石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

『キングオブコント2018』感想

キングオブコント2018』見ました。以下、感想。細かい点数などのデータなどは他で見てください。

 

■10位 やさしいズ「時限爆弾」


 会社員が、復讐のためにビルの中に爆弾を仕掛けたところに、清掃員が登場するというネタ。どこまでも噛み合わないやりとりが面白かったです。
「話を聞け!」「聞いてるから泣いてるのよ」という流れは、二人の温度差が美しいくらいに表現されていますね。
 タイ演じる清掃員のキャラ設定や、発する言葉のチョイスが、「工業高校卒業のフリーター」の生活圏内をギリギリ越えていないところとかが絶妙でした。「ツンデレ?少女マンガで見た~」というセリフは彼女や姉妹が買った少女マンガを暇つぶしに読んでいるという背景まで想起させてくる。「まじセグウェイ」で一回転するところとかも、キャラの範囲を逸脱せずに、キャラで遊んでいるという感じで凄く良かったです。ちょっと越えたのは、「下北沢いらず」くらいでしょうか。
これはちょっとこのネタとは直接的に関係ない話ですが、ラストの展開で、少し前なら「実は、爆弾を仕掛けていたということを知っていた」というものが来たのかなと思うと、一周してすれ違ったまま終わるというこのネタから、コントのブームの変遷を感じられて良かったです。
 初見の時は緊張からか間とかが上手くいっていないと感じる部分も多かったんですけれど、この文章を書くために何度も見ているのですが、そのたびに味が出てくる良いコントです。

 

■8位 GAG「バイト先の居酒屋」


 高校生が友達を連れて、バイト先の居酒屋に給料を取りに行くという話。
GAGのネタって、じわじわと面白いんですけど、昨年もそうだったんですが、面白い!以外の感想が出てこないですね・・・・・・。
トークのオチでお馴染の「空調の音が聞こえた」が、コントのネタに取り入れられるてたのは笑いました。
 福井の芝居口調、説明口調のツッコミにハマり始めてます。

 

■8位 だーりんず「居酒屋でのお会計」


 悪くないネタだとは思うのですが、ウケもいまいちで全体的にぼやけてしまったような気がします。ハメどころで上手くハマらなかったと言いますか。
 会社の後輩から追加の注文があり、店員が注文を受けに行くところから「残金発表すな!」「楽しまんでええねん」「船盛りキャンペーン産まれとるやないか」の流れはかなり面白いんですが。そこにいたるまでのコントの前半部分をきゅっとして、承にまでの道のりをもっと短くしていたら、このくだりも際立ったんじゃないかなと思います。

 

■7位 マヂカルラブリー「傘」

 「コンビニから出て傘を取ろうとするけど、どの傘が自分の傘なのか分からなくなって迷っているところに、おじさんに絡まれる」という「ここじゃなくない?」という場面でループするというネタ。
 ループモノはともすれば、展開の中でダれてしまったり飽きが来てしまうことがあるので危険な時が多いのだけれど、そんなこともなく走りきったコント。
おじさんもループしているということに気がついたところの、「信じたくなくて逆に強く当たっちゃった」の前後の流れ、最高でした。
 ところで、上沼恵美子ってループものを理解できなそうですね。

 

■6位 ザ・ギース「サイコメトラー
 

 最初にファイナリストであるという情報が漏えいしたザ・ギースが予選の最後の登場。あまりにも計算されつくされたコントですね。明転板付きで、高佐がライターを探しているところからすでに始まっていたということや、サイコメトリーという素材は一緒でも前半と後半でボケの意味合いが変わってくること含めて、完成度だけでいえばキングオブコントの歴史の中でも上位に入れたいところです。
 わざわざ犯人である刑事が、サイコメトラーを呼び出すという理由も自然に回収していましたし、刑事が殺人現場でタバコを吸おうするというよくよく考えれば不自然な場面があるのですが、そこは高校生が来た時にタバコを隠していたりしているというのも芸が細かすぎますね。
でも6位か~。

 

■5位 ロビンフット「結婚の報告」


 38歳の息子が、67歳の父親に結婚を報告するというコント。
年齢は聞いておらず干支しか聞いていないということなので、12を足していけばいいという先回りしてニヤニヤしてしまうところと、それを超えてくる展開もあって、作り自体はオーソドックスなコントだと思うんですけど、シンプルに気持ち良く笑いました。恐らく、ここらでストレート寄りのコントを見たいなという気持ちが生まれていた時にバシッと来たという順番の妙もあったとは思います。
 おぐの悲壮感溢れるルックスながらも人のよさそうな感じが、バツ一の女性校長を初婚の相手にするということと、お父さんの計算の速さに「12を足すだけ」「お父さんの2個上だから」とやたらとリアリティを持たせているところは、よくよく考えると地味に面白いですし、良い調味料になっていますね。
 ちなみに弟の妻がアメリカ人なのですが、このコントでゲラゲラ笑っていたそうです。なんでだよ。

 

■4位 さらば青春の光「予備校」


 今年をラストイヤーと公言しているさらば青春の光

 ネタが始まってから、熱血な人が実は講師ではないという「起」から、「二回目のピラミッドを書く」という「承(つかみ)」までのタイミングも早くて、その後も爆発ポイントもあって、全体的に丁寧に積み重ねていってコントとしてのグルーヴが最高で、今大会で一番笑ったネタです。発想だけじゃなく、動きでも笑わせるというコントで、本当にさらば青春の光の集大成みたいなコントでした。コントの中には、学歴社会の現実や、職業差別など、うっすらと残酷さが漂っていましたが、それを「鼓舞する人」という言葉で、回避させたのはさすがですね。
 例年の五組が決勝に残るパターンであれば、優勝もあったんだろうなあと思いますが、まあ、そこはなー・・・・・・という感じです。それを言えば、5位のロビンフットも二本目でしっかり点を取ってきそうなコントをしそうでしたし、何ともいえないですね。
ラストイヤーと言いつつ、ネタが貯まったらしれっと戻ってきても全然大丈夫ですからね。

 

■3位 チョコレートプラネット「監禁」「意識高い系棟梁」


 一本目は、バナナマン設楽さんの「こういう一つの、要は言ってんのに聞かないっていう。この突き進むネタだったら相当完成、凄いと思います。何だかわかんなくてもずっと笑っちゃう」という評につきると思います。
うっすら知っていたネタだったのですが、笑いました。
 コントを見るときは、リアリティを追求して見てしまうという悪い癖(それはもうバナナマンのコントのせい)があるので、普通だったら、「なんで、話聞かないんだよ!」となるんですが、そんな指摘を力技でねじ伏せて5分を走りきったコントでした。ただ、間が詰め詰めな気がしたので、本当は6~7分で見た方が一番面白いのかもしれません。
 ただ「群馬」と「鈴木たけし」は詰めが甘いな、と思ってちょっと冷めてしまったので、本当にコントにおけるリアリティって奥深すぎます。
二本目のネタの点数の伸びなさは、やっぱり一本目と比べられてしまったということも大きいのかなと思います。
 先日、ジャンプの編集部にカメラをしかけるという番組を見ていて、編集者が「ファンタジーはひとつで良い」という指摘を新人漫画家にしていましたが、この二本目のコントもそんな感じになって笑いどころがぼやけてしまったのかなと思います。
 あと単純に過去にやった、「ポテトチップスの袋を開ける業者」と似ているコントですし、そのときの小道具のほうがインパクトは大きかったですからね。
審査員がワードについていけないという指摘は表層的すぎやしないですかね、とは思います。

 

■2位 わらふぢなるお「バイトの新人のいしわたくん」「超能力者」


 我らがわらふぢなるおが、KOCで準優勝したという事実。興奮してきたね。
一本目は「バイトの新人」。空質問を繰り返すわらふぢの溢れんばかりの「真正」さと、いらつきながらもそれを的確に処理していくなるおのツッコミが堪能できる、わらふぢなるおの真骨頂のネタの一つ。真骨頂っていうか、僕がこのわらふぢなるおのこのタイプのネタが好きすぎるってだけなんですけど。このネタは『マイナビ Laughter Night』で聞いたときも爆笑していたのですが、ラストのオチがラジオでは出来ない怖いやつで、良かったです。
 二本目のネタ、こちらも、チョコプラ同様、期待を越えてこなかったというか、もっと畳みかけるネタを見たかった気持がスかされてしまった気はします。これは単独ライブの中盤あたりにもっと長尺でだらだら見たいタイプのコントな気がしました。
先日、メールの受信箱に、地方会館でやる営業ライブのメールが入っていたのですが、二つの違う場所でのその営業ライブどちらにも、わらふぢなるおが出演することが分かりまして、嬉しかったです。
 わらふぢなるおがバイトをしているのか、お笑いだけで食っていけているのか、それだけが気になっています。

 

■1位 ハナコ「ペット」「海辺での学生カップル」


 飼い主とペットの日常を描いたコント。
 さまぁ~ず大竹が「ほんとの犬だったんじゃないかなっていうくらい」って評したくらいに、誰もボケていない、コントのために動いていないコントだったんですけれど、そんなコントは一つのゴールであり、最強の一本目でした。
 一か所位爆発ポイントがあれば、本当に文句なしだったんですけど、それを作ると、嘘が入ってしまってこの絶妙なバランスが崩れてしまう可能性もあるので、このコントはこれで良いのかな、とも思います。
 これらの理由から、このコントは厳密にいえば、「擬人化」ではないと思います。
 二本目も、海辺でのカップルのいちゃつきというイメージしやすいシチュエーションから、女が全力疾走をして全然捕まらないという承までが早くて、しかもそこからどんどん転回していく。
 全体的にイリュージョンにも寄っている印象を与えるネタで、それが一本目とはガラッと毛色が変わるものだったので、他の二組と比べて、失速した感もなかった。そこも優勝の後押しとなったかなと思います。
 二本に共通しているのは、菊田の使い方が最高で、菊田が必要なところからしかコントに登場しないので、これだけで、余分なくだりが生まれる可能性がぐっと減ってシャープなコントになる。この判断は出来そうでなかなか出来ない。
 早速みんなに名前を覚えられた菊田ですが、そんな「めちゃ楽ポジション」の彼の使い方が絶妙でしたね。それでいて、三人の中で唯一ネタは作っていないらしいのだけれども、テレビにハマっちゃいそうなのが彼というところとかも、良い。ドッキリとか見えるもんな~。
 昔から、トリオでも、完全に二人しか出てこないコントとかやっても良いのになあと思っていたのですが、それに近い、トリオコントでの新しい三人の使い方の形って気はしました。

 

■総評


 全体的な印象として、ほぼ全てのファイナリストのネタが5分という時間を完璧に使っていたなあと思わされたということと、展開に嘘がないということです。逆に言えば、決勝にあがるためには、このネタ時間に合わせた構成力が必須で、面白いネタを作ってそれからブラッシュアップしていくという作業をしていかなければならないんだな、と思わされました。
 設定だけに頼る大喜利的なアプローチのネタに固執すると、それだけで一点突破するのは難しくなるんじゃないかなという気はしました。カットしていく勇気が必要なんだな、と思います。
 「大喜利のお題を二個用意して、前半と後半に分けて使う」「少しでも無駄なところは削っていく」ってところが、今大会のムーブだったっていうところでしょうか。
その位、ハイレベルなことが行われている大会で、そんな中でどのネタがハマったとか、この展開で跳ねたなんて有無は、もう脳でしか意識していないレベルの「この笑いが欲しい」というマスの埋め合いのようなものだったという気がします。それくらい、幅も広かったです。だーりんずも、ロビンフットのネタもわりとオーソドックスなつくりのネタなんですけど、笑いの量の違いは、何かが重なって上回ったとしか説明できない気がしますし。
 ハナコの優勝は、芸歴が短いということが、良い方に働いたんじゃないかなと思います。経験によるこねくり回しなどがない分、純粋さが通ってしまったという、コロチキパターンです。ネタだけでいえば、わらふぢなるおやチョコレートプラネットを始め、下手をすれば、セミファイナリストのほとんどが、ハナコの二本と同等かそれ以上のネタは持っていることは間違いないわけですけど、そこはやっぱり賞レースですから、他のネタとの相性などを乗り越えて、二本目を一本目にやっていたら、決勝戦にあがれたかどうかも分からないわけですから。
 あとは、全体的に優しいコントが多かったですね。これも、例年の炎上枠みたいなのからくる反省のためなのか、それがあるとしたら、それは芸人か審査員どちら側が意識的にやったことなのかどうかは調べることはできませんが、そんな印象も受けました。総じてハートウォーミングでしたね。誰も傷つけないお笑い論なんてありえないと思っているのですが(なぜなら、誰も傷つけないお笑いだけになったら、俺が傷つくから)、お笑いというのは、基本的にはみんなを幸せにするものなので、そこも何も異論はないです。

 あと、例年より番組のテンポが良いような気がしました。視聴率上がっていると良いですね。
 散々批判されていたファイナリストをシークレットにするというのも、意味こそ分かんない(視聴率をあげるためだとしたら、どうつながるのかなど)けれども、そこまで、ライブに行けて、準決勝追うことが出来て、みたいな人たちほどぶちギレている印象ありますが、地方にいて普段からファイナリストを、蓋をあけてみれば、まあ別に先に知っていても知らなくてもどっちでも良かったなとも思いました。
 弊害といえば、空気階段わらふぢなるおのシークレットが似すぎて、ついに空気階段がファイナリストに!!とぬかよろこびしてしまったくらいです。あと、決勝にあがるのが三組っていうのも、ほかの賞レースでは普通なので、別に良いのかなと思います。
 ネタ前の煽りVが結構無臭で、ファイナリストを当日までシークレットにするならば、そこは普段の密着とかそういう映像をもうちょっと多めに見たかったです。借金返済とかみたいなアングルが欲しかったです。それだけが残念でした。本当に、それだけです。いや、まじで。それだけです。それだけですって!
 宇多田ヒカルNintendoDSのCMで「これ面白いよ~、なんだかんだ言って~」と誰も何も言っていないのに言っていましたが、KOCもそんな感じになっていますね。

 

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