石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

コサキンがウチくる!?DEワオ!

先日、仕事で社用車を運転していたら、左の側面をがっつりとこすってしまうという事故を起こしてしまった。人生で初めての経験で右往左往していたのだけれど、職場の近くだったこともあり、すぐに報告が出来た。
当たり前のことだけど、上司も警察も来て、ずっと吐きそうだった。幸いにも人を巻き込んだとかではなかったので、一時的な処理を終えることができたのだけれど、その間はいたたまれなすぎて、「いっそのこと北野映画の様にその銃で撃ち殺してくれよ!!」という気持ちになっていた。
心がバッキリと折れて課に戻ると、今度は人事異動が発表されていて、出て行くと思われていた人が残ったり、残ると思っていた人が出て行ったりと、情報多すぎた。大学二年生だったら、「桜の季節過ぎたら遠くの街へ行くのかい」なんてタイトルのブログ記事を書いたりするような日に事故を起こしてしまった、そんな本当に「なんて日だ!」な日には、「なんて日だ!」という言葉はとっさには出てこないということも知りました。
何にせよ、お金を稼いで、AmazonでDVDも買って、自嘲気味に「こんなもん大人だよ、大人」と思っていたけれど、まだまだ子供です。子供おちんちんです。
「ウチくる!?」の15周年SPで、結成30周年のコサキンがゲストの回がとても良かった。コサキンと言えば、ごきげんようで「危機一髪」というサイコロの目が出たときに「一機、髪危ない」と言う、でお馴染みの小堺一機と、生まれ変わったら井川遥の息子になりたい関根勤のコンビ。
その二人が、関根勤小堺一機それぞれの思い出ではなく、コサキンというコンビとしてのエピソードを披露していたのだけれど、どれもカッコ悪くて、どれも格好良かった。
2人の出身番組「ぎんざNOW」の思い出のスタジオの跡地(今は銀座三越の二階にあたるという)、当時から通っているナイルレストランという老舗のインド料理屋の名物ムルギーライスを食べつつ、トークは広がる。
驚いたのは、有吉弘行命名するところのバブルの生き残りこと中山秀征が「僕の芸能の軸は小堺さん」と言い、その影響の一つに「生放送の前説を見て、終わってからの後説を見て、あれから僕も自分でやらせてもらう番組は全部前説と後説やる」と。それだけでもかっこいいのに、ここ9年面白いことを言っていない青木さやかが「何でですか?」と小堺一機に聞くと「本番中にしゃべり足りないからなんですよ」「聞くのが多いんでストレスが溜まっちゃうんですよ。お客さんにすれば早く帰りたいのに、何喋ってるんだろうってなっている」。
そもそものコサキンというコンビが結成したきっかけについての話になり、浅井企画での先輩後輩という関係で、「映画行こうよ!って、マッドマックス2見て、ナイルレストラン来てカレー食べる」そんな日々に、突然放送作家に呼び出され、「若いコメディアンが仲良くしているだけじゃもったいない。コンビ組めば?」って言われたと。それでも「コンビって仲悪いとかあるじゃない、そういうの聞いていたから嫌だね」なんて言って、話し合いの末、その作家に断りに行くと、「何難しく考えているの?クッキー食べるみたいな感じで気軽にやりゃあいいじゃん」と言われ、「クッキーかあ……。よし、やろう!」となりコンビを組むことになったと。そしたら「辞めようと思ったら、今度は辞めさせてくれなくて」と。
コンビを組むと、事務所の社長が「第二のコント55号だ」と言い出し、「お笑いスター誕生を10週勝ち抜くんだ」と息巻き始めたと。だが小堺はそれを断る。理由は「勝って泣くのが嫌ですって。コメディアンが感動して泣いたら、次から笑えないんで嫌ですって、生意気に断っちゃった」と。
師匠にあたる萩本欽一の話題になり、「ごきげんよう」の前身番組の「いただきます」の時に、萩本に「人の話を聞け。聞いてれば回せるようになるんだから。お前は全部自分でやろうとする。何であんな面白いオバさん達がいるのに自分ばっかりしゃべってるんだ。聞いたら、こんな面白い材料をオバさん言ってくれていたんだ。自分のなかではレベル50位に落としたら、数字(視聴率)がどんどん上がってきた」と。
他にも、「(大将に)潜れって言われたの。お前らは振り幅が大きい。出来不出来が大き過ぎる。ちゃんとライブハウスで振り幅を調整していけば、毎回同じように面白い事出来るから、人気が上がってくる」という言葉を受け、下北沢のライブハウスでネタをやるようになっていた二人だが、そのあとに、クロ子とグレ子という役を与えられた時に、ライブでおろしていたネタが溜まっていたので、困らなかったと色々とワクワクする話が出ていた。
最後に関根が小堺について、こう語る。
「小堺君はプライドがあって偉いなと思った。4週か5週に一回ウケない時があるんですよ。なんだかウケない時がある。僕は来週頑張ればいいやってなって、今はココを去った方がいいって思うわけ。でも、小堺くんは『ダメだ』って目をするの。引かない。1回でもウケてから帰る。」
そう真面目に言ったあとに、貯めて「でも結局はウケないんだよ!」には大爆笑させられてしまった。僕はコサキンリスナーとしては聞いていない時期と、聞いていない時期があるのでヘビーリスナーとは言えないのだけれど、高校生の時に効いたトークの内容で忘れられないものが一つある。名前は失念したが、渋めの俳優さんと関根さんが共演したさいに、「『丸くなった』ということは削られて角が取れて小さくなったということじゃないんだよ。刃を鞘に収めたことによって、一回り大きくなるってことなんだよ」と言われたというもの。
僕は若手芸人の「尖りエピソード」が大好きなのだけれど、この話が印象に残っていて未だに、そういった類の話を聞くと関連して思い出す。
下積み時代だったり、嫌だった過去というカッコ悪い話の一つ一つに、オチをつけてくれる二人はなんて格好良いんだろうと思った放送だった。


ちなみに僕は今日で、丸くなるには早く、尖るには遅い28歳になりました。