石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

ベストラジオ2020(不完全版)

 ベストラジオ2020、いつまでたっても完成しなくて、もう三月になってしまいました。自分の中でリミットを設けて、それが来たので途中ですがUPします。ランキングのご紹介だけという感じで読んでいただけたら。つっても13,000字あるにはあるんですけど。同人誌等などに載せるさいにはきちんとリライトします。2018年にUP出来なかったというのが未だに心残りだったので、何とかしてもやりたいという感じなので、お付き合いください。お恥ずかしいやら、楽しみにしてくれていた人が一人でもいたと思うと、心苦しい限りです。いや、10人はいるけどね!絶対!!!
 

 2019年から2020年にかけての年越しは、TBSラジオ カウントダウン特別番組「あるある年またぎ 〜令和に残したい108つのあるある〜」を聞いて最高に盛り上がった。夢のような放送の後、寒々とした一年になるとは夢にも思わなかったが、ラジオはやっぱり面白かった。以下、独断と偏見にまみれた2020年のラジオのランキングです。

 

第20位 『ゴールデンアワー

 今年は仕事でお昼過ぎに車に乗ることが多く、そうすると、子供の頃からの習慣で、自然とカーラジオはFMOKINAWAにチューニングを合わせる。お盆の日、お盆といっても、旧暦のお盆のうち、ナカビだったかウークイだったかは、詳しくは覚えていないけれど、その時聞いた、地元のローカル番組である『ゴールデンアワー』が、聞いていた時間込みで最高な体験だった。
 「新型コロナのせいで、お盆で親戚が集まれない、まあでも、おじぃおばぁのためだから仕方ないさぁねぇ」と滅入っているメールなどを読み上げながら、パーソナリティの西向幸三とエリナが、なんてことないローカルトークを方言交じりでしているのを、寒いくらいにエアコンを効かせている車の中で聞いていると、バッキバキにラジオが入ってきた。
 ミキトニーこと糸数美樹が番組を卒業した後に、エリナが代わりに加入、最初は、全然噛み合っていない感じだったけれども、いつのまにかスイングするようになっていた。この日以外にも、番組の放送時間に車に乗ることになると、ちょっとツイているなと思うくらいには一息つく時間であり、別に毎日追わなくてもいいくらいの面白さとの距離感もちょうど良い。
 『ハッピーアイランド』で決める領域にはまだ到達出来ていないですが、街で、首にかけたラジオから音を流しながら歩いている老人を見かけると思うのですが、あれ、未来の僕です。
  
第19位 「#8 パーソナルな話(2020.5.22)」『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』
 
 2020年の4月から、『空気階段の踊り場』の放送時間の異動になったことに伴って始まった、『真空ジェシカのラジオ父ちゃん』。真空ジェシカは、2019年に『マイナビ Laughter Night 第5回チャンピオン大会』で優勝、その特典の同名の二時間特番を経て、晴れてレギュラー番組となった『ラジオ父ちゃん』、通称「ラジ父」。放送開始から聞いて、もちろん面白かったが、放送二カ月目にして、二人のパーソナルな部分について取り上げたこの回を経たことで、もっと、真空ジェシカの可愛げを掴むことが出来た回。
 リスナーからの送られた「もっと二人のトークが聞きたい。二人の結成した話、二人の他の芸人との繋がりの話」というメールから、結成にまつわる話などを始める。
 戦争の次にリズムネタが嫌いな川北だが、当時、リズムネタをしていて評価されていたガクに対して、「リズムネタみたいのをやってて、俺、すごい嫌いなんだけど、ある程度の支持をされてたから。あ、これ俺の嫌いなやつだけど、俺の嫌いなことやってて支持されてる奴と組んだ方が良いなって思ったの」という、川北のクレバーさをうかがわせるエピソードが聞けた。
 「ギリギリ出来る熱い話」では、川北はガクの良いところを「エモくならないところ」と答え、「熱いぃのを出さない。出さないっていう。もう、みんな今さ、すぐさ、いろんなSNSでさ、なんか、もう、あつぅーくなってんじゃん。いい、いい。」と続ける。
 この、エモくならないところが良いというところにエモくなってしまうとのが、このブログのダサいところだが、それはしょうがない。
 その後も、トークもコーナーも面白く、安定して番組を楽しんでいるが、自分と同じように真空ジェシカの受け取り方が分かってきた人が増えたからか、『M-1グランプリ2020』や配信ライブなどの様々な媒体で楽しむことが出来た。2021年における真空ジェシカの躍進を期待しています。

 

第18位 『赤もみじのオールナイトニッポン0(2020.1.25)』
 アルピーANN的なノリが生まれてて面白かった。
 
第17位 「第162回 『I"s』をキミに...(2020. 5.30)」『空気階段の踊り場』

 2020年の4月より、土曜の深夜三時という時間帯へとお引っ越しした『空気階段の踊り場』だが特に大きな変化もなく、相変わらず面白い放送を続けている。鈴木もぐらが愛する恋愛漫画の金字塔、桂正和『I"s』を特集し、まだ読んでいない水川かたまりにその魅力を伝える回。
 もぐら曰く、『I"s』も読んでおらず、母の推薦図書である絵本の『いやいやえん』というしか読んでいないので偏った、こじらせた人間になってしまった水川かたまりのために、ラジオドラマを流す。今回のタイトルになった「きみに・・・」の回や、王様ゲームのエピソードなどを、もぐらが一人で男女を演じるラジオドラマは、『I"s』直撃世代にとっては最高に笑えて、懐かしくて、エモくなれるものだった。
 かたまりは最後に「今回の企画を通して思ったのはぁ、なんか、もしかして俺好きかもしれないっていう。要素要素を聞いてて」と話していたが、恐らく、この回及び『I"s』は『キングオブコント2020』の二本目の最高のコント「定時制高校の恋」に繋がっている。
 いつだって、踊り場は恋の素晴らしさを教えてくれる番組だということを改めて実感しました。

 

第16位 『鬼越トマホークのANN0(2020.5.24)』
 
 面白いことはわかりきっていた『鬼越トマホークのANN0』。鬼越トマホークの二人は、オープニングトークもそこそこに切り上げ、早々に爆笑問題をいじりだす。爆笑問題と鬼越は、坂井が太田の首を絞めて喉仏をへこませて以降、縁が深くなった。あの暴行がなければ、鬼越トマホークの二人は『爆笑問題カーボーイ』への出演は無く、それがなければ、ここまでラジオリスナーから好かれていたかは怪しいところだ。
 「太田さん、給料と言うか、小遣いもらってないんだから。嫁から。小遣い貰ってないのに、政治とか話しちゃってんだから。」「嫁に頭上がらないストレスで、芸能、政治斬って」「それストレス発散になってるだけで、ほんとはすごくちっさい人間だから。」「だってあれ、三食カシューナッツなんでしょ。」「三食カシューナッツで、あと、童貞だから。結婚してんのに童貞だから。」
関係性が無かったら、完全にヤフーコメントレベルの発言で、さらにそこから、他の芸人にもフリートークとは名ばかりの悪口を散々言っていたが、ここで書き起こすのも野暮なので、ここあたりで終わりたいと思います。
ラジオ文化を知らないという二人だったが、これまでの経験から来ているであろう、線を超え過ぎないバランス感覚から始まり、トークも込めてきた悪口の銃弾も豊富で、冒頭の爆笑問題いじりからテンションをそのままに二時間駆け抜けていった。二人の声のトーンも違うのでものすごく聞きやすく、めちゃくちゃラジオに向いていたことにも驚いた。
 ただ、二人には、根城を持たず、色々なラジオに出て、ガスを抜いて帰っていくという殺し屋稼業をこれからも続けてほしいと思うのは勝手な願いだろうか。

 

第15位 「ポケひみ回(2020.6.20)」『霜降り明星のANN0』

 ZOOMで局部を他者に見せたことが報じられた後の一発目の放送で「ポケひみ」こと「ポケットいっぱいの秘密」のコーナーを二時間ぶっ通しで行った回。「ポケットいっぱいの秘密」のイントロが始まり、コーナーが始まる。
 「川沿いに桜が多い理由は、桜の根が土手の地盤を固めるから。」という雑学から「じばんばばんばんば~ん、じばんばばんばんば~ん」と「いい湯だな」を歌い出し、「以上、デューク・エイセスでした。ええ、ドリフじゃなくて原曲の人!?」という風に、せいやが持っている情報がDJのようにどんどんつなげられていく。
ちょっとくどくなってきたなと思った頃に、 「立川談志の名前が出て、粗品が『談志師匠!?』と反応したら、せいやが『歯が痛いおじさんです』と返す」という脳が涎を垂らして喜ぶくだりが指し込まれる。ネタがバウンドしまくって、遠くまで行ったと思ったら、いつのまにか同じところに戻ってくる。
あ、これ二時間やるのか、とリスナーが怖くなり始めた頃、せいや織部金次郎のモノマネを始めたところから、さらにギアが上がる。「ちょっと一回黙ってくれ。財前直美さん。織金、ゴルフ頑張ればいいじゃない」「織金って呼んでるの財前直美さん」「財前直美さん」「あ、ごめんなさい、なんか言ったら最初から」「財前直美さん」「織金って呼んでるの」「財前直美さん」と粗品が何かしゃべると最初からやるというくだりからの、財津和夫の『サボテンの花』の替え歌を挟んで、織部金次郎が「ゴルフを舐めるな!」と激昂するくだりは最高だった。鎮座ドープネスなど知らないネタではもちろん、ハマれないが、自分が知っている、寅さんの口上に、ぬ~べ~の「南無 大慈大悲救苦救難 広大霊感 白衣観世音」が入っているという自分にしか分からないんじゃないかと思うネタが入ってくると、海馬がうねる。
 そして、いいとものグランドフィナーレの再現に入る。
後半三十分に入る頃に、漫才を繰り出したと思ったら、粗品が「もうええわ、お前。なぁ、俺らの処女作やないかい、そんなもん。長々お前」とツッコミ、せいやが「これでオーディション受かったんですわ、よしもとの。これで僕ら漫才師になりました、ピース!」で感動。処女作から、すでに粗品構造主義が見え隠れしたことに興味を持つ間もなく、続いて繰られた漫才は、「水が無くなったらどうする」という「一番やばかった時のネタ」に入っていくのは、ちょっと色々思わずにはいられなかった。
 この放送で芸能人生終わるかもしれないせいやは全てを出しきるという、『HUNTER×HUNTER』で、ピトーを倒した時のゴンみたいな、今日で爆散してもやむなしという覚悟があった。
 せいやが知っているのかは不明だが、ほぼ、『談志・円鏡歌謡合戦』であり、爆笑問題の太田とこれが出来るんじゃないかと感動してしまった。
 誰もぐうの音も出ない一手でありながら、何回も聞きなおすと、スキャンダルなどの意味が剥奪されて、ただの凄い放送になる。
例年であれば、1位でもおかしくないほどの放送だけれども、上が詰まりすぎていること、放送のきっかけとなった騒動自体は決して褒められたことではないという理由による罰符として5ランクダウンとしたため、この順位となりました。
別の放送での、「原曲キーで歌わせて」も良かった。あれは、人間だった。人間くさいという意味と、銀杏BOYZの『人間』という二つの意味での、人間。

第14位 「東ブクロの嫁決定戦」『さらば青春の光がTaダ、Baカ、Saワギ』
 現在、胸やけしてリスナー休止中ですが、嫁決定戦は激アツな展開でした。

 

第13位 「平子家のツイスター」『アルコ&ピース D.C.GAREGE』
 ステイホーム期間で平子家で行われたツイスター。そこから、平子っちの奥様の学生時代のサークルの話になり、キムタク意識した奴が出てくる展開まで発生したのはたまらなかった。
なぜかハライチ澤部宅でも、ツイスターすけべが起こるという偶然もありました。いや、必然か。

 

第12位 「IAIBOY(2020.8.19)」『アルコ&ピース D.C.GAREGE』
 たまに、聞いているラジオが貯まってくると、番組を絞ろうかなと思ったりするけれども、この回みたいに、誰も話題にしていないような、自分にしか刺さっていないような気にさせる平場の放送があると、どんなに滞っても、聞くのやめたくねえな、とさせる放送が、一年に一回ある。2020年は『アルコ&ピース D.C.GAREGE』だった。
オープニングコーナーの「今日のゴシップ」での「アメリカ人、ハーレーでエリア51に突入し、宇宙人の存在を確認するイベントにSNSで募集を募ったところ、20万人が参加表明」というメールから乗るならどんなバイクかという話になり、続く「現役僧侶Youtuber寿源。瑛人の『香水』をお経風に読む動画が、一週間で800万再生を記録」というメールでは、お経風に『香水』を酒井が歌い、平子が寿源の解説を平子る。それから、オープニングトークで、うしろシティ阿諏訪の結婚の話題から、阿諏訪の結婚式を妄想し、勝手に二人でムカついて笑いあう。
 その余興で、平子が居合い切りを披露するとしたらとトークは転がる。
「受けると思うよ。オゴソカァ・・・・・・」「琴みたいなさぁ、音楽、BGM流して、緊迫感あるやつ。デンデンデン、デンデンデンデンデンデンデン・・・・・・、すぅーっ、あーーーーーーい!!!ぷっしゅー。ウワァ、オゴソカァ。」と平子がイメージする。
ただ阿諏訪の結婚式は通過点でしかないという。
 「阿諏訪の結婚式を経由して、ついに酒井の結婚式、披露宴で俺の居合いは完成する。」と話すと、「で、息子の結婚式で突き抜けるの?」と聞くと、「斬らぬという境地!」「無刀」と平子は返す。
 「畳は立てるけど、無刀でお辞儀して、ただその場をすーってただ去るだけ。」
そこからさらに、流れ星の瀧上がTAKIUEに改名した話から、酒井が「IAIBOY」に改名したらどうかという話になる。
 なぜか居合いをするのは平子なのに、酒井が「IAIBOY」に改名しなよという。
「平子さんが居合いをやる人。俺はやらない人。」「やらないけど、IAIBOY」「何で?IAIBOY、平子さんじゃん。」「俺は行かないよ、俺は日本で活動するけど。」「じゃ、IAIBOYSではあるんですか?」「いや、全然違う。俺はアルコ&ピース平子祐希、お前だけIAIBOY。アルコ&ピースのIAIBOYです。俺、平子祐希です。」「居合いをやってるじゃないですか」「実際にやるのは俺」「IAIBOYは何してんの」「いや、それは芸名。」「だからその、平子さんが活動してる間は何してんの。」「いや、何もしてない。居合いは居合いだから」「さぁ、それではご覧くださいみたいなこと言うの」「も、俺やらしたくないなー。俺、居合いはちゃんとやりたいから。芸名として、単純に。別に芸人の活動として、芸名がIAIBOYなだけ。」「何それ!」「いや、それは自分で考えてくれよ」
 このやりとりがやたらと、おかしみに溢れていた。
 フリートークゾーンでは、酒井が一人でラーメンを食べたというミニマムな話を挟み、最終的に、また居合い切りに戻る。
 一時間フルで、意味が全くなく、だからこそ、幸せぇ~なラジオ体験でした。

 

第11位 「パンサー向井のゆず語り(2020.5.26)」『ACTION』
 TBSラジオで放送されていた『ACTION』の「GUEST ACTION」というコーナーに、パンサー向井が出演し、アーティストのゆずについて語った回。パーソナリティの尾崎世界観も、ゆずが大好きということもあって、トークもかなり盛り上がった放送となっていた。
 向井が選曲し、最初に流れたのが「方程式2」。向井はこの曲について、「この方程式2も、まさにふられた男が、こう、多分、家で電話してて、ふられて、うわーっと思って、ちょっと耐えられなくなって、外にふらっと夜の街を歩いてるって歌なんですけど、なんかこう、やることなすこと意味が無いように思えてきたとか、一体何やってんだろうと急に空しくなってとか、なんか、そんな夜ってめっちゃあるじゃないですか。で、なんか、この曲調で、そんな暗い歌じゃない感じ、で、これを歌ってくれると、なんか、うわっ、自分一番不幸だなって思う夜に、これ聞くとすげー助けられるんですよ。」「めちゃくちゃ自分が不幸な時って、誰かにこの不幸な様子、知っててほしいって気持ち無いすか。その時にこの歌が、俺もその夜知ってるよっていう寄り添い方をしてくれてたような気がして、その夜に、ぜったい、この歌聞いてました」と語る。
まさに、自分もずっとそういう聞き方をしていた。世界で一番好きなこの歌は、本来であれば、初夏の平日昼間にラジオでかかるような歌じゃない。肌寒くなって、パーカーを着るようになった季節、何もしたくないけれど、何かしていないと不安やその日あった嫌なことに押しつぶされそうになるからという理由だけで、夜中にコンビニに行く道中でイヤホンで聞くような曲だ。何百回も聞いたイントロが流れた瞬間、ぶわっと新たな感動が押し寄せた。この向井の語りで、自分がこの曲に助けられたいくつもの孤独な夜たちは、実は孤独じゃなかったということが十年、二十年の時を経て知ることが出来た。「この先誰かもしかしたら、向井と同じ夜に、別々の理由で聞いていたかもしれない。
 向井は、続いて「なにもない」という歌を紹介、思い入れを語っている中で感極まって少し泣き、それに釣られて尾崎も泣いてしまうという一幕もあった。思わず、向井は「青春のねぇ、全てなんすよねぇーっ」と叫ぶ。最後は「嗚呼、青春の日々」を紹介し、幼稚園からの幼馴染であり元相方とのエピソードを話す。元相方とは、友情とビジネスの兼ね合いが上手くいかず、数年して結局解散、それからしばらくしてその元相方と久しぶりに会って、一緒にゆずのライブに行き、ゆずが弾き語りで歌ったこの曲を聞きながら、必死で涙をこらえていたというトークも良かった。
自分と生まれ年が同じな向井が選んだこの三曲はあまりにもガチすぎたし、学年が一緒の尾崎の「踏切」も最高なチョイスだった。何より、「方程式2」という、20年以上、ポケットに入れっぱなしでくしゃくしゃになっている、でも大事な曲を、公共の電波で流してくれた向井には感謝しかない。
 特に2020年の向井は、あちこちオードリーの配信『祝!あちこちオードリー開店1周年パーティー~春日の店、今夜は完全予約制ですよ!~』での大立ち回りと、『有吉の壁』での数々の奮闘が忘れられず、今さらながら、その泥臭さに気付かされた。今年の私的なMVP芸人の一人だ。

 

第10位 「野田とアルピー、時々、村上(2020.9.22)」『マヂカルラブリーのANN0』

 『M-1グランプリ2020』で優勝したことで、漫才のイデアを拡張したコンビ、マヂカルラブリーが担当したANN0の二回目。冒頭から、野田が魔法のiらんどの話をするなど、昔話が飛び出る土壌が準備されていたが、野田が番組の中盤くらいから、アルコ&ピースの話を始める。
 野田が「当時、役満ってコンビ組んでて、解散してピンでしばらくやってたのね」と振り返る。「同時に、あのぉ、セクシーチョコレート。平子さん。セクシーチョコレート解散したと。まじかと。インディーズ界、騒然としましたよ。100パー売れるとされてたのに、まさかの解散。どうするんだと。そして、ホトトギス。酒井さんが組んでたトリオ。天才と言われてました。酒井さんって天才なんすよ。」と野田が言うと、村上が「酒井さんが天才と言われてたんですか」と訝しむが、野田は「全芸人が認める天才」と断言する。
 村上は納得していない様子が満々で、「みんなが分かる感じでいうと、誰くらい天才ってことになるの」と問うも、野田はまっすぐ「ラーメンズさんぐらい」と答える。
実は、野田は、もともと平子と酒井のどちらかと組みたいと思っていたなかで、どちらかと言えば年齢が近い酒井かなと思い声をかけるも断られる。そんな中、平子と酒井がコンビを結成。「インディーズ界が揺れましたよ、あの瞬間。まじで。twlが揺れたんすよ。中野twlが。靴履いてはいけない。天才と天才が組んだぞ、どうなっちまうんだ!」と野田は当時の興奮そのままに語っていた。
 続けて、野田はもう一つの酒井との因縁を語る。
「酒井さんが、過去にロリィタ族と付き合ってたんですね。で、ロリィタ族と付き合う前、まだ僕も二十歳くらいかなぁ。で、ロリィタ族と、あのぅ、僕はですね、同い年なんですね。で、僕15からお笑いやってるんで、同世代がいなかったんです、ずっと。それで、初めて、同世代の芸人が現れたんで。女性で。話しかけたいなと思って、チラチラチラチラ見てたんですね。中野twlの楽屋で。ロリィタ族側から、俺の方来てね、『ごめんなさい、私、年上の人が好きなんです』。俺、ロリィタ族に振られたの。その後に、付き合いだしたの。俺を振って酒井さんと付き合う、俺を振って平子さんとコンビを組む。酒井さんとの因縁の人生」
 そんな話を聞いたリスナーからの「すみません、野田さんが天才って言っている酒井さんって本当にアルピー酒井で、合ってますよね。あの、ラジオで暴れるのに、バラエティでは置物になっているっていじりされても、え、ちょちょ待ってくださいよ~だけで三年くらいテレビを凌いでいるあの酒井さんですよね。普通に嘘吐いてませんか」という、リアクションメールが届く。
 野田の思い出トークに、ちょいちょい登場していたモダンタイムスが、四か月後に伝説となる配信ライブ『マヂカルラブリーno寄席』への布石となっていること含めて、エモ面白い話になっていた。
 野田から具体的な天才エピソードが出てこないこと、その一か月前に、IAIBOYの話をアルコ&ピースがしていたこと含めて、全てが愛おしい。

 

第9位 「チャンサカ、喪主デビュー(2020.2.19)」『アルコ&ピース D.C.GAREGE』
 アルコ&ピースの酒井の祖母が亡くなり、その喪主を務めたというセンシティブな話題にも関わらず、酒井がからっとしたトークと平子の絶妙に邪魔しない相槌によって、笑えるトークに仕上がっていた。両親が共働きだったためにおばあちゃんっ子だったこともあり、幼少期に目立ちたい一心でおばあちゃんに側転をさせた思い出話から始まった酒井のトークは、おばあちゃん愛に溢れていた。
酒井を喪主を務めることになった経緯は酒井が直系だから。父が亡くなり、母を始めその他の家族は嫁いできたり、姉は嫁いでいったりということで、「ピュアな酒井は私だけ。直系!吉村家直系杉田家みたいなもん。家系ラーメン。」と、絶妙な例えツッコミを織り交ぜる。 
 極めつけは、最後の告別式の日、「棺の中に花いっぱい入れて、手紙をみんなが書いてきてくれて。で、俺もでっかい画用紙に『ありがとう』って書いて、酒井健太って書いて、折って、誰にも見られないように、恥ずかしいから入れて。色んな手紙いっぱいあって。で、もう棺閉まって、おばあちゃん、これで最後になりますって。まじで俺ももうぼろぼろ泣いて、もう皆が泣いてて、なかで、誰が書いたか分かんない、子供の字の手紙が入ってたの。ぼろんぼろん泣いて、最後閉まるってところで、その手紙がぱっと目に入ったの。『天国に行ってもガンバ!』って、いや、おばあちゃん、ワタクシ立いくわけじゃねえから!」で落としたところで、大笑いした。
おばあちゃん、おばあちゃんの健太は、こんな話題でも笑いを取れる立派な芸人のチャンサカになりましたよ。どうにか、この良さがもっとテレビで出せるように見守ってあげてください。

 

 第8位 「ダブルチーズバーガー論争(2020.1.31)」『ハライチのターン!』
  『ハライチのターン!』におけるオートマ・マニュアル論争に続く、ダブルチーズバーガー論争が生まれた回。マクドナルドのニュースを紹介したところから、何が一番好きなメニューかというトークになり、澤部が、てりやきマックバーガーから、フィレオフィッシュを通り、「今はもうダブルチーズバーガーですね」と答えると、即座に、岩井は「意味分かんない」と否定する。
 「意味分かんない。頭おかしいんじゃない。どうかしてるよ、お前。ダブルチーズバーガー、って何。チーズバーガーが二段になってるやつ?バカなんじゃないの」「チーズバーガー二段重ねしてるだけじゃん」と岩井は大笑いする。
 翌週(2020.2.7)には、リスナーからのメールが届く。
「チーズバーガー二個と、ダブルチーズバーガーの違いを調べてみました。まず、値段ですが、チーズバーガーは一個140円、ダブルチーズバーガーは一個340円。チーズバーガーを二個買ったほうが60円お得です」
このチーズバーガーを二個買った方がお得だということが発覚した瞬間、腹が爆発した。

 

第7位 「日村スイカチャレンジ(2020.5.9)」『バナナマンバナナムーンGOLD
 スイカが食べられない日村が、その前の週に、日村の「スイカは色々考えたらもしかしたらもういけんのかな」という発言により突如始まった企画「スイカチャレンジ」。
 レベル1のスイカシャーベットから始まるも、日村はもそもそと食べながら「まっじぃ。めちゃくちゃ果肉入ってる、これ。無理です無理です。めちゃくちゃ食えない。もろスイカ。これ、レベル1ですか」と、最悪な反応を見せる。
 レベル1でこの失態だったので、レベル2のスイカジュースも、日村は飲み干すことが出来なかったし、レベル3の「スイカのサイダー漬け」もギリギリ食べることが出来ず、その他の「スイカのコンデンスミルクかけ」などとレベルを上げて挑戦する。
 チャレンジの中で、間抜けなBGM、「スイカは色々考えたらもしかしたらもういけんのかな」という発言が何度も放送されるところがたまらなく面白かった。
 結局、日村は全然、スイカを克服できていない、ただのカッコつけの発言だったということが発覚して終わった。
 2020年の上半期という日本が落ち込み始めた中、『バナナムーンGOLD』は様々な企画を放送していた。そんな、アクリル板があることすら感じさせないようなバカバカしいドタバタとした深夜のノリ、でも、そんなに特別な感じもない放送に、『バナナムーンGOLD』を聞いている間だけは、陰鬱とした気持ちを忘れることが出来た。
深夜の馬鹿力』での伊集院光トークのように、「滅入ってる」「暇」など良くない感情を吐露してくれることで自分もそうだと思うというのも、もちろんそれはそれで救いになるが、『バナナムーンGOLD』の毎週、イベントを準備し、そのおかげでコロナ禍における憂鬱さを忘れさせてくれたのは、本当にありがたかった。
日村の、ベランダにプールを買ったということも覚えておきたい。楽しいことがないなら、出来る限りで楽しいことをやるというこのバナナマンのノリは、ベランダプール理論と名付けたい。


第6位 「銀杏BOYZ峯田ゲスト回(2020.10.24)」『空気階段の踊り場』
 もぐらの原点であるダウンタウンとの仕事である『ダウンタウンDX』の収録を終えた日に、同じくもぐらの初期衝動である銀杏BOYZ峯田和伸がゲスト出演した、「もぐらの祭日」みたいな回。ダウンタウンとの共演トークもそこそこに、同じくダウンタウンを原点とする銀杏BOYZの峯田が登場。ブースに入った峯田ともぐらは、かたまりを間に挟んでしか会話しようとしなかったり、会話もぶった切るようにもぐらが峯田にタバコをいつ変えたのかという質問をしたりと、二人が距離感を掴めていない感じがこそばゆい。峯田が『キングオブコント2020』での空気階段に「お礼言いたいくらいですよ。」と話し、二本目のネタに対しては「教室が見えたっていうか、あれはなんか、汗かいちゃったなー、見てて。よかったですねぇ。」と褒め、「峯田ともぐらの合わせまショー」という、質問に対して二人で合わせるという笑っちゃうくらい、ぬるーい企画も、ぬるいからこそ、峯田ともぐらの関係性が映えていた。ラジオクラウドで聞ける放送されなかった部分の部室感もたまらなかった。
 ひとしきりふざけた後、峯田はこんな話をして帰っていった。
 「大学ん時なんですよ、初めてギターで曲作ったの。千葉市若葉区セブンイレブンのね、裏にある駐車場でね、ロックの神様にぼく会ったんですよ。これね、こういう小説があるっていう感じで聞いてください。僕の体験というか。こういう小説があったって話。で、そのロックの神様と会ったね、18歳の少年がいてね、でね、その、『ラブソングを書きたいんだけど』って言ったらね、そのロックの神様ね、『誰も書いてない、とんでもない極上のラブソングを、じゃあ、お前に捧げる』って言ってくれたんですけど、『そのかわり、お前は、一生恋愛出来ない、それでも良いか』って、俺は、その少年は迷うんですけどね、ラブソングを選ぶんですよ。で、そのまんまね、なんか上手いこといかないまんまね、リアルではね、でもね、ラブソングをね、何曲かね、書けるようになってきたっていう男がいてね、そいつがね、どうやらね、あの、なんとか六年ぶりに、うん、っていう小説があるみたいですよ」
 新型コロナが収束しても峯田ともぐらが永遠に、密にならない絶妙な距離感であり続けますように。新型コロナが収束して、踊り場リスナーのみんなで、高円寺の山形料理屋「まら」に行けますように。
 
 第5位「岡村隆史結婚報告回 (2020.10.23)」『ナインティナインのオールナイトニッポン

社会福祉士の倫理綱領」の原理のⅠ(人間の尊厳)に「社会福祉士は、すべての人々を、出自、人種、民族、国籍、性別、性自認性的指向、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況などの違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重する。」とあるとおり、いかなる理由であっても新しいスタートを切った『ナインティナインのANN』を尊重しなければならないが、そんなことを気負わずとも、「ナイナイのANN」は面白い番組だ。岡村の舌禍事件以降から聞き始めたベビーリスナーだが、桑田ヤベスケ、鼻王などの矢部いじりもたまらないが、何より、ナイナイの絶妙な距離感がたまらない。復活した当初は30年以上コンビを組んでいるとは思えないほどに高校生カップルのようだったが、数回で丁々発止のやりとりとなっていった。
 そんななか、「岡村が結婚」。番組開始40分、矢部の初体験という、ニュースの後ではどーでも良い企画を、あっさりと結婚発表。
 aikoと三人で歌った「ボーイフレンド」は、最高が過ぎました。
  
第4位 「ジャニオタ結婚SP(2020.6.20)」『バナナマンのバナナムーンGOLD』
 バナナムーンGOLDのADのジャニオタが、一粒万倍日と天赦日が重なった日に結婚したことを報告、みんなでお祝いした回。お相手は、なんと、月曜JUNKの『伊集院光 深夜の馬鹿力』の金子D。
 二人の直属の上司である宮嵜Pをびっくりさせた以外は、斜めに構えることもなく、ただただ、二人の結婚をストレートにお祝いしていて、聴いていてずっと幸せな放送だった。放送中に二人が婚姻届を出しに行っている間には、二人を泣かせるスピーチを考える。替え歌のコーナー「ヒムペキ兄さん」では、ジャニオタからのリクエストだったというサプライズも飛び出す。

 最後は、日村から二人へお祝いのメッセージを送る。 
 笑いと幸せがいっぱい詰まった最高の放送でした。

 

第3位 「JUNKアンタッチャブルのシカゴマンゴ 最終回スペシャル(2020.5.25)」『JUNKアンタッチャブルのシカゴマンゴ』

 

 記憶というのは不思議なもので、「シカマンが帰ってきた!」と泣きそうになるくらいに懐かしくなったのは、ラジオを振り返る時に出てきた数々の懐かしいワードではなく、サウンドステッカーというCMに入る前の音楽だった。それらを聞いた瞬間、一気に、懐かしいという感情が押し寄せてきた。もともと、アンタッチャブルの休止に衝撃を受けすぎて、記憶に蓋をしまくっていたということもあるが、音楽の力は偉大だなと思ってしまった。やっと過去のシカマンを聞けるようになったのも嬉しい。
 BOOMERが第七世代のネタを再現しようとして失敗するというネタメールは最高でした。
 あとは、アンタッチャブルを生で見るだけです。


第2位 「伊集院光ゲスト回(2020.9.8)」『爆笑問題カーボーイ

 爆笑問題の田中が欠席になることになって、花束の様なゲストが数多く助っ人を務めてくれたなかでの一番のゲスト、伊集院光。シャレとマジを行き来しながら、ぼこぼこに殴り合う放送は凄まじく面白く、そんな中で、お互いに「あんた」呼びをするのが何とも艶っぽい
 ラジフェスに伊集院が出なかった理由などは、めちゃくちゃ理に適っていてさすがだった。

 

第1位 「岩井の神田伯山ゲストの『爆笑問題カーボーイ』見学(2020.3.2)」『ハライチのターン!』
 ハライチの岩井が、神田伯山がゲスト出演した爆笑問題のラジオ『爆笑問題カーボーイ(2020.2.18)』に見学に行った裏話をトークした回が2020年のベストラジオです。
岩井が、爆笑問題と伯山との番組内でのバチバチなやり合いを振り返りながら、爆笑問題への思いと愛や、伯山への羨望を吐露しながらも、笑い話になっていたこの十数分のトークは、相方である澤部の相槌も含めて極上な時間で、聞いていて、たまらなく最高で幸せな気持ちになった。
「厄介そうなゲストというか、あのー、呼んだ時の爆笑問題さんの立ち回りを、俺はすっごい見たいからさ」
岩井は番組の見学に駆けつけた理由をそう話す。
放送中の三人を、真剣で斬りかかる伯山、それに対して模造刀で、かつ片手で捌く太田、伯山の頭に銃口を向けている田中に例え、振り返る。その中で、「でも、太田さんが模造刀を両手で構えるようなシーンもあったよーな気がしたっ。握って、でもそれは太田さんが攻められているというよりは、伯山先生が、こー、言ったことを、あのぅ、俺だけは笑いに変えてやるんだという、この本気に、こうね、これやばいな、やってやんなきゃという時に、くっと本気になった感じに、そういうのが見えた。」からの、「俺らは、両手を使わせたことはねぇなぁ」と思ったことを、少しだけ悔しさをこぼす岩井は新鮮だった。
話は少し遡り、『ENGEIグランドスラム』にハライチが、神田松之丞、爆笑問題らと出演した時の裏話を始める。岩井は、神田松之丞がやっている講談を廊下のモニターで見ている太田を見かける。
「いや、ちょっと、どんな反応すんのかなって見たくてぇ。隣にぃ、ビタづけして、見てたの、一緒に。そしたらすっげぇ真剣な顔しててさ、うん、太田さんにさ、いつも太田さんに挨拶したら、おお!とか、帰りも挨拶したら、またなー!とかすごい元気よく挨拶してくれるじゃん。うん、そこで太田さんと俺と見てて、あのー本当に芸さ、ネタ終って、でー、帰る芸人がさ、横通った時に、お疲れさまでしたーって太田さんにね、挨拶したら、そしたらさ、モニター、こう見ながら太田さんが、手だけこう上げて、そっち見ずに、おおとも言わずに、はいっみたいな感じで、集中してんの、めちゃくちゃ。それ見た時に、うわ、神田松之丞さんってすごいんだって俺は思ったんだよね」と岩井は話す。
 そんな楽屋裏での一幕を切り取ったシーンの描き方こそが、まさに伯山の講談のようだった。
爆笑問題が天下を取って久しいが、爆笑問題への憧れを公言する芸人はほとんどいなかったが、岩井はそんな時流に逆らうかの如く、ずっと爆笑問題への愛を惜しみなく話してきてくれていた。


以上です、今年はランキング入りしそうなラジオがあれば、ちゃんと速やかに書いて残しておきます。総合優勝はもちろん、爆笑問題カーボーイです。
ワーストラジオも多かったですね。笑えないやつは岡村ANNの舌禍の回で、スイングしなかった放送でいえば霜降りANN0に三時のヒロインが来た回などなどありましたね。
伊集院さんを呼んだ不毛な議論は聞いていないです