石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

2018年に見たネタで印象に残った10本

 今年見たお笑いのネタで印象に残ったネタ10本です。あんま順番関係ないです。
 
(1)たくろう「美容室」
 『M-1グランプリ2018』の敗者復活戦で出会った、たくろう。
 勝手にテンパってしまう赤木とそれを優しく正したり、すかしたりする木村バンド。この敗者復活戦で見てひと目惚れしました。年末はたくろうのことばっかり考えていた。聞けば、木村拓哉イチローがそれぞれ好きだからという。こんなどメジャーなものをコンビ名に使う真っすぐさと、自分達の感じを出すために、平仮名に統一するというセンス。応援せずにはいられません。
 たまたま沖縄の劇場で見れたので、そのレポもご参照までに。
 http://memushiri.hatenablog.com/entry/2018/12/24/183649

 

(2)わらふぢなるお「空質問」
 空質問を繰り返す藤原の溢れんばかりの「真正」さと、いらつきながらもそれを的確に処理していくなるおのツッコミが堪能できる、わらふぢなるおの真骨頂のネタの一つ。真骨頂っていうか、僕がこのわらふぢなるおのこのタイプのネタが好きすぎるってだけなんですけど。このネタは『マイナビ Laughter Night』で聞いたときも爆笑していたのですが、『KOC』で披露したverのラストのオチは、古谷実の『ヒメノア~ル』のようなラジオでは出来ない怖いやつで、良かったです。

 

(3)魔人無骨「携帯ショップ」
 島田紳助が「養成所の講師をしに行った時、たこ焼きを食べながら学生の漫才を聞いていたら、耳を引くコンビがいて、それが若かりし頃のダウンタウンだった」みたいなことを、ダウンタウンの漫才が凄かったことと、自分に先見の明があったことを証明するエピソードをよく話していたんですが、この話を聞くたびに、「仕事なんだから、たこ焼き食ってねえで真面目にやれよ」と思ってしまっていたのですが、TBSラジオのネタ番組の『マイナビ Laughter Night』はそんな最低な聴き方をしてしまいがちなのですが、8月頃に気になるコンビの気になるネタがありました。
 それが魔人無骨で、ネタは「携帯ショップ」。
 様々なコンビのネタからの影響を感じられる程度にはまだまだ荒いなとは思ったものの、それでも引きつけられる面白さがあるなという印象を受けました。そして軽く調べたら、今年NSCを卒業し、「NSC大ライブTOKYO 2018」で優勝し、首席の座を勝ち取ったという猛者でした。
 それから、M1グランプリの敗者復活で同じネタを披露していたのですが、このわずか4カ月足らずの間で、荒さが消えて上手くなっている印象を受けました。『HUNTER×HUNTER』でキルアがゴンに「成長する。すごい速さで。戦いの、中で!!」と言っていましたが、まさにそれで、早ければ二年以内に決勝あるな、と思いました。
 二人とも慶応大学出身ということなので、どれだけくるまの「バカ」さにリアリティを持たせられるかという話になってくると思います。
 風の噂では、ケンドーコバヤシが、このコンビ名を悔しがっているということを聞きました。その事実、最高じゃないですか。 
 ちなみに、魔人無骨、ネタも素晴らしいのですが、二人ともルックも最高で、特にツッコミの松井ケムリは「男はこう太りたいランキング2018」の新人賞を受賞させました。

 

(4)空気階段「クローゼット」
 今年の見た中でもかなり最高だったネタ番組のひとつ『関根・優香の笑う○○休み』シリーズがいつの間にか終ってしまっていたが、その正統な後継番組といってもいいような『有吉のお饅頭が貰える演芸会』というネタ番組が始まった。ネタの面白さに応じて、有吉がお饅頭をあげるというだけのシステムだけが緩いものの、銀シャリ空気階段さらば青春の光サンドウィッチマン、ナイツ、ハナコ、ハライチ、ポテンヒット、魔人無骨、宮下草薙四千頭身と、メンツだけはガチすぎるものだった。特に、銀シャリが披露したネタは「十回クイズ」という養成所に通っているコンビが作るような題材にも関わらず、えげつないほどに笑ってしまうものだった。他にも、ナイツ、ハライチ、サンドという圧倒的な強者がお饅頭をかっさらっていくなか、一番面白かった人にあげられるピンクのお饅頭を貰ったのは、誰であろう、空気階段の鈴木もぐらだった。
 披露したネタは、「浮気男が、浮気をしているところに彼氏が帰ってきたので、クローゼットに隠れたら、クローゼットが浮気男を罰する空間につながっていて、そこで謎の男に出会い、その男から浮気男をこらしめる呪いをかけられる」というもので、まー面白かった。浮気とクローゼットといえば、もちろん矢口真理を思い出すのだけれど、それを種によくこんな凄いコントを思い付くものです。
 ラジフェス2018でやったネタ「電車に乗ってきたおじさん」も最高でした。
先日の『空気階段の踊り場』で、かたまりが「昨年の秋からウケ方が変わってきた。多分もぐらが結婚して常識的な側面を持っているってこと、俺が振られて泣いて感情あるんだって思われたことで、人間が知られてきたんだと思う」みたいな話をしていたのだけれども、この実感が確かなものであれば、空気階段、来年さらなる飛躍ありますね。

 

(5)ジャルジャル「国名分けっこ」
 言わずもがな『M-1グランプリ2018』で披露されたネタ。
 漫才のネタは「練習すればするほどに上手くなってしまって、台本が透けて見えてしまう」というジレンマがあるけれど、そんな永遠の命題に対して、「マジでゲーム性を持たせる」ということでクリアしたという恐ろしいシステムのネタ。その度胸もさることながら、ジャルジャルが「じゃれ合う」という特性を持っているからこそ、大舞台でもかけられる。ジャルジャルはニンが出ていないといわれることもあるし、分かりやすく、「ジャルジャルはニンが出ないのがニン」ということを言っていたりするのですが、実は、一番いちゃいちゃしていないと出来ないネタをやっていると思う。テクノバンドのライブが熱量ないか、人間味がないかというとそんなことは絶対にないわけでしょう。そういうことです。

 

(6)チョコレートプラネット「手紙」
  タイタンシネマライブに出演したチョコレートプラネット。見たことあるネタなのに、やたらと笑ってしまった。
 タイタンライブは与えられた時間が長いのと、客が、フリを待てる人たちなので、テレビでかけるネタでも、ゆったりと演じられるので、どっしりと構えて見ることが出来て、同じネタでも印象ががらっと変わることはよくあります。
ちなみにタイタンライブでのエピグラフはこちら。

 

「まだ発想されたことのない神秘、そんなものが混つてゐるのかもしれない。そして、それらが一斉に地表に噴きだすとき、この世は一たいどうなるのだらうか。」___原民喜『心願の国』

 

(7)神田松之丞「寛永宮本武蔵伝」の「山田真龍軒」
 
 『ENGEIグランドスラム』で神田松之丞が登場。披露したのは、宮本武蔵の話「寛永宮本武蔵伝」の15番目の「山田真龍軒」。「播州・舞妓が浜の茶店前、振り分け荷物が身体に当たったのがきっかけで、「毒虫」山田真龍軒と武蔵との果たし合いが始まる。真龍軒の使う獲物は鎖鎌。武蔵は「天狗昇飛切の術」で立ち向かう。」という内容(神田松之丞『神田松之丞 講談入門』より)。ゴールデンで講談、しかも、宮本武蔵というどメジャーな題材だとしても、連続物の中の一本をやるという、あまりにも時代に反したネタでした。
 神田松之丞は2020年に真打になることが先日決まって、
2018年は神田松之丞を好きであり嫌いになって、色々な感情をそれなりに振り回されました。
 ただ、思ったことが一個だけあって、プロレスを見てきたというわりには、松之丞、プロレス下手じゃない?

 

(8)トム・ブラウン「サザエさんの中島を五人集めて中島MAXを作る」

 イリュージョンなでめちゃくちゃな、トム・ブラウンの漫才、M-1グランプリという最高に緊張した舞台で出会えて本当によかった。「平成ヒットメドレー」とかツッコミが面白いワードを入れてそこで笑いを取っていたり、「誰か分からない女が来たと思ったら(これがボケになっている)、それが花沢さんで、同じく『サザエさん』の登場人物である花沢さんが呼んだから中島が五人そろって中島MAXが出来た」とか、よく見たら構成もテクニックも上手いのだけれども、ナンセンスさや90年代ギャグ漫画からそのまま出てきたような佇まいがそれをかき消している。
 もっとネタを見たい、単純にそう思わされます。

 
(9)アルコ&ピース「彼女が欲しい」
 M1グランプリの予選で披露された漫才であり、2018年一番の問題作でありながら、壮大なネタ。
 元々はアルコ&ピースの有りネタで、「彼女が欲しいので告白の練習をしたい」と酒井が言い、平子が相手の女の子を演じる。告白のために呼び出された女の子は、「健太のくせに呼び出すとか生意気~あれ、髪切った?良いじゃん。で、話ってな~に」といわゆるツンデレといったような、嫌いと口にしながらも、酒井への好意が滲み出ている態度なので、「絶対、俺のこと好きじゃん!」と酒井がつっこんでなかなか練習できないというもの。
 M-1グランプリの予選では、このネタが始まったら、「彼女が欲しいので」と酒井が言いだすも、平子が「お前、彼女いるじゃん」と「暴露」し、結果、予選でフリートークをしてしまう。結果落ちてしまったのだが、あんなのでM-1に出るなんて舐めている、いやこれこそがアルピーだよ、平子っちだよと賛否両論を巻き起こした。
個人的には、賛でも否でもなく、まあ、アルピーならいつかやることだったろうなという感想しかなかった。というのも、そもそもアルコ&ピースは、漫才をどこまで脱却できるかということをするコンビであって、「忍者になって巻物を取りに行く」のように完全にメタすらも超えてくるようなネタをする時もあれば、今回みたいなことをするということは想定出来ることであって、それがただ、今回スイングしなかったというだけで、「漫才と言えるのか論争」を打つのは、真面目だなあという思いしかない。
 それからしばらくして迎えた『ラジフェス2018』。
ハライチ、うしろシティアルコ&ピースの「24時台三兄弟」は大食いをしたのだが、その前に、ネタを披露。そのネタの開口一番、「彼女欲しいな」という一言目で会場は拍手笑いに包まれる。平子はそれを聞いて、「ふぅー・・・・・・」と息を吐き心を落ち着かせてから、ネタを進める。それでも、酒井が嘘を吐いているということに耐えられなくなってしまった平子は「真実、真実、真実!あー!!!!!」と咆哮、自我が崩壊し、平子ザウルスへとトランスフォームしてしまう。でも、それは酒井が見ていた夢だったという大オチにつながる。
 これは酒井の夢ではなく、むしろ、漫才とは何なのか、漫才における虚実のジレンマに立ち向かった平子の夢なのではないかと思わせるネタ、いや、叙事詩でした。

 

(10)『犬も食わない』の「コンテンツ全部見男VS情報だけ知ってる男(さらば東ブクロ)」

 『犬も食わない』は日本テレビ系列で今年放送されていたコント番組で、「コンテンツ全部見男VS情報だけ知ってる男」はその中の一本でした。
 『犬も食わない』は、それぞれが撮影をしているディレクターに向かって話をしているという『情熱大陸』スタイルの映像が交互に出てくることで、討論形式になっているというもの。
 このコントは、チョコレートプラネットの長田が演じるコンテンツ全部見男と、さらば青春の光東ブクロが演じる情報だけ知ってる男がマウントを取りあう。
全部見男は、お笑い、ラジオ、演劇、映画、海外ドラマとあらゆるコンテンツを日々吸収する。映画と映画の間に、カフェに寄って、右耳でANN、左耳でJUNKを聞くといった具合だ。情報だけ知ってる男はその名の通り、情報だけ知っている。あれって知ってますか?と問われると、どういうものか説明出来るし、なんなら補足も出来る。でも見ていない。
 コントの中には、ヨーロッパ企画や、『問わず語りの松之丞』など当然、自分が好きなものの名前を始めとして、2018年に話題になった、コンテンツの名前が散りばめられているが、そこにそれらへの敬意はなく、むしろ、陰湿な悪意がうっすらと漂っている。『ここは退屈迎えに来て』で安易にラーメンズがいじられていて、むかついたことがあったが、その時の感情に近い。

  番組側が、絶妙なチョイスをしてるでしょ、と思われるということを狙っているだけの名称の連呼のような気がして、無性に腹が立った。『問わず語りの松之丞』の紹介に、能町みね子が絶賛ってあったけど、あいつはただジェンダーの話題が出たあとに聞いた後出しジャンケン女で、それまで聴いていなかったんだから、絶賛もクソもないだろう。
 嘘でも本当でもどっちにしろ最悪なエピソードをツイートする、ジェンダーには配慮するくせにタクシー運転手は馬鹿にするでお馴染の宇野惟正も、「まーお笑いの批評ほど難しいものはなくて、結局は好き嫌いになっちゃうんだよね。となると、誰が批評するかって話になる。M-1が松本サン、THE MANZAIがたけしサンがそれぞれ顔役なのはそゆこと。この40年で後輩に影響を与えた漫才コンビは2組しかなくて、それはツービートとダウンタウンなんだよね。」としたり顔で、自分が不勉強であることを世界に向けて発信する、素直にダウンタウンとツービートが与えた影響しか分からないと言えばいいのにね、誰が批評するかって話ならお笑いの批評って難しくなりませんよね、でお馴染の指南役と、町山智浩を並べるのはどうかと思うが、そういったことを含めて、むかついてしまった。
 とまあ、全てにカリカリしてしまって、「『犬も食わない』笑いどころないな~」とツイートしてしまったのだが、よくよく冷静に考えたら、そうなったのは、自分が「コンテンツ全部見男」であり、「情報だけ知ってる男」だから、カッと来ちゃったんだなと反省の念が芽生えてきました。加えて、「マウントの取り合い」という風潮に疲れてきっているということも、オードリーファンから割とマジで嫌われている、特に『得する人損する人』での東大受験企画の扱いの酷さから春日ファンにめちゃくちゃマジでリアルに嫌われている安島が演出しているということを知っていたのでで、色眼鏡をかけてしまったことも原因かもしれない。
 年を重ねるにつれて、自分の好きなものでさえも視聴を溜めてしまうくらいなので当然、新しいものは、情報を手に入れるだけで、色々な言い訳をしては、興味あるんだけどね~という態度で終わってしまう。別に全てを抑える必要なんてないのに、そんな自分を自分で勝手に嫌悪する。そしてそんな自分の姿を、このコントに見つけてしまったから、むかついてしまったのではないだろうか、と安易な自己分析で、とりあえずの、けりをつけてみる。

 

追伸:親から、ほぼ全てのコンテンツを遮断されて育ち、芸人になるために東大に入ったXXCLUB大島育宙が真逆の感想を書いているのは、だろうな、という気持ちになった。
コンテンツ全部見男https://note.mu/zyasuoki/n/nada849e8fded 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラジフェスのあと飲み会で、同席した人たちに「テン年代のネタのベスト10をブログにアップしたいんですよね~」と言ったのだけれど、今から楽しさと憂鬱さを覚えています。来年もそこに食い込めるようなネタが生まれると良いなあと心から思います。