タイタンライブ20th記念公演行ってきた。

タイタンライブ20周年記念講演に行ってきました。二日にわたったその公演は建国記念日から始まるという最高にオシャレなジョークだった。
出演者はタイタンからは長井秀和瞬間メタルウエストランド日本エレキテル連合、ゆりありく、ネコニスズ、ミヤシタガク脳みそ夫が、ゲストは、厚切りジェイソンメイプル超合金、シソンヌ、ハライチ、博多華丸・大吉アンジャッシュ、ナイツ、サンドウィッチマン、BOOMER&プリンプリン、村崎太郎パックンマックンアンガールズインスタントジョンソン東京03つぶやきシロー、流れ星、パペットマペットだった。目玉は爆笑問題の同期であり盟友の松村邦洋の出演、そして、期待の新人O2T1と、登場間際までシークレットだったスペシャルゲストだった。
 ライブのオープニングは、タイタンライブが始動した1996年からの流行語と当時のライブの写真が交互に流れるというものだった。その最後の最後に、タイタン所属のエレキテル連合の「ダメよ〜ダメダメ」が出るという、これ以上のないオープニングで、思わずエンディングかと勘違いして帰りそうになってしまった。
 手コキもののAVしか見ないというニッチな性的志向を持っている人間なのに何でこんなにあるあるの精度が高いんだと思わせるつぶやきシロー、900人ほどの観客の前でも地下ライブのような怪しい雰囲気を醸し出すコントをやるシソンヌと日本エレキテル連合、M1で惜敗した後に「ポップになりたい」と言っていた割には女将が庭に吊るされているというネタを披露したハライチを始めとした一流漫才師の面々の値千金の漫才、端々から性格の悪さが滲み出ていた村崎太郎、それに負けていないタイタンメンバーとどのネタも素晴らしかった。
タイタンライブでは、登場する芸人には出囃子の代わりにエピグラフが用いられる。それは全く関わりのない小説の一節が、その芸人のために存在しているかのように思えるほどに、イメージや芸風に合致する。例えば、博多華丸・大吉エピグラフは、吉田絃二郎の『八月の霧島』の「博多は夜の町である。夕焼けの空の色と雲の色がこの上もなく美しい。すべての建物も人の言葉も人の姿も、一つの柔かなリズムの中に律動してゐる。」というものだ。
爆笑問題とは太田プロ時代からの付き合いである松村邦洋エピグラフは、フランツ・カフカの『変身』の「ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目覚めたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。」だった。古典の名作の名文をあてられるところに、爆笑問題と松村の関係性の深さが物語られている。
松村はビートたけし小日向文世西田敏行の「1人アウトレイジ」を始め、阿部寛の「下町ロケット」、津川雅彦木村拓哉堺雅人中尾彬とモノマネの対象が朝起きたグレゴール・ザムザのように切り替わっていくその藝はキチガイじみていて最高だった。特に伝家の宝刀「織田信長オールナイトニッポン」と、ビートたけしとの「顔面麻痺のたけしを真似していたら楽屋に呼ばれて、さすがに怒られるかと思ったら、『(麻痺しているところが)左右逆だよ』と怒られた」という最高のエピソードを見られたのは嬉しかった。予習していなかったことを後悔していた「真田丸ネタ」はまだ練習中ということで全く仕上がっていないのには大笑いした。
多幸感のまま迎えた二日目の目玉は、期待の新人「O2T1」とスペシャルゲストだった。スペシャルゲストについては、あの人だという予想は出来ていたもののそれが外れた時のショックが大きかったのでコント赤信号か解散したキリングセンスの復活だろうということにまでハードルを下げていた。
O2T1にしてもスペシャルゲストにしても、O2T1は、爆笑問題と社長であり太田の妻・光代が漫才をやるんじゃないかとか、往年の名作「進路指導室」をやるんじゃないかとか、予想は錯綜していた。そして実際は、O2T1は「進路指導室」ではなく新作コントで、スペシャルゲストはビートたけし改め立川梅春だった。それはまさに爆笑問題の誠実さだった。 
O2T1のコントは、舞台が明るくなると、上下グレーのスウェットでそろえた田中が椅子に無表情で座っているところから始まる。そこに、同じ衣装の太田が水筒を持ちながら登場してくる。太田は陽気に田中に話しかけるけれども、田中は仏頂面のまま無視を決め込む。同じような状況がしばらく続いた後、突然田中が「どうして起こしたんだ!!」と太田を怒鳴りつける。
そこから、二人がいるのは宇宙船の中で冷凍睡眠中だった田中は太田に起こされて怒っていること、田中と太田は核廃棄物を地球から宇宙船で遠い惑星へと捨てにいくという任務の途中だったことが明かされていく。
その星へは、片道百年かかるので冷凍睡眠装置に入っていたのだけれども、手違いで途中で起きてしまった太田は、田中を起こしたという。それから太田は絶叫する。「寂しかったんだよおおお」「寂しかったの!!」。ここまでの長いフリを経て飛び出た、地団駄を踏みながら発せられたその台詞で会場ではどかんと笑いが起こるも、やっぱり、日本大学藝術学部の受験で一人で騒いでいたという三十年以上前の太田のエピソードがよぎってしまい、泣けてしょうがなかった。
そこからまた話は二転三転していくが、その中でもナンセンスな動きをしてはしゃぎつづけても、コントを全く邪魔しない時事ネタの使い方に笑いながらうっとりしていた。30分近く演じていたSFコント「冷凍睡眠」は、人間の間抜けさをどこまでも愛するという太田の優しさが詰まったものだった。
そういえば、爆笑問題はそもそもコント師だった。『ボキャブラ天国』もコントだし、『爆チュー問題』なんて最高のシットコムだ。田中が台詞を覚えられないから、ということで漫才師に転向したのであって、そのままコントを続けていたら、もしかしたら同じく超一流のコント師バナナマンが漫才師としてラママの舞台に立ち始めたんじゃないかという別のお笑い史を妄想させるくらいの磁場を持つほどに一、超一流の漫才師でありながら一流のコント師だったということをすっかり忘れていた。
爆笑問題の漫才が終わったあとに、太田光が好きな作家・司馬遼太郎の『新史太閤記』の一節がエピグラフとしてスクリーンに映し出されて、その右下の「立川梅春」の文字に会場はどよめく。立川梅春は、ビートたけしが今落語をやる時の口座名だ。出囃子の「梅は咲いたか」が鳴り、着物姿のビートたけしこと立川梅春が舞台上に設置された口座に向かって歩いている。 
予想は出来ていたものの本当に現れたビートたけしを見て、「たけしってまじでいるんだな」という思いを抱きながら、舞台を凝視した。ぼそぼそと亡母さきの思い出を話し始めて、「家出して住み始めたアパートの家賃をずっと払ってくれていた」「暴力事件を起こした時に『あんなやつ死刑にしてください』と言った」「無心していたお金は実は全部たけしの名義で貯金していたという」全部聞いたことある話だったのだけれども、声のトーンや、「おい、たけし見てるぞ」という感情で涙が溢れた。
その亡き母の話をマクラに「人情八百屋」を演じ始める。「人情八百屋」は、両親が自殺してしまった二人の子供を人の良い八百屋が引き取るという噺だ。それは立川談志が演じていたものでもある。笑える話も出来るけど、談志師匠もタイタンライブで人情噺をやったから、とこの噺を選んだという。
梅春の声だけを聞いていたいという思いで目をつぶったり、一挙手一投足を見逃したくないので舞台を凝視したりと色々な感情が綯い交ぜになっている中で、ずっと感じていたのは切なさだった。梅春の「人情八百屋」は客席に向けられているというよりは、落語を繰りながら亡母であるさきさんとの思い出をなぞる独り言のようだった。
落語を終えたたけしが口座の上で足が痺れていると、爆笑問題が飛び出してきて、「これは事件ですよ、フライデー事件以来の!」と叫んだ。
 そこからエンディングとなった。タイタンライブの構成は、全出演者通してネタを見せた後に、エンディングの告知コーナーで爆笑問題と出演者が話すというとてもシンプルなものになっている。
太田に股間を触られ続けても動じず、「縁起ものですからね」と返すメイプル超合金カズレーザーにテレビスターとしての底知れない資質を見たり、「小保方だろ」「清原だろ」「野々村だろ」と渦中の人の名前で太田に雑に「児嶋だよ!」を振られると困惑しながらせめて「せめて大嶋から始めろよ、後は何でもいいから」と言っていたアンジャッシュ児嶋や、楽屋では「今日もすれ違うんだろ?」と爆笑問題の二人にいじられるわ、グルメ本の出版の告知をしたら客席が変な空気になるわで散々だったアンジャッシュ渡部を鼻と腹で笑ったりした。
ビートたけしに「紳助さんに怒られた東京03です」と太田に紹介された東京03飯塚は飯塚で、突然前に出てきて「TBSに一般の人向けの感謝祭のセットがあって『感謝祭を体験してみよう!!』と書いてあるんですけど、『もう体験したいわけないだろ!!』・・・・・・って思いました。」と披露しようと準備していたという漫談を披露した。
同じように時事漫才をするので最近ネタ番組で一緒になるとネタを確かめ合うというナイツとは、「今日は清原を譲りました」というやりとりを聞けたと思ったら田中から「明日はベッキーをやります」というよくわからないネタばれも飛び出たりもした。時事ネタといえば、博多華丸・大吉は、漫才の頭に今回のために作られたであろう華丸が「時事ネタをやりたい」と言いだして結局失敗するというパートをやってくれて、それは漫才師にしか出来ない敬意の表し方だった。 
特に印象深かったのは、エンディングでは、脳みそ夫はタコ口で「たけしさん、こんちわーす。たけしさんにお会いするのが目標だったので、めちゃくちゃうれしいーす」と、インスタントジョンソンゆうぞうは「落語おつかれちゃ〜ん」と思い思いボケる中、日本エレキテル連合のクレイジーな方、中野はすでに泣いていて「舞台袖でたけしさんと爆笑問題の三人が話している姿を見て、なんて平和なんだ」と感動を露わにして、一斉につっこまれていた。その時会場は笑いに包まれていたけれども、「笑うところじゃねえ!」と荒ぶってしまった。あと相変わらず相方の橋本のTシャツ姿はむちむちしていてエロかった。
そうして、二日に亘った祝祭は幕を閉じた。
あまりに幸せで、夢になってしまえなんて思って帰りのサイゼリヤでお酒を飲んだりした。