石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

愛は愛でいつか、どこかにたどり着くさ。

ここ最近の幸せといえば、録音したラジオのアートワークに、それぞれのホームページに貼られている写真を張り付けることだ。特に、バナナマンやオードリー、アルコ&ピースラブレターズは毎週毎週新しい写真をアップしてくれるのでとても楽しい。視覚的にも楽しいので「見えるラジオ」についても思い出してしまうほどだ。そして「見えるラジオ」って今年の3月いっぱいまでやっていたのかということも今知ったわけですが。
「いきなりで恐縮ですが、ラジオの世界から足を洗っていただけませんか」というラジオネーム・スプリングマインドからのハガキから始まったただただ最高すぎる『アルコ&ピースオールナイトニッポン』の第1回「愛のあるラジオ」から始まり、『CROWS』よろしく悪のテッペンを目指す第2回「EXPLODE」、小島瑠璃子のLINEDのIDをゲットするための第3回「flashmobは楽しい」と第4回「こじるりとオバマで渋滞」、『ルーズベルトゲーム』をいじりたいが、見ていないので番組オリジナルのルーズベルトを考案することになった第5回「ルーズベルト鉄道の夜」、サイバーパンクな第6回「STAND ALONE COMPLEX」、アメリカのラッパーJAY-Zが、嫁であるビヨンセの妹に エレベーターの中でボコられたのでその根性を叩きのめそうとした第7回「JAY-Z 頼むぜ・・・」と、一部に上がってからもサイコ色はそのままに、最高なラジオをお送りしている。
設定とラストという大枠だけを用意して、リスナーからのメールで物語が展開していくそのさまは、筒井康隆の実験小説『朝のガスパール』のようだ。
第8回『剛腕DASH』は『鉄腕DASH』のDASH島にあやかった企画で、地図に載っていない無人島に、アルピ島と名付け、開拓しようとするが、リスナーから送られてくるメールを紹介しても、いつもと違って一向に何も事件が起こらない。あまりの凪さに、アルコ&ピース無人島に乗り込むことにし、ブースを飛び出す。アルピ島にたどり着いたそのあとに、まさかの翌週へ引っ張るという誰も予想していなかった展開へと移るなか、そのあとすぐのラブレターズの放送は熱かった。
4月に行われたレギュラー放送初の聴取率週間の結果を二人が報告していたのだが、それは、このラジオを聞いているのは、関東で1000人に一人というものだった。
塚本も溜口も、「悔しいなあ」「ラジオってそんなに聞かれていないの」と聴取率調査の結果に悔しがる。だが、その数字は自分たちの番組が極端に聞かれていないというわけでなく、同じ時間帯の他の番組も横並びだったりしていることも知る。
生粋のラジオ好きとして知られる二人は、そのリスナーの割合に愕然とした様子で、自分たちの番組のことだけにとどまらず、ラジオ業界全体について憂う。それに刺激を受けたリスナーも熱いメールを送り、コーナーもすっ飛ばして、ラジオについての話が続く。
全編がコント仕掛けであったり、自分たちで新しいパターンを産み出していこうというラジオ番組がオールナイトニッポンというのは偶然ではない。JUNKという強大な王朝があってこその、カウンターとして生まれてきたといえる。
今回の放送での二人のトークでは、色々な問題提起があった。その中で、リスナーの端くれとして、同意しかねることももちろんある。
いつもとノリが変わるからスペシャルウィークは聞かないという人もいるが、伝説になっていていつまでも語られるスペシャルウィークをいくつも知っているし、FMをバカにするといったノリもいい加減、もういいぜとなる。
他には、書き起こし、違法アップロード、ツイッターに寄せすぎた企画、ラジオを長く聞いている人なら、それぞれに色々な主張があるだろう。
特に、アクセス数を稼ぐために、扇情的なタイトルをつけて前後の文脈もなく、自分の感想もいれない書き起こしをし続けているサイトは悪質だし、違法アップロードにしてみても、ラジオ番組のデータを販売している放送局にとっては邪魔な存在だろう。悪貨は良貨を駆逐するとはよくいったものだけれど、これらが横行すると、造幣局まで潰しかねない。ただ、これらの流れはインターネットという媒体がある以上、しょうがないことだとも思っている。
先日放送されていた『アメトーーク』での「ジャッキー・チェン芸人」は、ただただ楽しい回だった。中川家次長課長中川翔子与座よしあき、それぞれが思い思いの話をする様はまさに、愛があると呼ぶにふさわしい放送だった。中川礼二の物真似にももちろんしびれたが、次長課長河本が、ただ話したいエピソードを話し、それが打ち合わせになかったがために、VTRを用意していなかったという瞬間があったのだけれど、テレビからはみ出した瞬間を見られた気がしてたまらなかった。
そんななか、ジャッキーの魅力伝わっていますか、と聞かれたゲストの河北麻友子が「全然伝わっていない」と言い切っていたのをみて、一瞬で血圧が30は下がってしまった。
どんなにしても、伝わらないところには伝わらないという現実を突きつけられた。
それと同じように、どんなに愛のある人が描き起こしをしても、馬鹿は誤読するとしかいえない。
余談だけれど、そのあとも中川礼二の即興コントにかました「いちいち長いわ」というツッコミに見られる、バラエティに慣れてきましたよ感に出ていたそのモンスター性に戦慄してしまった。ABC新人演芸大賞での、5分前にオファーを受けたのかと言いたくなるアシスタントのときよりも数百倍もとんでもないものを育ててしまったと思わせてしまう河北麻友子をこれからも見守っていきたい。
ラブレターズの溜口は頻繁に「よそのラジオを持ち込むな」と口にする。他のラジオで、出来上がった笑いのパターンを使い回すなよという意味だ。誰かがやっていることに追従することを拒否すると、途端に進むべき道は狭くなる。ただ新しいものを見つけた時に放たれるものの勢いはその分すさまじいものとなる。今はまだ、そこに到達しているとは言い難いかもしれないが、その胎動は感じられる。そういった荒削りのものがリアルタイムでアップデートされていく様子を感じられるのも、深夜ラジオの一つだ。
 金曜日深夜は、アルコ&ピースのANN、ラブレターズのANN、バナナマンのバナナムーンGOLD、東京ポッド許可局とまさに四番組四様で、全部聞いておいたほうがいいと思います。