石をつかんで潜め(Nip the Buds)

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(宇宙最速版)M-1グランプリ2021 初見感想

 『M-1グランプリ2021』が無事、錦鯉の優勝で幕を閉じました。

 初出場が半分を占める、ランジャタイと真空ジェシカが入っている時点で波乱が起きることなどが容易に想像できた大会だった。発表されたファイナリストの面々が、あまりに、漫才をさらに革新の方向に進めるようなものであったということでお笑いファンは滾ったということもあるが、それは、昨年の未知のパンデミックであるコロナ禍に置いて大成功をおさめた『M-1グランプリ2020』からくる信頼のためでもあっただろう。

 カオスだ混沌だと大会前から言われていましたが、蓋を開けてみれば、序盤こそ荒れそうだったものの、漫才師な大会だった。

 三連単は、オズワルド、ランジャタイ、錦鯉にしました。今年はテキストの笑いが来るという読み、ランジャタイ国崎のコラムを読んで感動したという事実を切り捨て、DJKOOの予想を反映、真空ジェシカなどへの情を排して予想してみました。正直、それでも5分の一くらいの可能性あったと思ったんですが、やっぱり外してしまいました。

  興奮冷めやらないまま、記憶だけを頼りに、バッとこの記事を書いています。記憶ミスがあってもご愛嬌。

 それではスタート!

 

ファーストラウンド

 

1.モグライダー

 シンプルな反復の構成なんだけど、「さそり座の女」のイントロが終わるまでに、星座と性別を当てにいくも外してしまうというお題がそれに耐えうるし、ギャンブル性もあるという射倖心を煽るネタ。で、何より、ともしげのフルスイングな馬鹿が、それは錦鯉もそうだけれど、アラフォーから映える。この年齢で馬鹿なら、安心して笑えるというのがあるのかも知れません。

 挨拶でロスしてしまうというのもものすごく馬鹿で良い。

 

2.ランジャタイ

 風の強い日に外に出たら風に飛ばされた猫が顔に引っかかって、その猫が耳から体に入っていくという、コロコロコミックへの持ち込み作品の中のボツを煮込んで作ったような作品。

 これ香盤がもっと後だったら、腹ちぎれていたでしょうね。 

 元々点数のバラツキは予想していましたが、そうなっただけでランジャタイはもうとりあえず顔見せは良いでしょう。二本目も見たかったではありますが。

 

3.ゆにばーす

 凱旋!!!

 登場するなり、パンパパパン!からの「悩みあんだよ」っていう、有名芸人だからこそ出来てかつ、そのクオリティも高い最高のツカミ。

 ゆにばーすが凱旋するってかなり怖かったんですけど、やっぱり構成と技が見事でした。ディベートという形式で、会話も出来ていやぁ見事で気持ちいい。ただ、ちょっと踏み込んでくる笑いが欲しかった。

 ゆにばーす川瀬が言っていた初めての風俗って、東京都台東区上野公園内、不忍池の畔にある台東区立の下町風俗資料館のことらしいです。

 

 

4.敗者復活(ハライチ)

 ハライチのターン!!

 ラストイヤーで、敗者復活でのファイナリストになったのはお見事ですね。最初は、澤部メインのネタと思わせて、あれ?ちょっと笑いが少ない?って思い始めた時に、岩井が癇癪を起こすという本当の狙いに入っていく。そこからの仕掛けは単純ではあるけれど、やっぱり岩井が動きまくって、今まで見せていないものを見せるとやっぱり笑ってしまう。

 「M-1は落語で言うと、古典に新作で対抗している」と岩井はやや腐っていた時期があったのを考えると、ラストイヤーで岩井が爆発して地団駄を踏むようなネタをかけたのは、M-1への最後っ屁みたいでカッコいいね。

 ラストの岩井の一言、本人はボケのつもりで言い始めたけれど、口から出た瞬間、本音になったようで、まさにM-1に見出されたハライチのM-1参戦を締めくくる見事なものでした。お見事でした!

 

5.真空ジェシカ

 学生お笑いで名を馳せて、エリートと言われながら、イマイチ行ききれてなかったけれど真空ジェシカ。もう少しファイナリストになるのは後だと思っていたけれど、まさか今年来るとは!

 その後も、吉住のネタが仕上がっているという最悪な情報が入ってきたときはどうしようかと思いましたが、大健闘でした、冒頭は、転校生のシステムで、ボケを重ねて、中盤以降は、今年かけまくっていた、探検家のネタと同じように場面が展開し、違うタイプのボケを入れてくる。このガッチャンコは功を奏していました。ボケの強度が映えるし生きる構成になっていたと思います。

 順番も良かった。

 真空ジェシカが得意な2ちゃんねる(今は5ちゃんねる)的な笑いである、縦読みにしたら「助けて」となるというような笑いを、「ヘルプ」の手信号というくだ理にして、M-1という舞台でウケる仕様にしてて、底知れない努力が窺えました。

 敗退のシーンでで、キングオブコントの待機の仕方やったら、真空ジェシカはもうM-1に忘れ物ないだろ

 

6.オズワルド

 普通の話から入っていって、徐々に二人で共有する常識がずれていき、「いい感じのイリュージョンに突入するようなネタがやっとオズワルドのトーンにはまっていて、これだな、これだな、感がすごかった。

 

 

7.ロングコートダディ

 ロングコートダディM-1ではずっといろんなシステムを変えてきて、コント師M-1に上がる道を模索していたという印象があるんですけど、今年はそれがハマったのでしょう。ロコディの二人のニンにあった、賞レースしすぎていないファニーな漫才。

 その割には点数が伸びたのは意外とコント漫才がすっと入ってきたのもでかそう。

 ワニに生まれ変わりたいところから死んで、死後の世界でのやり取りを描く。生まれ変わりがランダムでありながらしりとりだということに気がついてからも笑いがまた変わって、いい感じに尻上がりでいった。何より、シンプルに、兎が肉うどんとなり座れる顔が面白い。

 わにを待ちすぎて、わにのことを考えすぎてるから、ラコステで一旦間違えるっていう、ないないの中でのあるあるが秀逸でリアルなのを一個入れてくるのが、ロコディはマジで上手すぎるんだよな。

 あと、「肉うどん」でしりとりが終わってるから、最後だけ「お前」呼びになる可能性あるなどの余白もすごい。

 

8.錦鯉

 錦鯉の進化って二種類あったと思うんですけど、一つ目はもっと会話をするのと、もう一つは昨年の方向をさらに押し進める。ネタを見ていたら、そっちに行ったのね!となりました。

 馬鹿に老化も加わっててのつけらさらに強くなっていました。

 個人的にはリズムが短調で、笑いが散発的になってしまって、ちょっと乗り切れなかったんですけど、なんとかファイナリストに食い込みました。

 

 

9.インディアンス

  もうなんか、良くも悪くも、この中で、賞レースということを忘れてしまいそうになる漫才で、その強さって凄いですよね。

 

 

10.もも

 なるほど、これが噂のももか!

 ルッキズムとして叩かれそうと想定されがちだけど、絶妙に、褒めも入っているからセーフ!!

 ただまあ、ネタとしては粗々ではあって、もっと、結局はガワの話で終わっているので、もっとストーリーが展開していくような変化が欲しかったなあ。テンポもまだ詰めているだけで、まだまだ気持ちいいとは言えない。

 これからの進化が楽しみではあります。

 

 

ファイナルラウンド

1.インディアンス

 楽しんで漫才をしていたんじゃないでしょうか!!

 

 

2.錦鯉

 タイタンライブで見たネタ。

 最初からギアフルスロットルで、まさのりさんの「馬鹿」が領域展開されていました。

「森の中へ逃げ込んだ」「じゃあ良いじゃねえか」でワンテンポあって笑いが起きるって、客が全員、まさのりさんの馬鹿に引っ張られてるってことでめちゃくちゃ良いですね。

 フルスロットルで始まったからこそ、後半の盛り上がりとか心配になるんですけど、そんなこともなく、走り抜け、しっとりと終わるという絶妙な構成でした。

 これまでの錦鯉にない一面も見せてきた印象を受けました。

 

 

3.オズワルド

 いやー、何かでこのネタ見たことあるはずですが、その時は面白かったんですけど、今日は何かに飲まれていた気がします。

 スタートダッシュが失敗したのか、ネタがそもそもファイナルラウンド向けではなかったのか。練られていないネタではないはずなんですけど。

 

 優勝 錦鯉

 ファイナルには食い込むかなと思いはしたものの、ランジャタイやモグライダーに飲まれるかなと思ったんですけど、お見それしました。

 お見事です。おめでとうございます。

 ピュアが勝つ時代だ!ピュア勝つだ!!!

 

 明日は休みですので今日はもうしばらく感想を漁って、寝ます。

 家訓である、「賞レースの感想は5営業日必要」に従って、例年の構造主義的な感想は追ってお送りします。