石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

史上最高の肩すかし「マヂラブno寄席2022」と、地下『AUN』「ダイヤモンドno寄席」にて配信初めしました。

 

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 見た人全員が、いや今年も全っ然おもろかったすよ、去年が異常だっただけで、本来、こんなもんですからねぇ、別に満足してますし、つか、今年の方が愛せるんじゃないすかねぇ、と、誰かに言い訳するような感想をみんなが抱いたと思われる2022年の『マヂカルラブリーno寄席』が配信初めだった。
 ちなみに今年の笑い初めは、銀シャリだったが、冷静に考えてみたら、ここ数年はずっと銀シャリのような気がしている。というのも、お正月は、いつもより遅く起きて、『爆笑ヒットパレード』にチャンネルを合わせる。しばらく出てくる色々な芸人を見ているが、寝起きなのと、ほとんどが力が抜けたネタなので、別に笑わない。笑ったとしても、ははは、おもろ、と散文的に笑うくらい。しばらくして、ちょうど、温まった頃合いを見計ったかのようなタイミングで出てきた銀シャリで、腹から笑う。銀シャリは、それでネタを作られたら、森羅万象がネタじゃねえかと思わされるし、笑えるから凄い。
 昨年は、後半こそ少なくなってしまったが、配信を多くみて、笑っただけでいえば、『マヂカルラブリーno寄席」が一位だった。マヂラブ寄席を見ていない者はお笑いファンにあらず、みたいな恐ろしい空気が醸成されていたし、永野のネタで椅子から転げ落ちるくらいに笑ってからは、今年はこれ以上笑うことはないのではないかと眼前の景色の色が無くなり、お雑煮の餅を残した。そもそも、薄味が感じられなくなっていた。
 2022年版は、始まった時点で4500枚の売り上げを叩き出し、野田が「勝ち確定、勝ち確」と言っていたが、トップのマヂカルラブリーへのネタから、ガヤが、「見た事あるネタ」「知ってる」などとしか出ず、明らかに調子がおかしい。
 永野が「ガヤのやり方忘れちゃったよ」とガヤっていたように、その後も、ランジャタイのネタへのガヤも、デスゲームの一番安いチケット席のような罵声が飛び交う。かと思ったら、ゴー☆ジャスに対してはヤジを飛ばさず、地方の進学校で開かれた学校寄席のような態度で厳粛にネタを見ていた。きっと明日のホームルームで、感想を提出しないといけないのだろう。そして、モダンタイムスは、ガヤを欲しがっていることを見抜かれ、冷たくあしらわれる。最終的に、ガヤの反省会をし、険悪な空気になっていたことを含めて、肩すかし史上、最高の肩すかしだったんじゃないだろうか。
 マヂラブno寄席の本質は、ガヤなのか、永野なのかは評価が分かれるところだが、今回かけられた「忍者になった浜崎あゆみ」「土曜日8時『男と女ほんとのことおせーて』」も腹抱えて笑った。永野のファンアートいじり発言に、ショックを受けた人がいるという話を聞いたので、永野の見方をお伝えすると、永野は基本的に、自分の価値観にそぐわないもの、いや、自らの半径3メートルより外のもの全てをバカにしている。極端に視野の狭い、全方向に拗ねた人間だ。その拗ねは、一切世間に届かない咆哮なので、だからこそ、狂っちまうほどに面白い。だからたまたま、永野が自分のスネに攻撃してきても、老害地下芸人が何か言ってらぁくらいで受け止めるくらいで良い。いや、永野さんもファンアートとして書かれたいんだな、と微笑みながら、永野のデフォルメファンアートを一所懸命に書くのがカウンターとして大正解だ。
 むしろ、一番、『M-1グランプリ』関係で承認欲求がきついのは、いや、危ない、危ない、永野にあてられて、悪口を言うところでした。
 新型コロナの感染拡大防止対策としての自粛と、そもそも親戚間の仲が悪すぎるという理由により、親戚周りも無いので、「マヂラブno寄席」を見た後は、暇を持て余していたが、そんな折り、「ダイヤモンドno寄席」に関するさざなみをキャッチした。真空ジェシカも出るので、遠縁の親戚にお年玉をあげたつもりで配信チケットを、購入し視聴した。
 ダイヤモンドの他に、令和ロマン、ママタルト、真空ジェシカ、Aマッソという、コンビ大喜利AUN」で掻き回しまくっていたメンバーなので、面白くないわけがないし、真っ当なものになるわけもなかった。結局、「AUN」の正当な出場者にも関わらず、最終的には「AUN面白かったから俺らもやろうぜ」と学祭でやって結局大失敗に終わるという大学生のような振る舞いになっていた。カオスという言葉では安易に片付けてはいけないとんでもないライブだった。ネタと大喜利の二本立てという建前だったが、実態は違法建築の二世帯住宅で、ギリ、人は死んでいない物件。
 ライブは、令和ロマンのネタから始まり、ママタルト、真空ジェシカ、Aマッソと続く。ネタパートで最後に、ダイヤモンドが出てくるが、実はダイヤモンドの野沢が入院中のため、出演はキャンセルとなっていた。どうなるのか思っている中で、明転すると、ダイヤモンドの小野が、野沢の等身大パネルを持ってきて、サンプラーを使用した漫才を始める。
 小野が普段のツカミの「あれ、車に轢かれた?」「あれ、脱獄してきた?」「ああ、髪切りたいなぁ。あ、今日休みか」に対して、「俺、タイヤ痕じゃねえから」「俺、オシャレ囚人じゃねえから」「俺、喪中の床屋じゃねえから」と、サンプラーを通して野沢が突っ込んでいく。小野が舞台からはけると、令和ロマンの金持ちの息子がきて、「え、金持ちが飼っている犬?」というと、「おぉいっ!」と突っ込む。いつの間にか、ダイヤモンド野沢輸出等身大パネルボケ大喜利ゾーンに突入していた。

 ここから、舞台上のスクリーンに、真空ジェシカのガクが助けを求める怯えた顔が写し出されてから大喜利の一問目が始まるまでは、秩序のある混沌でピークを迎えたが、それ以降は「AUN」が学級崩壊なら、「GANTZ」の「カタストロフィー編」だった。
 「ダイヤモンドno寄席」で特筆すべきことは、少なくともこの数ヶ月の、お笑いに関するトピックを全て押さえておかなければならないほどに知識が必要だったことだ。Netflixでの「浅草キッド」から始まり、「真空ジェシカのネタの飛ばし方」「M−1での競り上がり中のともしげの顔とダウ90000」などなど、もっと隠しお笑いがあるかもしれない。
 真空ジェシカが、地方民に取っては噂だけ聞いているめちゃくちゃやばいライブである「グレイモヤ」のBGMをネタに組みこんでいたあたりは、雰囲気で笑うしかなかった。でも、真空ジェシカの凄いところは、そこから「今年は今笑わなかったお客さんを笑わせる一年にしたい」とガクが弱々しい声で高らかな宣言をするということにつなげるところで、それはまさにそうかもしれないと思わされた。真空ジェシカは、今年の「M-1グランプリ」も楽しみだ。
 マヂラブno寄席をお屠蘇とするならダイヤモンドno寄席は密造酒のようで、余韻と言う名の二日酔いが凄かったので、迎え酒として、純粋に寄席のネタを見たくなり、「ちょうど良い寄席」を募ってみたら、「ゆにばーすno寄席」をレコメンドしてもらってこれも見た。ゆにばーすから始まってネタをたっぷりと見られて満足していたが、冷静に考えたら、2金玉、濃厚BLプロレス、脱衣早口、令和の明日順子ひろしの可能性を秘めたマリーマリー、シンプルに面白い春とヒコーキ、トム・ブラウンと、骨太すぎて、丁度良くはなかったので、チューニングのために、今年は一回、わらたまドッカーンからやり直そうと思いなおした新春でした。
 なにはともあれ、来年のリセットされたマヂラブno寄席と、一回本気で怒られて、かつ野沢輸出も戻ってきたダイヤモンドno寄席も楽しみです。
 何て言ったって、これからは配信の時代なので。