を筆頭に若手のコント師たちは頭を抱えてしまうんじゃないかというものもありました。

⑷の脱出ゲームは、たまにラジオでもやるラジオコントに近く、無意味なギャグを繋げて本当に深夜のノリがずっと続くようなコントで、でも単純なギャグの連なりだけではなく、意味を捕まえることを放棄してもリズムや気持ち良さで笑ってしまうやつでした。

何より、一番、昔と変わったなあって思ったのは、ラストのコントのオチだった。

妹の結婚式でスピーチをする兄の日村が、同じく参席している小説家の友人の設楽に聞いてもらうというところから始まるこのコントだが、日村は、実は結婚に反対しているから、ぶっ潰したいと言い出す。そのためのスピーチでもあるのだが、日村は散々そうなるようなスピーチを練習するが、結局は、普通に兄として良いスピーチをしてしまい、結婚式は成功する。

最後の最後に、実は設楽は日村の妹と過去に付き合っていたが別れてしまった、でも、妹は設楽のことが忘れられないから、結婚に踏み切れていなかったということが分かる。

設楽統は、伝えることで運命が変わるということを描いてきたが、今回はその伝えたいことを飲み込んで受け入れるということを描いた。それはまるで、映画史上最も切ないエンディングというキャッチコピーがついた『バタフライエフェクト』のように、日村のスピーチのシーン含めてバナナマン史上最も切ないコントになっていた。

バナナマンのコントが大人になっている。そんな気がした。夏ももう終わりに近づいていく。