石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

TVを体感する番組「リアル脱出ゲームTV」

ラブレターズの「YOU SPIN ME ROUND」を皮切りに、「オードリー「まんざいたのしい」、バナナマン「cutie funny」、バカリズム「COLOR」と、連休の取りやすいこの時期に合わせて、単独ライブが熱い一週間が終わった。
これらの全てを見ることが出来た人もいるかと思うと、羨ましい。やっかみも込めて、そんな人へ「好きな芸能人が大嫌いな芸能人を褒めちぎる」という呪いをかけました。
僕がずっとかけられている呪いです。
ここ数日は、己のくじ運の悪さへの恨みを伊集院光の「ファミ通とぼく」を読むことで誤魔化していた。
この本は、伊集院光ファミ通のコラム「伊集院光接近中につきゲーム警報発令中」をまとめたもので、1998年から2000年、2000年から2002年の二冊同時に刊行されたもの。ここ数年のゲーム歴と言えば、パワプロクンポケットを思い出した様に買って、サクセスモードに数ヶ月やっては放置というレベルのものなので、最初は、伊集院さんの本だし買おうかな、本当は一番読みたいのは「のはなし」の新刊だけど全然出ないな!という気持ちで読みはじめたのだけれど、これがやたら面白かった。
やったことのあるパワフルプロ野球のサクセスシリーズやドラゴンクエスト、プレイはしたことないもののラジオを通して概要を知っていなゲームのことが多かったことや、ゲームボーイアドバンスを発売日に手に入れるために奔走したことや、海砂利水魚(現・くりぃむしちゅー)やアンタッチャブルといった友人との熱いパワプロ大会の模様といったゲームネタ以外にも書かれていたりするからだとか、ラジオでもお馴染みの珍文奇文が多く含まれているとか、掲載された当時のファミ通やコラムを読んでの感想や、そのゲームにまつわるイラストがドット絵で追加されているからだとか色々あるからだと思っていたのだけれど、違う!そんなこねくりまわした理屈とか関係ない!と気付いた。
この本を読んでいてニコニコとしてしまうのは、大好きな人が、大好きなことをして楽しんでいるのが伝わるからだといういたってシンプルな理由からくるものだった。
ここを上手いマクラとみるか、ドヤ顔にじみでて気持ち悪いとみるかは貴方次第になるのだけれど、ゲームといえば、2013年8月14日にTBSで放送された「リアル脱出ゲームTV 〜Sky High〜」が面白かった。脱出ゲームは、密室に閉じ込められているプレイヤーが、部屋の中にある道具屋クイズを解いて、そこから脱出するというものというのが概要で、携帯ゲームやサイト等で楽しめる。リアル脱出ゲームは、それを、アトラクションにして、自分で見て触って、部屋から脱出するというものになっている。「リアル脱出ゲームTV」は、それをTVで試みたものだ。
「リアル脱出ゲームTV」は過去に深夜時間帯で放送され、三回目の今回は満を持して、ゴールデンタイムでの登板とあいなった。
バカリズム扮する「謎男」は過去に二度、爆弾テロを企てたことのあるテロリストだ。爆弾と共に謎も仕掛け、その謎を解くことができれば、爆発を回避することができるというものが大まかなドラマの趣旨だ。
今回、爆弾が仕掛けられた場所は空。制限時間である一時間以内に謎を解くことができなければ、東京上空を漂う飛行船に仕掛けられた爆弾が爆発を起こすことになる。
「リアル脱出ゲームTV」は、警視庁警備部所属の警官で暗号解読班のリーダーを務める香山役には、「勇者ヨシヒコシリーズ」でムラサキでも馴染み深い木南晴香を軸としたドラマ仕立てになっていて、視聴者は謎を解きながら、ドラマも楽しめる。
第一問目は「81(2-4)598」。この場所に、飛行船に仕掛けられた爆弾を止めるための機械が置かれていると謎男は言う。テロリストがフリップを用意したとなると、ちょっと面白いが、特にヒントもなくこの数式めいたものが出されると、頭をひねって、あれでもない、これでもないと考える。
続いて、その場所にある機械にこの言葉を入力すれば爆弾のカウントダウンを止めることが出来るとして出された第二問目は「こうこえひ/たのとえな/つはかのも」という15文字の平仮名が5文字で一段となって三段の塊になっていて、その下には「3×5→5×3」と書かれている。
まずは、一問目の回答はというと、明らかにキーワードとなるであろう「(2-4)」という部分。引き算?比率?二年四組のあの子の縦笛?
どれも違う。実はこの数字は、前の時間に放送していた日本代表とウルグアイのサッカーの試合の結果である「2対4」を指しているもの。そうなると、「81」は日本、「598」はウルグアイとなることに勘付く。実はこの数字は、国番号というもので、日本の国番号が81で、ウルグアイの国番号が598。つまり、サッカーの試合が行われていた「宮城スタジアム」に、爆弾を止めるための機械がある。
二問目の考え方は、「3×5→5×3」がヒントとなっている。「こうこえひ/たのとえな/つはかのも」は、5文字がそれぞれ一段ずつになっているが、それを、3文字一列の5段に並び替えると「こうこ/えひた/のとえ/なつは/かのも」になる。それを右から縦読みで読んでいくと「答えはもう一つの声の中(こたえはも/うひとつの/こえのなか)」になる。「もう一つの声」とは?そう、副音声を指す。テレビの音声を、副音声に変えると聞こえてくるのは「まだ謎は続く。止めて。君の勇気で……。」と謎男の声。
問題は二問目で終わらない。この謎を解くヒントは、謎男が問題を出した時の映像にある。
その映像で謎男は「僕を信じるなら、周りの雑音は消して、僕の声だけを聞いて」と言いながら右耳に右手を添えるジェスチャーを行う。ここから紐解いて、副音声の右だけを聞いてみると、先ほどの言葉から聞こえてくるのは「まなつのゆき」という6文字。
この言葉が、最終回答、爆弾のカウントダウンを止める解除コードとなっている。無事、この謎を解いた香山は、宮城スタジアムに残っていた警備員に、入力をお願いし爆発を食い止める。謎男は、謎が解けたプレゼントとして東京上空から真夏に雪を降らせる。
リアル脱出ゲームは、クイズ番組のように、その問題だけを見て解けるようには制作されていない。直前に同じチャンネルで放送していた番組を思い出し、副音声という機能を使用してはじめて答えが分かる。
テレビ番組だけでなく、テレビそのものを、一歩引いてメタな視点で見ることが必要とされる。そうして視聴者は、TVを見ながら、ドラマを楽しみながらにして、脱出ゲームを体感することが出来る。色々な番組で応用するということは難しいシステムだとは思うけれど、また一つ、テレビの新たな視点の提示が出来た番組だった。
番組の最後には、正解率が1%ほどのなかでも最速で正解にたどり着いた視聴者には、日産の車をプレゼントされることが発表され、その回答者と電話で話をしたときに、住所を尋ねたら、「愛知県の豊田市」という回答に対して、バカリズムがぴくっと反応した後に流したのを見逃しませんでした。あれには笑った。こういうメタに対してはめざといんですが。いやらしい性格とも言えますか、そうですか。
しかし、IPPONグランプリの一般回答で採用される人のフリーター率といい、今回のリアル脱出ゲームの最速回答者がフリーターといい、日本はシューカツをう一度見直すべきなんじゃないか?