石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

(記録程度)コントライブ「夜衝」感想

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 渋谷のユーロライブでコントライブ「夜衝」を配信で視聴しました。2021年の7月末から8月の頭にかけて上演されたコントライブ
出演者は、玉田企画の玉田真也とテニスコート神谷圭介ラブレターズ溜口祐太郎、
玉田真也(玉田企画)、神谷圭介(テニスコート)、蓮見翔(ダウ90000)、伊藤修子。(下段左から)溜口佑太朗ラブレターズ)、森本華(ロロ)、忽那文香(ダウ90000)、中島百依子(ダウ90000)という布陣。
 一本目の「シネコンのバイト」から始まり、「謎解き」、「地元のスーパーの最終日」、「持ち込み」、「大学での講演」、「定食屋」、「二次会でカラオケ」、「深夜のパーキングエリア」、「ボーリング場」と、計9本のコント。最初は、色んな人がレコメンドしているから見るか、くらいだったけれど、間違いなく、今年見た配信で5本の指には入る面白さでした。
 タイトルの「夜衝」は、台湾の若者言葉で「夜中の衝動」という意味らしく、人間は暗いところでは変なテンションになってしまうという何ともいえない瞬間それぞれの面白さが梱包されていました。
 特に好きだったのは、好きだったのは、「定食屋」と「深夜のパーキングエリア」。
 ご飯を食べながら同僚の愚痴を聞くというだけのコントなのだけれど、これがやたら面白かった。ほんとうにそれだけなんだけれど、間の取り方含めて、しっかりとした演技力が台本を何倍にも面白くしているということが分かって、そのうえで思わず何回も繰り返してみてしまいました。「深夜のパーキングエリア」は、パーキングエリアで車の鍵を無くしてしまって立ち往生しているカップルの会話から始まるのだけれど、そこから、徐々に、登場人物が増えていって10人くらいになって、ぐちゃぐちゃになってから、最終的には丸く収まる。何人出てくるのか分からないからこそ、笑わせてくるパターンもセオリーから外れてくるし、展開も読めないし、深夜のパーキングエリアにいたというだけの共通点を持った人たちの人生がたった一瞬交差しただけなのに、凄いコントになっているという感動すらあった。
 すごく難しいし、語弊がある言い方になってしまいますけれど、「夜衝」にあったものは、今の芸人が作るコントには無いものばっかりだったとちょっと言い切って良いと思う。芸人のコントを見ていると、それなりに笑いへの導線、展開が見えてしまう。何より、コント中に出てくる人数が分からないってこんなに自由なんだと、あまりにお笑い芸人のコントに慣れ過ぎたがゆえに、あまりに「夜衝」は斬新だった。
 また、やっぱり、演技力が段違いに凄いということも、改めて実感した。『俺の家の話』では、フリースクールの優しい教師を演じていた伊藤修子が、「夜衝」のコントでは、不法投棄を繰り返す女性や、薄汚れてしまった大物漫画家にしか見えなくなってしまう。例えツッコミがなくても、一発で場面を展開させなくても、角度の入った設定を用意しなくてもセリフだけで展開させてスタートから遠くに連れて行ってくれるんだという感動の余韻が凄かった。とはいえ、そんな中でも、ラブレターズ溜口が物凄く良くて、あぁ、やっぱタメ、良いなぁ~ともなったからもちろん、芸人のコントも負けてはいないのだけれども。
 蓮見翔率いるダウ90000が、キングオブコントの決勝に進む未来はそう遠くないはずです。