石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

タイタンライブ20th記念公演行ってきた。

タイタンライブ20周年記念講演に行ってきました。二日にわたったその公演は建国記念日から始まるという最高にオシャレなジョークだった。
出演者はタイタンからは長井秀和瞬間メタルウエストランド日本エレキテル連合、ゆりありく、ネコニスズ、ミヤシタガク脳みそ夫が、ゲストは、厚切りジェイソンメイプル超合金、シソンヌ、ハライチ、博多華丸・大吉アンジャッシュ、ナイツ、サンドウィッチマン、BOOMER&プリンプリン、村崎太郎パックンマックンアンガールズインスタントジョンソン東京03つぶやきシロー、流れ星、パペットマペットだった。目玉は爆笑問題の同期であり盟友の松村邦洋の出演、そして、期待の新人O2T1と、登場間際までシークレットだったスペシャルゲストだった。
 ライブのオープニングは、タイタンライブが始動した1996年からの流行語と当時のライブの写真が交互に流れるというものだった。その最後の最後に、タイタン所属のエレキテル連合の「ダメよ〜ダメダメ」が出るという、これ以上のないオープニングで、思わずエンディングかと勘違いして帰りそうになってしまった。
 手コキもののAVしか見ないというニッチな性的志向を持っている人間なのに何でこんなにあるあるの精度が高いんだと思わせるつぶやきシロー、900人ほどの観客の前でも地下ライブのような怪しい雰囲気を醸し出すコントをやるシソンヌと日本エレキテル連合、M1で惜敗した後に「ポップになりたい」と言っていた割には女将が庭に吊るされているというネタを披露したハライチを始めとした一流漫才師の面々の値千金の漫才、端々から性格の悪さが滲み出ていた村崎太郎、それに負けていないタイタンメンバーとどのネタも素晴らしかった。
タイタンライブでは、登場する芸人には出囃子の代わりにエピグラフが用いられる。それは全く関わりのない小説の一節が、その芸人のために存在しているかのように思えるほどに、イメージや芸風に合致する。例えば、博多華丸・大吉エピグラフは、吉田絃二郎の『八月の霧島』の「博多は夜の町である。夕焼けの空の色と雲の色がこの上もなく美しい。すべての建物も人の言葉も人の姿も、一つの柔かなリズムの中に律動してゐる。」というものだ。
爆笑問題とは太田プロ時代からの付き合いである松村邦洋エピグラフは、フランツ・カフカの『変身』の「ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目覚めたとき、自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。」だった。古典の名作の名文をあてられるところに、爆笑問題と松村の関係性の深さが物語られている。
松村はビートたけし小日向文世西田敏行の「1人アウトレイジ」を始め、阿部寛の「下町ロケット」、津川雅彦木村拓哉堺雅人中尾彬とモノマネの対象が朝起きたグレゴール・ザムザのように切り替わっていくその藝はキチガイじみていて最高だった。特に伝家の宝刀「織田信長オールナイトニッポン」と、ビートたけしとの「顔面麻痺のたけしを真似していたら楽屋に呼ばれて、さすがに怒られるかと思ったら、『(麻痺しているところが)左右逆だよ』と怒られた」という最高のエピソードを見られたのは嬉しかった。予習していなかったことを後悔していた「真田丸ネタ」はまだ練習中ということで全く仕上がっていないのには大笑いした。
多幸感のまま迎えた二日目の目玉は、期待の新人「O2T1」とスペシャルゲストだった。スペシャルゲストについては、あの人だという予想は出来ていたもののそれが外れた時のショックが大きかったのでコント赤信号か解散したキリングセンスの復活だろうということにまでハードルを下げていた。
O2T1にしてもスペシャルゲストにしても、O2T1は、爆笑問題と社長であり太田の妻・光代が漫才をやるんじゃないかとか、往年の名作「進路指導室」をやるんじゃないかとか、予想は錯綜していた。そして実際は、O2T1は「進路指導室」ではなく新作コントで、スペシャルゲストはビートたけし改め立川梅春だった。それはまさに爆笑問題の誠実さだった。 
O2T1のコントは、舞台が明るくなると、上下グレーのスウェットでそろえた田中が椅子に無表情で座っているところから始まる。そこに、同じ衣装の太田が水筒を持ちながら登場してくる。太田は陽気に田中に話しかけるけれども、田中は仏頂面のまま無視を決め込む。同じような状況がしばらく続いた後、突然田中が「どうして起こしたんだ!!」と太田を怒鳴りつける。
そこから、二人がいるのは宇宙船の中で冷凍睡眠中だった田中は太田に起こされて怒っていること、田中と太田は核廃棄物を地球から宇宙船で遠い惑星へと捨てにいくという任務の途中だったことが明かされていく。
その星へは、片道百年かかるので冷凍睡眠装置に入っていたのだけれども、手違いで途中で起きてしまった太田は、田中を起こしたという。それから太田は絶叫する。「寂しかったんだよおおお」「寂しかったの!!」。ここまでの長いフリを経て飛び出た、地団駄を踏みながら発せられたその台詞で会場ではどかんと笑いが起こるも、やっぱり、日本大学藝術学部の受験で一人で騒いでいたという三十年以上前の太田のエピソードがよぎってしまい、泣けてしょうがなかった。
そこからまた話は二転三転していくが、その中でもナンセンスな動きをしてはしゃぎつづけても、コントを全く邪魔しない時事ネタの使い方に笑いながらうっとりしていた。30分近く演じていたSFコント「冷凍睡眠」は、人間の間抜けさをどこまでも愛するという太田の優しさが詰まったものだった。
そういえば、爆笑問題はそもそもコント師だった。『ボキャブラ天国』もコントだし、『爆チュー問題』なんて最高のシットコムだ。田中が台詞を覚えられないから、ということで漫才師に転向したのであって、そのままコントを続けていたら、もしかしたら同じく超一流のコント師バナナマンが漫才師としてラママの舞台に立ち始めたんじゃないかという別のお笑い史を妄想させるくらいの磁場を持つほどに一、超一流の漫才師でありながら一流のコント師だったということをすっかり忘れていた。
爆笑問題の漫才が終わったあとに、太田光が好きな作家・司馬遼太郎の『新史太閤記』の一節がエピグラフとしてスクリーンに映し出されて、その右下の「立川梅春」の文字に会場はどよめく。立川梅春は、ビートたけしが今落語をやる時の口座名だ。出囃子の「梅は咲いたか」が鳴り、着物姿のビートたけしこと立川梅春が舞台上に設置された口座に向かって歩いている。 
予想は出来ていたものの本当に現れたビートたけしを見て、「たけしってまじでいるんだな」という思いを抱きながら、舞台を凝視した。ぼそぼそと亡母さきの思い出を話し始めて、「家出して住み始めたアパートの家賃をずっと払ってくれていた」「暴力事件を起こした時に『あんなやつ死刑にしてください』と言った」「無心していたお金は実は全部たけしの名義で貯金していたという」全部聞いたことある話だったのだけれども、声のトーンや、「おい、たけし見てるぞ」という感情で涙が溢れた。
その亡き母の話をマクラに「人情八百屋」を演じ始める。「人情八百屋」は、両親が自殺してしまった二人の子供を人の良い八百屋が引き取るという噺だ。それは立川談志が演じていたものでもある。笑える話も出来るけど、談志師匠もタイタンライブで人情噺をやったから、とこの噺を選んだという。
梅春の声だけを聞いていたいという思いで目をつぶったり、一挙手一投足を見逃したくないので舞台を凝視したりと色々な感情が綯い交ぜになっている中で、ずっと感じていたのは切なさだった。梅春の「人情八百屋」は客席に向けられているというよりは、落語を繰りながら亡母であるさきさんとの思い出をなぞる独り言のようだった。
落語を終えたたけしが口座の上で足が痺れていると、爆笑問題が飛び出してきて、「これは事件ですよ、フライデー事件以来の!」と叫んだ。
 そこからエンディングとなった。タイタンライブの構成は、全出演者通してネタを見せた後に、エンディングの告知コーナーで爆笑問題と出演者が話すというとてもシンプルなものになっている。
太田に股間を触られ続けても動じず、「縁起ものですからね」と返すメイプル超合金カズレーザーにテレビスターとしての底知れない資質を見たり、「小保方だろ」「清原だろ」「野々村だろ」と渦中の人の名前で太田に雑に「児嶋だよ!」を振られると困惑しながらせめて「せめて大嶋から始めろよ、後は何でもいいから」と言っていたアンジャッシュ児嶋や、楽屋では「今日もすれ違うんだろ?」と爆笑問題の二人にいじられるわ、グルメ本の出版の告知をしたら客席が変な空気になるわで散々だったアンジャッシュ渡部を鼻と腹で笑ったりした。
ビートたけしに「紳助さんに怒られた東京03です」と太田に紹介された東京03飯塚は飯塚で、突然前に出てきて「TBSに一般の人向けの感謝祭のセットがあって『感謝祭を体験してみよう!!』と書いてあるんですけど、『もう体験したいわけないだろ!!』・・・・・・って思いました。」と披露しようと準備していたという漫談を披露した。
同じように時事漫才をするので最近ネタ番組で一緒になるとネタを確かめ合うというナイツとは、「今日は清原を譲りました」というやりとりを聞けたと思ったら田中から「明日はベッキーをやります」というよくわからないネタばれも飛び出たりもした。時事ネタといえば、博多華丸・大吉は、漫才の頭に今回のために作られたであろう華丸が「時事ネタをやりたい」と言いだして結局失敗するというパートをやってくれて、それは漫才師にしか出来ない敬意の表し方だった。 
特に印象深かったのは、エンディングでは、脳みそ夫はタコ口で「たけしさん、こんちわーす。たけしさんにお会いするのが目標だったので、めちゃくちゃうれしいーす」と、インスタントジョンソンゆうぞうは「落語おつかれちゃ〜ん」と思い思いボケる中、日本エレキテル連合のクレイジーな方、中野はすでに泣いていて「舞台袖でたけしさんと爆笑問題の三人が話している姿を見て、なんて平和なんだ」と感動を露わにして、一斉につっこまれていた。その時会場は笑いに包まれていたけれども、「笑うところじゃねえ!」と荒ぶってしまった。あと相変わらず相方の橋本のTシャツ姿はむちむちしていてエロかった。
そうして、二日に亘った祝祭は幕を閉じた。
あまりに幸せで、夢になってしまえなんて思って帰りのサイゼリヤでお酒を飲んだりした。

「落語はハードルが低い」といえる5つの理由

僕は落語が好きです。といっても地方に住んでいるので、CDで音源を聞いたり東京に行った時に舞台をみる程度の者です。それでも好きだと言えます。ただ落語に関しては、興味があるという所で止まってしまっている人も多いのが残念でなりません。
こんな素敵な娯楽に手をつけないというのはもったいないとさえ思っています。じゃあ、何が「興味がある」止まりにさせているのか考えて、五つのハードルを下げてみたいと思います。

1・日本語を喋る
どうですか、このハードルの低さ。馬鹿にしている、というわけではなく、落語は能や歌舞伎よりも見に来ているお客さんとの言葉遣いの差は小さいです。ということは、きちんと見ていれば、大まかなストーリーは追えるということです。
落語のオチについても、実際オチていないようなものもあったりするので必ずしもオチが分からないと意味がないかというとそうではなく、最初は物語の運びを楽しめばいいと思います。
落語は特に伝統芸能と大衆芸能という狭間で揺らいでる文化です。落語家自身もそこに自覚的なので、初めて聞く人にもわかるように要所要所で状況や用語を説明してくれるということもするし、出来る芸なので、全くもって心配はいりません。

2・用語なんて覚えなくていい
落語を見るためには勉強をしないといけないというイメージを持たれているというのもハードルの一つはないでしょうか。
それは、恐らく伝統芸能だからというところから来ていると思います。実際、「前座」「二つ目」「真打」「上下をきる」「鳴り物」などなど、専門用語のようなものは多いですが、それはどの業界でも同じで、全ての言葉を覚える必要は全くありません。
ドラマや映画、小説が色々とありますが、例えば病気のことに詳しくないと医療モノは楽しめないのか、金融業界に詳しくないと銀行モノを楽しめないのかというと全くもってそういうわけじゃないように、落語は予習が全くいらないと断言していいです。もちろんそこから掘り下げるためには色々と調べないといけないのは当然ですが、それはそれで楽しい作業です。
落語は伝統芸能であると同時に大衆芸能です。昔の音源を聞いたりすると、子供がげらげら笑っている声が入っていることはよくありますし、江戸時代には吉原という今でいうキャバクらや風俗のような場所に行く前の時間つぶしの娯楽でしたから、難しく考える必要は全くないのです。

3・落語はすべらない話であり、その楽しみ方はすでに知っている。
 落語に興味があるということは、少なからずお笑いが好きな人だと思います。そうでなくても『すべらない話』や『M-1グランプリ』『キングオブコント』を見たことあると思いますし、バラエティ番組の多くがトーク番組の側面を持っているという現代の日本では、トークの楽しみ方がわからない人はいないでしょう。
 落語の起源は江戸時代にまでさかのぼりますが、何百年も残っているのは何故かというと、とても単純にいうと「良く出来た話」だからです。もちろん長い歴史の中で消えていった話もありますが、逆にいえば現代でも聞ける落語は、残ってきた「良く出来た話」なわけで、何百年もすべっていない話ということです。
 芸人や芸能人がするトークと同じように楽しむことが出来る、といえばハードルは下がるでしょうか。

4・二次創作が豊富
それでもまだまだ、ハードルが高いという人は、落語を題材にした創作物を手に取ってみましょう。現在アニメの放送が開始された『昭和元禄落語心中』、宮藤官九郎脚本の『タイガー&ドラゴン』、連続テレビ小説ちりとてちん』、ドラマ『赤めだか』と枚挙にいとまはなく、それらが面白かったら、落語にハマれる素養があるかもしれません。

5・生の舞台でデビューする必要はない
落語デビューというと、寄席という名前ぐらいしか聞いたことのない場所に行かないといけないというイメージもついてきて、ぐっとハードルはあがるような気がしますが、別に必ずしも「生」の落語でデビューしないといけないという決まりはありません。
近くのツタヤに、CDやDVDがレンタルコーナーにあるはずですし、どちらも貸し出しをしている公立図書館も少なくありません。もっといえば、youtubeに音源が転がっています。
 これらの場合は、逆に噺や演者の数の組み合わせが多くなるという問題もありますが、その場合は、(4)にあるフィクションのなかで題材として用いられているものを聞けばいいと思いますし、極端な話、どれを手にとっても、どれを再生してもいいと思います。
 今現在残っているということは、面白いという理由に他ならないのですから。

以上が、ばっと思いついた、落語は怖くないよといえる5つの理由です。
ツタヤに行くもよし、図書館に行くもよし、youtubeを検索するもよし、寄席や渋谷らくごという会(初心者歓迎を謳っている!)に行くもよし、アニメ『昭和元禄心中』を予約してみるのもよし。
落語デビューしてみませんか?

俺だって日藝中退したかった的 ベストラジオ15

どうもこんにちは、数えたら2015年にラジオ400本聞いていた者です。毎年恒例、私的なベストラジオ10を紹介したいと思います。

10位 『ロリィタ族。の元カレ全員芸人あるある(2015.08.03)』
 カキタレのツイキャスと何が違うんだと言われれば、声がちゃんと出ているぐらいしか明確な答えが出ないで御馴染の期間限定で放送された『ロリィタ族。の元カレ全員芸人あるある』。「打ち上げのカラオケでこの曲を歌うケーダッシュの元彼に惚れました。THE HIGHLOWS『青春』」という曲紹介は斬新過ぎるし、奈美悦子ですら乳首止まりなのにクリトリスが無いってどうかしています。面白さで言えば、『アルコ&ピーANN0』の【EPISODE22/映(2015.8.28)】が入るべきでしたが、お笑いブームの最後の徒花と言っていいラジオを語り継ぐためにランクインしました。

9位 香水を買った話『藤岡みなみのおささらナイト(2015.12.07)』
 STVラジオという北海道のラジオ局で放送されている『藤岡みなみのおささらナイト』でのフリートーク藤岡みなみはただただ可愛いのにオープニングでどじエピソードを話すか、まれに自身の胸の無さについて話すという、銀杏BOYZの「駆け抜けて性春」に出てくる「私は幻なの/あなたの夢のなかにいるの/触れれば消えてしまうの/それでも私を抱きしめてほしいの」を体現化したガールなのですが、その日は、これからドジをしたエピソードを話しますというフリをしていたにも関わらず、嘘だろ!?と声を出してしまった回です。
 誕生日に友人に香水を貰った藤岡みなみは、今まで香水に興味がなかったけど良い匂いだからと使っていたので無くなってしまった。新しく買いなおすために、その空き瓶を持って百貨店に行って探してみるけれども全然見つからないので、店員に売り場を聞いてみると、「『こちらの商品はルームフレグランスですので、7階のリビングフロアにございます』って言われて、えってなって裏を見たら部屋用って書いていたんです。恥ずかしくなって逃げてきちゃった」という話し、そのあとに「肌も弱くないから、いいかなと思って買っちゃった」と話す。そのパートが終わったと思ったら、いつでもくしゃみを出すことが出来るのが特技と言ったけど、結局出なかったという、全てにおいて、嘘だろ!?とタランティーノ映画よりも展開が転んだという意味で衝撃を受けて、シソンヌならずとも好きになっちゃうのでランクインです。

8位 ギャロップ林健ゲスト『ダイアンよなよな…(2015.6.11)』 
 『ダイアンよなよな・・・』の中のコーナーでネタにされまくっていたギャロップ林が満を持してゲストとして登場した。ダイアンとは同期で気心の知れた中だけに、「林はテクニシャン」「眉毛が凄いから一瞬禿げてないのかなと思う」「林は新人類の禿げ。」「『みんな生えすぎちゃう』はハゲとセンス」といじられまくるが、林は一個一個突っ込んでいく。トーク部分の面白さもさることながら、「あの人の妄想プライベート」という有名人のプライベートや嘘の目撃情報を送るというネタコーナーが、ギャロップ林のネタだけになる特別企画「はやしたけし!」も腹抱えて笑うくらいにただただ面白かったのでランクイン。

7位 吉田の大将『オードリーのANN (2015.1.24)』
若林が仕事のために渋谷にあるHIP-HOPの洋服専門店に行った時に、店内に流れているBGMでノリノリになりながら洋服をチェックしている客がいて、変な客だなあと思いながら顔を見ていたら、吉田という同級生であるということに気付いたという話。吉田だよ、吉田、と言われてもピンと来ない春日に思い出させるために、当時の思い出話をしていく。そこでやっと春日は「大将!?」と当時のあだ名で叫び、思い出し、「あの大将!?」と驚く。その思い出した瞬間に、春日の「ずっと一年間通して教卓の真ん前の席にいて、休み時間もずーっと勉強して、成績がクラスで下から二番目だったっていう!?あの勉強なんだったんだ!っていう。」「学生服のカラーもちゃんとして、学校指定のだっさいバッグをずっと使っていた。」も面白かったけど、それを若林に春日の目線は悪いという糾弾され始めるところまで最高だった。
同級生コンビのラジオはこういう友達関係に戻る瞬間を楽しめるというそれだけで面白いのだけれど、「もしかしたら今ラッパーかもしれないという話になった時にも「どうする、普通にMC大将でやっていたら」とも言っちゃう黒春日が存分に楽しめたフリートークだったのでランクインしました。
 
6位 10分どん兵衛論『東京ポッド許可局(2015.12.27)』
話は『実感ですよ』論(2015.10.18)でマキタ局員ことマキタスポーツが、日清食品の「どん兵衛」を規定の5分を超えて、冒険心で10分待ってみたら、つるつるしこしこ感が増したと話したことに遡る。そこから好奇心が強い許可局員が試してみてSNS上に感想をアップしたところ、許可局員以外にも広がっていった。それだけにとどまらず、本丸である日清食品の「どん兵衛」担当者に届き、HP上でおわび文まで出て、マキタスポーツが開発者と対談をするという事態になった。そのおわび文も「日清食品は10分どん兵衛を知りませんでした。5分でお客様においしさを届けるということに縛られすぎていて世の中の多様性を見抜けていなかったことを深く反省しております。」という粋なものだった。
そんななかで、その開発担当者が東京ポッド許可局にゲストに来た回は、それらのムーブメントの総まとめという回だった。
10分どん兵衛は食スケベであるマキタスポーツが辿り着いた極地とも言えるが、これまで「屁理屈をエンターテインンメントに」を合言葉に泥棒にも負けずに世の中の事象への視線を問うてきた東京ポッド許可局が、新しいスタンダードをリスナーよりも外の世の中に打ち出したことに興奮してしまったのでランクイン。

5位 エル・カブキの漫才『Laughter Night(2015.9.20)』
『Laughter Night』というTBSラジオで土曜日深夜に放送されている、ライブ会場に観客を入れて収録しているから生の臨場感が伝わる、かつオンエアされない芸人もいるというほぼ『爆笑オンエアバトル』といっても過言でないネタ番組に、何故かハマって月に一回の頻度で出るようになったエル・カブキ。ただウケているというだけではなく、月間チャンピョンを集めた大会にワイルドカードとしてねじ込まれるというハマりっぷりだった。元々、エル・カブキのことが好きで、youtubeに公式で公開されている漫才動画をチェックしていたものの、今現在のエル・カブキのネタを定期的に聞けるということが嬉しすぎた一年だった。
エル・カブキのネタは二人とは年齢も近く、ネタにしている芸能ネタの多くが、絶妙なコントロールで内角をかすめてくる。中でも「全員が毎週『サンジャポ』チェックしてると思うなよ』」「あ、みなさん、『ワイドナショー』派ですか?」のやり取りがパンチラインすぎるのでランクイン。

4位 2015年を振り返る若林『オードリーANN(2015.12.27)』
 2015年最後のオードリーのANNということで話題は2015年を振り返るものになった。若林は「ずっとおもしろかったなー、仕事がね」と話し「生まれて来て一番楽しかった一年だ」とまで言い切る。
確かに2015年のオードリーは、『しくじり先生』のゴールデン進出、『パイセンTV』のスタート、『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』というコント番組、話題には出さなかったものの、数年ぶりのトークライブ『LOVEorSICK』と『ネタライブ』を数回重ねていたオードリーの2015年はかなりお笑い芸人として充実していて、春日が言う様に「キャリア・ハイ」な一年に思えるが、若林は今年一年を漢字一文字で表すとするなら、後悔の「悔」だと話す。
それは、『IPPONグランプリ』での惨敗もそうだが、『すべらない話』で春日がMVSを受賞したこと、その打ち上げで春日が錚々たるメンツにずっと褒められていたことが本当に悔しかったからと話す。
 そこから、昔春日の家でトークライブをしていた時にも春日はひとエピソードも考えてこなかったから自分が何個もエピソードを考えていたりしたのに、ここにきて春日に『すべらない話』でサイコロの春日の出目が沢山出たしMVSも取られたことが悔しかったと話す。それは『爆笑問題カーボーイ(2010.11.02)』で、水嶋ヒロが『KAGEROU』で第5回ポプラ社小説大賞受賞を受賞したことで、太田が『マボロシの鳥』出版が霞んでしまった時の腹ちぎれるくらい笑わせてもらった、爆笑問題太田の荒れ様を彷彿とさせる回だった。
 若林は、「何で運ていうもんがあるんだ!」「勝負の厳しさを知らない馬鹿はね、『人間の運の総量は一緒、それがいつ来るか』みたいなことをいう阿保がいるんですけど、総量なんて違う違う!差があるある!」「運のいいやつはずーっと良い!運の悪いやつはずーっと悪い!でも生きていかなきゃいけない!」「魂の叫びするしかないんだよ、運がないんだから!」と咆哮する。
荒れすぎて、春日のことをライバルだと言い出す始末。これもまた、爆笑問題太田が田中に向かって言った「お前が好きだと言えば、言ってみれば好きなものもの嫌いになる。それを覆す威力はお菓子にはないんです。お前の方が大きいんです!(『爆笑問題カーボーイ(2013.7.24)』)」を彷彿とさせる愛憎入り混じった告白が飛び出たのでランクイン。

3位 番組通算1009回記念SP『伊集院光 深夜の馬鹿力(2015.2.17、24)』
2014年の年末に、放送1000回を迎えた、『伊集院光 深夜の馬鹿力』。その際には表立ったお祝いはしなかったものの、さすがにそれは・・・・・・という空気になったために急遽、お祝い&振り返りとして放送されたのが、『伊集院光深夜の馬鹿力 番組通算1009回記念 ぼくの好きなあなたのすきな歴代番組コーナーベスト18』が二週間にわたって放送された。
個人的には聞き始めて、15年なので丁度人生の半分以上聞いていることになる深夜ラジオ。覚えているネタハガキ、好きだったコーナーなども振り返ることが出来たのでランクイン。
 節目を迎えてもなお、パワーダウンすることなく、むしろ『伊集院光のてれび』の制作に奮闘する裏話も聞けたりとまだまだファンとして楽しめるということを確信した一年だった。

2位 設楽統の友達探し!『バナナマンバナナムーンGOLD(2015.10.24)』
フリートークの中で、バナナマン設楽に一緒にご飯を食べに行く人がマネージャーぐらいしかいないという話題から発生したカイザー(皇帝)ことバナナマン設楽へ友達いないいじり。そんなカイザーの孤独な生活を見かねた友達探しオーディションが、下積み時代の頃からの旧知の友人であり、絶賛再プチブレイク中のスピードワゴンを迎えてが開かれた。
試験は、友達なら「一分間もつ丁度いい話」をすることが出来るということで、設楽に向かって丁度いい話を披露するというもの。そこで一分持てば合格となり、友達になるための権利を得ることが出来る。そこから、設楽と、日村とスピードワゴンという門番3人に「友達」「子分」「セフレ」「今まで通り」の判定が仰がれる。実はこの「一分持つ」というのは、ちょうど10年前の2005年に始まった、TFMで放送されていた『バナナムーンGOLD』の前身番組といっても差し支えない『火曜WANTED!』の名コーナー、「一分間もつどうでもいい話」を再生させたもので、それは長年のファンとしても嬉しかった。
 芸人枠として参加したのは、ラブレターズと、宇宙海賊ゴー☆ジャスラブレターズは、前に急に連絡したら、駆けつけてくるかということをpodcastでやった時にTBSラジオに駆けつけることが出来たから、ゴー☆ジャスは何故か連続でスペシャルウィークに呼ばれているからだ。素人枠では昔を思い出させ、芸人枠ではわちゃわちゃっとした感じでオーディションが進み、結果ラブレターズ塚本は子分、ラブレターズ溜口とゴー☆ジャスは今まで通りということで番組の放送が終了した。懐かしかったし面白かったし、設楽が翻弄されているということも久々だったのでランクイン。
2015年3月いっぱいでANN0が終了してしまい、ショックでそれまでリスナーとして大好きだった色々なラジオが全く聞けなくなってしまったというラブレターズ塚本は、ガイコツというあだ名もついた。ラブレターズとしてはオードリーのANNにもバナナムーンGOLDに出ている。また、ガイコツは設楽の子分、溜口は足で稼いだゴシップをもとにオードリー春日にハマっている。良いことだ。

1位 『爆笑問題カーボーイ(2015.11. 18)』 
今年一年、「はいこちら、ぽんぽこ商事です!」を始めとしたギャグで流行語大賞を受賞することを目指していた爆笑問題の太田。その前の週では流行語大賞のノミネート50語が発表されたものの、「ぽんぽこ商事」が入っていないことに終始落ち込んで、ノミネートされた言葉にいちゃもんをつけていた。鬱々としすぎて「流行ったものは無しにしようよ」「獲りたい人の流行語にしようよ!」と言いだしていたその週も良かったけれども、その翌週は逆に躁状態爆笑問題太田だった。
「ぽんぽこ婚」を取り上げなかったTBSのワイドショー『白熱ライブビビット』には、「ご自分の仕事をやられることで、報道ってそういうもんじゃないですか。偏っちゃいけない。ただ僕だったら、それは言うよな(取り上げる)と。」「僕は古いタイプの人間ですから、テレビのそういう仲間意識っていうのがありますから。向こうは無くて良いんです。それはちゃんとした報道してもらったほうが良いんです」「ただ、一切していないってことは(リスナーに)お伝えしておきます。」「彼らはやっぱりなんだかんだいってTBSの社員です。一流大学出て。我々のように野武士のように生きてきたわけではないですけど。」といちゃもんをつける
相方である田中には「くだらないパン屋に行列したとか。爆笑問題っていうのは結構社会派で、政治を斬る」「社会派、ブラック、そういうデビュー当時からさんざん苦労してきたあれですよね。そういうイメージっていうのはあると思います。」「田中の話題になった時に、親子四人で行列の出来るパン屋に並びました。初めてパパと呼んだのがどうのこうの。くだらねえ三流ドラマじゃねえんだから。牧歌的な話題を毎週提供してくれる田中裕二。これは一体何なのかなという気持ちは正直あります。」「ファミリー感出しやがって」「爆笑問題始まって以来の危機ですよ」と吐き出し、まさに独壇場だった。
そのあとは急遽募集をかけた「太田流行語大賞は今後どうすべきか」というお題へのリスナーからのメールを読み上げたのだけれどもこちらも最高だった。「はい、こちらぽんぽこ商事です」を続けるべきだという意見も紹介されたが、限界だと思うという意見もあり、その理由というのが「夏から秋にかけて太田さんが言うのを忘れていたり、シソンヌの『好きになっちゃう』を連呼し始めたり、太田さん自身が開き始めている様子が見受けられました。なので来年の11月まで他の言葉に浮気せず、ぽんぽこし続けるのは性格的に無理だと思います。何より僕は太田さんがその場の思いつきでやりたいギャグをやっているのが好きなのです。無理に作った流行語を無理に言っている太田さんなんて見たくないんです。太田さん、お願いです。ぽんぽこ商事というブラック企業から退職してください」や、「太田さん的には一番手応えがあったとおっしゃてましたが、それは無理やりにでも使って報告するというコーナーがあったから、そう錯覚しているだけかもしれませんよ。(略)僕は無理やり流行語を作るより、太田さんから自然に出てくれるフレーズの方が好きです。」と全く違うリスナーからのメールに同じような太田のことを思う言葉が入っていたことに、泣きそうになってしまった。
オープニングから一時間近く不安定に喋り続ける太田に、田中含めたブースは爆笑しっぱなしだった。紛うことなき、2015年のベストラジオです。

振り返ってみると、ベスト5の中の3つが奇しくも、若林、設楽、太田と普段は番組の中でもパワーバランスが上位な人が負けた時の咆哮と、いじられまくっていたという結果になったのはそれほどフリが素晴らしく効いていたということでしょうか。
年明けの記事になってしまいましたが、2016年も面白いラジオがあるといいですね。

俺だって日藝中退したかった的 深夜ラジオ新語・流行語大賞2015

どうもこんにちは、2015年聞いたラジオを数えたら400を超えていた者です。
個人的な防備禄として、今年のラジオで印象深かった言葉のランキングを作ってみました。連休暇な時にでも探して聞いてみるのもいかがでしょうか。

第5位 ダイアン西澤裕介「我がで調べろ」ダイアンのよなよな

2014年の4月から始まったダイアンの『よなよな・・・』通称「よな木」を聞き始めたのは、2015年に入ってからになる。番組を知って何となく聞いてみたら、一気にハマってしまった。ダイアンに関わりが深い芸人がフリートークやコーナーのネタに出てくる。学天即の四条やミサイルマンギャロップまでは着いていけるが、大木はんすけやグッピーこずえ、よね皮ホホ骨を当たり前のように出されるのには、訛りの強さから暗号として鹿児島県で話されていた薩隅方言を用いたという第二次世界大戦中の史実を彷彿とさせる出来事に最初は戸惑いはしたものの、深夜ラジオを聞き始めた頃の、分からないことが聞いて行くうちに分かるようになるという感覚を久々に味わうことが出来たことは楽しかった。
「よな木」を聞いていると、素晴らしいパンチラインは数々飛び出していることが分かるけれども、一番衝撃を受けた言葉が、西澤が発した「我がで調べろ」だ。関西の大学に通っていた妻が言うには「ババアしか使わない」という強めの方言のこの言葉を、普通のトーンで使う様に不意打ちでジョーへの右フックを喰らってしまって笑ってしまい、個人的に普通に使っている言葉ということでランクイン。

第4位 バナナマン設楽統「ここはお前の世界じゃないんだよ」バナナムーンGOLD
2015年は、『バナナムーンGOLD』の前進番組といっても差支えがない『WANTED!火曜日』が始まって10周年というアニバーサリーイヤーだった。
2015年11月13日放送の『バナナムーンGOLD』では、番組内での流行語大賞がオフィシャルで決まった。その中の二つ、ピーマンの肉詰めに何をかけて食べるかというトークの時に送られたリスナーの「塩です!」というメールに何故か怒りを露にした設楽の
「塩派は黙っとけ」や、バナナマン日村がポルシェに乗っていることに由来する「ポル太郎」も捨てがたいが、やはり、2014年10月31日放送で飛び出た設楽統の調子に乗っている相手への牽制への言葉「ここはお前の世界じゃないんだよ」が、2014年が初出ではあるものの、今年上半期に番組でもネタにされたためにランクイン。

第3位 アルコ&ピース平子祐希「一企画のデメリットじゃねえぜ!」(アルコ&ピースのANN0)

2015年11月13日放送の「アルコ&ピースANN0」からの言葉。この日の放送は、「M−1グランプリ」の準決勝で敗退してしまったのだけれども、特別に設けられたGyaO!ワイルドカード枠にアルコ&ピースが食い込むためには、告知をしなければいけないにも関わらず、酒井はツイッターをやっていない。その告知のためにツイッターのアカウントを作りはしたものの、出来たばっかりのアカウントには告知能力はなく注目を浴びないといけないという主旨の下で行われた企画「酒井のツイッター、真夜中の大炎上!!」が紹介された。平子主導で始まったために酒井を攻める企画かと思いきや、いつのまにか、平子にも矛先は向けられて「アルコ&ピースツイッター、真夜中の大炎上!!」へとシフトチェンジしていく。
リスナーから募集した炎上しそうなつぶやきを募集して、じゃんけんで負けたほうが実際につぶやくというもの。つぶやきの削除、企画であるということの事後説明も許されないガチ企画に、ずっと使っているアカウントでやることに不公平だと終始不満を述べる平子だった。
「最近のJ-popバンドってどれも同じに聴こえて萎えるわ。オリジナリティーって何だろね?」「制作費削減を言い訳にする制作サイド、コンプライアンスを押し付ける視聴者、どっちもどっちだな。誰かのせいにしてる時点でエンターテイメントを語る資格はねぇよ」いかにもなワードが選ばれてはつぶやかれていく。
そんななか、平子がAKB48の小嶋 陽菜へのリプライとして「差し支えなければ、差し支えなければ今使ってるボディークリームを教えてください。」とつぶやくことになった時の平子の咆哮がランクイン。
今年の3月にANN一部から首の皮一枚残る形で、ZERO枠での残留が決まって、三年目を迎えたアルコ&ピースのANN。相変わらずクレイジーな企画を放送してくれている。放送時間は30分ほど短くなりはしたものの、それもまたタイトに聞けるので満足度は変わらないところも良かった。来年もよろしくお願いします。

第2位 三四郎小宮浩信「『水曜日のダウンタウン』は災いだから」(三四郎のANN0)

売れかけていた昨年から、著しく売れかけていた2015年の三四郎。「売れかけている」から「売れた」の間に、「著しく」というクッションを挟むことについては、半年以上続いている閉店セールの様な、AKB48メンバーの卒業宣言の様な、うっすらと誤魔化されている感じがすることを差し引いても、この一年は三四郎が躍進した一年であることは間違いない。
オールナイトニッポンZEROの放送が四月から始まったことは勿論だが、特に小宮が、片親率が異常に高いという藤井健太郎率いる地獄の軍団から執拗に標的として狙われ続けた一年であったことは大きい。三四郎二人とも片親であるということに何かしらの因果関係があるのだろうか。
そんな小宮は「『早朝』をつけたら何でも面白くなる」説での「早朝リレー」、その第二弾「早朝十種」、「ゴミ屋敷の住人 意外と何がどこにあるか把握してる」説ではゴミ屋敷の住人に掴みかかられたり、大喜利の答えが自分にドッキリとして降りかかるという特番『ドッ喜利王』では、「親の仇のように遅い」タクシーに乗せられたりした。
 そんな三四郎・小宮に降りかかる仕打ちをテレビで見るだけでなく、ANN0ではそれらの裏話を聞かせてくれた。そして、気付いた。僕達は三四郎の小宮が好きなんじゃない、三四郎の小宮に降りかかる不幸が好きなんだと。
 そんな中で、三四郎・小宮が「早朝十種の十日目を振り返っているトークの時に出た『水曜日のダウンタウン』を評した言葉「『水曜日のダウンタウン』は番組ではないから。ただの災いだから。災いをもたらしてくるから」がランクイン。
三四郎・小宮は、バラエティの中ではポンコツといじられる。マセキ芸能社所属ということもあり、直属の先輩である出川哲郎狩野英孝と同じラインで語られることが多いのだけれど、明確な違いがある。それはこの二人が笑いを起こす時は、笑いを取りに行く時よりも、与えられたことに真面目に向かえば向かうほどに奇妙な磁場を引き起こして爆笑を生み出すという主観タイプに対して、小宮はかなり客観的な視点を持っている。
それは『デブッタンテ』でのハライチの澤部の、「楽屋でもいじられている小宮がいて、少しトイレのために席を立った澤部が、用を足して戻ってくると小宮のいじられ方が『きんたま臭いだろ』という極限までいったいじりになっていたことに気付いた澤部に対して、「こんなんなってまーす」と言ったというトークでも小宮の俯瞰で見る能力の高さが窺える。
来年は相田もフィーチャーされて更に売れかけるのを期待している。三四郎は、売れたと言い切るより場を掻きまわしていた方がらしいでしょ。

第1位 爆笑問題太田光「はい、こちらポンポコ商事です!」

爆笑問題の2015年は、太田が流行語大賞を受賞することに奮起した一年だった。
かねてから流行語を作りたい、流行語大賞を受賞したいと話していたことに加えて、事務所の後輩、日本エレキテル連合が「ダメよ〜ダメダメ」で受賞したことにより火が付いた太田が『爆笑問題カーボーイ』の中で「太田流行語大賞」というコーナーを立ち上げたことから始まる。
当初は太田が思いついたフレーズを日常生活で使って周りの反応を報告するという、流行語大賞を狙うにしてはあまりにゲリラ活動過ぎるコーナーだったものの、しばらくて、それらを候補とした選抜総選挙を行った結果、とても羨ましいという意味の「うらやまDガッカリくん」、がっかりした時に使う「ガッカリくん、ガッカリガッカリくん」、一年通して結局どういう時に使うのか誰も理解していなかった「はい、こちらポンポコ商事です!」が単発のコーナーへと昇格した。
中でも「はい、こちらポンポコ商事です!」は、テレビ番組でも、事あるごとに脈絡もないところで使われた。この言葉を流行らそうとする太田を見るたびに、リスナー達は勝手に共犯関係を結んでは、手を叩いて笑ったはずだ。ということで、2015年の深夜ラジオ流行語大賞は、「はい、こちらポンポコ商事です!」で決定です。
思い返せば、2015年の爆笑問題は話題が多く、ファンとしていつにも増してわくわくさせてもらった一年だった。ウーチャカこと田中が再婚したことに驚かされ、フジテレビの『ENGEIグランドスラム』『Cygames THE MANZAI』の放送のお陰で下半期は二か月に一回ほどの期間で爆笑問題の漫才、しかも錚々たるメンツの中で立派にトリを張る姿を何度も見ることが出来たことはとても嬉しかった。
そして何よりも、事件以来、「持っているものが違う」「スター性」として漫才を始めとしてネタにし続けてきた船場吉兆のささやき女将との邂逅があったことは爆笑問題史に刻まれるべき事件と言っていい。
爆報! THE フライデー』で、船場吉兆の今を追った特集が放送された時に、対面はなかったものの、直筆の手紙が爆笑問題宛てに送られた。そこには「知性あふれる軽快なトークにはいつも感心させられております。又、時折、話題の中で私事もお取り上げを頂き、大変恐縮しています。」と大人な対応で、それを見た爆笑問題の二人が「心よりお詫び申し上げます」と頭を下げて謝罪をして「心の大きな方で完敗です」と宣言するという、8年に及ぶフリにオチがついたことを見られて良かった。


以上です。

読書会やってみた。ドラマ『赤めだか』を100倍楽しむための記事(2)

前の記事の続き〜。

立川談志がどういう落語家という概要を説明した後は「業の肯定」や「現実は事実だ」などのキーワードを取り上げました。
特に立川談志が発言した中でもとりわけ有名なのが「業の肯定」です。
『赤めだか』で言うと、談春が中学生時代に上野鈴本へ落語を聴きにいったときのエピソードに登場(12頁15行目)します。

<人間は寝ちゃいけない状況でも、眠きゃ寝る。酒を飲んじゃいけないと、わかっていてもつい飲んじゃう。夏休みの宿題は計画的にやった方があとで楽だとわかていても、そうはいかない。八月末になって家族中が慌てだす。それを認めてやるのが落語だ。>

と話したあとに、出てきます。
この言葉は立川談志の著作『現代落語論其二 あなたも落語家になれる(1985)』ではこう書かれています。

<私にとって落語とは、“人間の業”を肯定しているというところにあります。“人間の業”の肯定とは、非常に抽象的ないいかたですが、具体的にいいますと、人間、本当に眠くなると、“寝ちまうものなんだ”といっているのです。分別のある大の大人が若い娘に惚れ、メロメロになることもよくあるし、飲んではいけないと解っていながら酒を飲み、“これだけはしてはいけない”ということをやってしまうものが、人間なのであります。><こういうことを、八つぁん、熊さん、横丁の隠居さんに語らせているのが、落語なのであります。>

一段登りたいお笑い好きが好んで使う「業の肯定」という言葉、明らかにこの本を読まずに使っているのであれば、そいつは自分の言葉にハクをつけたいだけだと思うのですが、それはさておき、この「肯定」というのは、あくまで、それが存在するということを認めるという意味合いだということが、引用元を読むと分ると思います。認めたうえでどうするか、ということであって、許すという意味までは含まれていない。
比較文学者の小谷野敦は、「業の肯定というのは当然だろう、否定すればそれは宗教だ」と指摘してはいたんのですが、これはちょっと、許すという意味が含まれていると捉えているからこそなので間違っているかなと思います。
 そして、この言葉は、『赤めだか』中の名シーンの一つに出てきた「現実は事実だ」にもつながっていきます。
『赤めだか』では、弟弟子の志らくに対して、嫉妬をしていた時の談志からのセリ(116頁4行目)です。

 <「己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱みを口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬と云うんです。一緒になって同意してくれる仲間がいればさらに自分は安定する。本来なら相手に並び、抜くための行動、生活を送ればそれで解決するんだ。しかし人間はなかなかそれができな。嫉妬している方が楽だからな。芸人なんぞそういう輩の固まりみたいなもんだ。だがそんなことで状況は何も変わらない。よく覚えとけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない。現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと、何故そうなったかという原因があるんだ。現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。その行動を起こせない奴を俺の基準で馬鹿と云う」>

本質を貫く名台詞であり、馬鹿に対しても道を示してくれる凄い言葉ですね。
人間とは気を抜けば、自らの業をさらけ出し、知らず識らずその深さに沈んでいくものだと思っています。僕はこれを、「人は誰しも心の中にババアと鈴木おさむがいて、それに対峙していかなければならない」とも言っています。
では、この言葉は、どこから来ているのでしょうか。
それは、談志が立川流を創設したきっかけとなる落語協会との争いが大元にあるのでしょう。落語協会とは、落語家、講談師が所属する協会です。

<談志(イエモト)は、所属している落語協会の旧態依然としたありかたに疑問を持ち続けていた。そして真打試験に自らが地震を持って送り出した弟子が落とされて激昂した。立川談志を否定されたと思った。そして落語協会を脱会する。『赤めだか(270頁11行目)』>

 自分が真打の器であると認めた弟子が、真内になれなかったことで落語協会を抜け、立川流を創設する。当時のことは知らないのですが、脱藩くらいの勢いだったのじゃないでしょうか。
立川志らく三十周年記念 第三弾 THE NICHIDAI」にゲスト出演していた高田文夫が当時のことを、「世間は生意気な談志ということで、叩かれていたけど、自分とたけし(ビートたけし)が入門したことで、一気に談志応援モードになった」と話していました。
 談志は、自分が認めた弟子が真内になれなかったことに対して、落語協会へ嫉妬をせずに(この騒動については半ば勢いだとは思いますが)、きちんと状況を打破したという体験が「現実は事実だ」につながっていっていると思います。
 こんな感じで、二つのワードを話しました。ほかに、「イリュージョン」「江戸の風」について話したのですが、こちらは「本人が死んじゃったからもうわかんない」という結果に・・・・・・。
 ほかには、談志の十八番についての話をしたりと、本当に3時間はあっという間に過ぎていました。勉強不足でもあるにも関わらず、ぱぁぱぁとしゃべり続けて申し訳ないかぎりですが、後々聞いたら楽しんでもらったようでなによりです。
恥ずかしながら、食べ物の描写が多いということとかは、指摘されて気付きました。
立川談志自身も、ドキュメントなどで、残り物を食べ物を食べるシーンが多いのですが、それは余り物を適当に焼いたり、電車の中で、適当に食べていたりするものだったりとジブリなどのように見ているとお腹が空いて食べたくなってくるようなものではないのですが、『赤めだか』でも同じでした。
それだけ、生活は困窮していたということで、食べ物にまつわる思い出が自ずと多くなったということです。
このように、『赤めだか』のいいところは、貧しかったことだけでなく、兄弟弟子の廃業や死について、さらりと書いていることです。いくらでもドラマチックに書けるところを流すように書いている、乾いているのはすごくいい。
この感じは落語をモチーフにした『タイガー&ドラゴン』を書いた宮藤官九郎は登場人物の離婚や死をさらっと描く宮藤官九郎作品にも通じるところはあります。他にも、宮藤官九郎は映画『GO』で、主人公に古今亭志ん生を聞かせたりしています。
 このあたりを湿っぽく描いているかどうかで、ドラマが良くなるか普通かの分かれ目になるのかもしれないという話をしました。というか、まだ脚本家が発表されていないという話から、クドカンもあるんじゃないかという説もでました。
 という感じでした。
 読書会、たまたまの神回の気もしますが個人的にも楽しかったです。
 ドラマを待つもよし、先に『赤めだか』を読むもよし、それから談志、談春のCDに行くも良し、「落語 初心者」で検索するもよし、各々が落語を楽しんで、落語が盛り上がるって言うのが一番いいと思います。
 それでは、笑顔でさらば!
 

読書会やってみた。ドラマ『赤めだか』を100倍楽しむための記事(1)

読書会をご存知でしょうか。大まかに言えば、一冊の本を決めて当日までに読み、それについて感想を言い合うという会です。そうすることにより、他の人の意見を聞けたり、発表することにより自分の考えがまとまったりすることなどが特徴としてあげられます。
また、感想だけでなく、一文や一節が、「過去にインタビューを受けていた時の発言」などと照らし合わせるなどもするので、ただ「面白い」というだけではない理解を得られたりすることもあるものです。実際、読書会を体験してみて、そのように感じました。    
twitter(@memushiri)で相互フォローの関係にある、みよしさん(@scd_nom)という方がいます。その方はピース又吉のファンで、『火花』の読書会をやったということを聞いていました。それで、そのことについて、タイミングが合えば参加してみたいです、という感じで話していたのですが、なんだかんだで今回の東京に行く機会に合わせてしようか、ということになりました。そうなると、題材の話になるのですが、それとは別に、みよしさんが落語について全く分からないということを話していたので、では、落語についての勉強も兼ねることができるので、「立川談春の『赤めだか』での読書会をしよう」ということになりました。
『赤めだか』という本は、立川流の落語家である立川談春立川流に入門してから、前座、二つ目、真打になるまでの青春、また師匠である立川流の家元立川談志も描かれているエッセイで、平成27年度にTBSでドラマ化(日程は未定)されることが決まっています。発売当初、ちょうど立川談志の著作を色々と読んでいた時だったのでちょうどいいと思い読んでみたら、これがとても面白かったという記憶があります。
星野源の武道館ライブ、初めて見たバナナマン単独ライブ、立川志らく師匠の30周年記念ライブにゲストとして出演した爆笑問題の長尺の漫才を連続で見て、後は東京駅の釜たけうどんを食べて帰るだけという、脳みそがドーパミンでひったひたの状態の東京最終日に読書会をしてきました。
読書会自体は初めてなのでしたが、大学時代のゼミで同じようなことをしていたので、何となくイメージできていたので、レジュメだけ作成し、「何を話そうかなー、他の人頑張ってくれるといいなー」というテンションで挑みました。とはいえ、こちらはゴリゴリのコミュニケーション能力障害。主催という立場である以上、メインで話さないといけないわけですからすごく不安だったのですが、コミュニケーション障害の特徴である、好きなことなら、他人のことなんか知ったこっちゃねえとばかりに、早口で吃音になりながらもベラベラ喋るということが功を奏して、気付けば最初から設定していた、予定していた三時間は割とすぐに過ぎ、一応、読書会としての体をなしていた気がします。もちろん、帰りの高速バスの中で、独り相撲だったんじゃないか、と後悔することしきりでしたが。
 そのことを振り返るとともに、話したことをベースにまとめておきたいと思います。あくまで私的な解釈や見たてであることは重々承知です。むしろ間違っていることを指摘してもらいたいです。俺は叩かれて伸びるタイプですから。能町みね子みたいに逆ギレしない!!ごめんなさいと謝る!ようにしている!!!!
 さて話は戻りまして、今回読書会に参加してもらったのは、僕を含めて四人でした。『火花』の読書会では、倍近くいたと聞いてます。ひとえに僕がtwitterで狂ったことばっかり呟いているから故の避けられ、また人望の無さが窺えます。今度東京に行った時は神保町のホテルを利用しようと思います。
今回のコンセプトとしては、「ドラマを100倍楽しむための前準備」というものでした。ちなみに四人の落語に関しての知識としては、二人は僕よりも見聞きしていて、もう一人(みよしさん)は全く知らないという状態でした。そのみよしさんは『赤めだか』は一気に読んでしまうくらいに面白かったと話していました。基本的に、立川流の落語家は読ませる文章を書きます。
 最初に話したのが、そもそも、立川談志は何故こんなに絶対なのか、畏怖の対象となっているのかということです。師匠と弟子という関係はそういうものだということでも説明はつくのだけれど、もう少しスタートの話をしようと思います。
 そもそも、立川流とは何だ、立川談志とは何だという前提を知ることから始めなければなりません。ここから知っている人は流して、まったく知らない人も「そういうものなんだ」と流し読みしてもらっていい説明をしていきます。
 落語家というものは徒弟制度ですから、師匠から弟子に落語を伝えていく、落語家によって同じ噺でも全然違うものになったりします。その違いは落語家の数だけあると考えてください。立川流とは、その中での立川談志を頂点とした落語家の一門のことです。
他には落語協会円楽一門会で検索してみてください。
数ある中から、立川談志を選ぶということは、その潮流の中で骨をうずめるという覚悟のもとでのわけですから、絶対の存在になるのは当然です。といってもこれは立川流に限りません。師匠が怖いという話は落語家の鉄板ネタの一つでもあります。
なので、立川談志は偉そうというよりは偉いです。落語という面から考えても偉いのですが、それは落語を聞いたり、「立川談志がいなかったら、落語という滅ぶか形骸化していた」とも言われるような評価を集めていくことでも分かってくるのですが、少なくとも、弟子にとっての立川談志は絶対なのです。
ここでドラマの話になると、談志を演じるのはビートたけしなのですが、このキャスティングは、視聴者へ無条件に立川談志は偉いというスタートに立たせるという点だけでも100点の大喜利なんですね。ドラマに没入できるかは、どれだけ談志に恐怖するかというところも鍵の一つだと思います。談春の二宮は大喜利としては、実は0点に近いんですが、はたしてそれがひっくりかえせるかも見どころだと思います。
視聴者は、ビートたけしの偉さをそのまま談志にスライドさせて、談春に感情移入する。ビートたけしに怒られたら怖いということは日本人だったら想像できるはずですから。
また、ビートたけしは、後述しますが、立川流に入門して、立川錦之助という高座名をもらっているのでお笑いの系譜的にも外していないですし、もっと言えば爆笑問題太田光は、立川談志ビートたけしに影響を受けているので、爆笑問題のファンという個人的な文脈的にも沿っています。
もっと言えば、僕が初めて立川談志という存在を知ったのは、太田光の口からであり、太田光というフィルターを通しての解釈となります。『笑う超人』というDVDはマストです。
とまあ、こんなことを話していった読書会。続きます。

バナナマンの2015年の夏の単独ライブ「LIFE is RESEARCH」感想

バナナマンの2015年の夏の単独ライブ「LIFE is RESEARCH」を見てきました。さらっと書きましたが、当選を報せるメールが来てから開演まで、不意に車に轢かれたりしないかとか、急に刺されても致命傷にならないように洋服の中に赤マルジャンプを忍ばせるなどしてみたり、隣人が飼っているタランチュラをうっかり逃がしたりしていないか確認したりして、生きることにサバイブすること必死でした。結論から言えば、一度でいいから見てみたいというものだったバナナマンの夏の単独ライブは、出来ることなら毎年の恒例にしていきたいと強く思うほどに素晴らしいものでした。
今年の年始あたりから急に仕事が増えて、やたらと残業するようになってしまっていた。残業代もフルで出るわけではない、星野源の「化物」と「ワークソング」、「地獄でなぜ悪い」をヘビーローテーションで聞きながら仕事を片付けていた。
当選しただけでもありがたいのに、二列目の真ん中という席だったので、八百万の神様がいるというこの国において、新しくサービス残業の神様を割り振られた若手の神様はいるのだなと思わされた。
主な内容は年末か年始に発売されるDVDを確認してほしいのですが、何で笑っているのか言葉に出来ないような不思議なコントばっかりで、バナナマンしか作り出せない世界の数々でした。
バナナマンを見ているという現実に食らいつくのにも必死だった。ちょっと油断すると、物凄い技術のホログラムを見ているような感覚に陥りそうだった。
かろうじて、日村さんの演技は、芸人よりはコメディアンだと言われていたけど、もうそこも通り越してカートゥーンの域に到達していたことだけは掴めていた。
色々なコントが卸される夏の単独ライブには、赤えんぴつというフォークデュオのコントがほぼ毎回登場する。そのコントは2001年の単独ライブ「激ミルク」で初登場したということなので、14年続いている。
毎年、赤えんぴつが登場して、トークをして喧嘩をして仲直りして歌を歌うというお決まりの流れがあって、常に変わり続けていくバナナマンが感じている面白いが提示される単独ライブのなかで、変わらずに出てくる赤えんぴつのコントは、一つのポイントでもある。と、そんな風に、冷静にかまえていたけれども、実際に赤えんぴつを見てみると、そのイメージは一転した。
キャラクターがクレイジーなコントではあるのだけれど、間近で見る二人の目は本当に狂っているようで少しだけゾクッとした。まさに見ない日はないほどにメディアに出ているバナナマンというポップでメジャーな人達が、蓋をしている1年分の狂気がこのコントで一気に放出させているような気がした。
凄いものを見た、という感覚は今回の単独ライブで一番だった。
俳優座劇場の収容人数は300人程度で、大きいとはいえない。むしろ今のバナナマンという存在から言えば小さすぎるとすら思っていたし、実際に少しだけ不満はあった。でも、俳優座劇場というその舞台を体感してみると、すごくちょうどよく、設楽さんがこの場所を選び続けるのが分かったような気がした。そのこだわりに一喜一憂するのもファンの一興だ。格好つけました、一憂は嫌だ。
ファンの幸せについて考える。一番、幸せなファンというのは、好きな人が場を持ち続けていることだ。好きな時に、行ける場所。場とは、やりたいことを純度が高いまま出せるとこであり、魅力が出せるところということに尽きる。バナナマン爆笑問題で言えばライブやラジオのようにその人達の魅力を100出せるような場所。その場への参加を求めて、日本全国からファンが集まる。
ぼんやりと、バナナマンの単独ライブは『Cutie funny(2013)』から二周目に入ったような気がしていた。Cutieとfunnyがバナナマンの魅力を紹介するに足りる言葉なのは偶然か意図的かは分らないけれど、ただ爆笑させるだけじゃなかったバナナマンが、より高い段階へ登り始めたようなコントを見せてくれる二周目。
登場するキャラクター達の少しだけ変わった日常のようなコントは、その時々のバナナマンが演じるのがベストなのだろう。
バナナマンはこれからも少しずつ変わりながらも、ずっと変わらない場を提供し続ける。
そこに参加するために、また今日から善行を積む日々です。