石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

最悪な遠征

 『三遊亭圓楽伊集院光 二人会』の夜の部を見てきました。
 二人会が開かれることが決定してからの『深夜の馬鹿力』では、流しの着物屋に着物を仕立ててもらう話から落語の練習をしている話までといった二人会にまつわるトークに加えて落語家時代の思い出話をする時間が増えていき、それらを聞けているだけでも幸せだった。
 伊集院が圓楽への思いや落語について話すのを聞いている間、リスナーは少なからず伊集院と自分、自分とラジオと、その関係性を投影させていたことだろう。だから幸せだったのだ。その幸せは「フワ事変」の回でピークに達する。
 チケットの発売日が決まると、取れても取れなくても仕事になんないだろうということで休みを取った。新型コロナの影響の中で、会自体が開かれるのかも分からないし、そもそも行けるのかも不明な中ではあったが、取れたら腹括って行けるように頑張ろうという気持ちでチャレンジすることにした。
 その日はいつも通り起床、子供の世話をして、9時40分ごろからパソコンを起動して、販売サイトにログインし待機する。しばらくしてふと、コンビニの端末に行けば、スマホと一緒に操作できるなと思いたち、ローソンへと出かけることにした。ローソンに着き、チケットを呼びだすための番号をローソンの端末に入力するも、見つかりません、の文字。不思議に思ったけれど、あ、そうかセブンイレブン専用の端末の番号かと気づき、慌ててセブンイレブンへと向かう。セブンイレブンに販売開始時刻の10分前に到達、端末の前に陣取り、番号を入力して、正しいかを確認し、待機をしていた。
 すると9時57分頃に、端末の機能の一つであるコピー機を使いたいという老人が近寄ってきたので、丁重に断ったが、老人が、使っていないんだったら少しだけ先に使わせても良いだろ的なことをグチグチと言い始めてごね始めるというクソイベントが発生してしまった。改めて丁重な断りを装ったトゲのある口調で追い払い、無事、販売1分前には改めて端末に向き合うことが出来た。この老人が手にしていたのは、蝶々の写真とその横に何かが殴り書きされた紙をコピーしようとしていて、一分一秒を争うものじゃねえだろと言いかけたが、飛沫感染を避けるために大声は出さなかった。SDGsについてのウィキペディアを読んで、価値観をアップデートしておいてよかった。
 10時になるや否や、操作に取りかかる。チケット取りも久々だし、焦りもあって指先が覚束ないなか、操作を続けていき、購入の最後の手続きまで、到達する。取れた!のか?心臓の鼓動は早いままで現実感もない。そんな浮遊した気持ちのまま、レジで支払いをして、発券をしてもらってもまだ実感が湧かない。帰宅し、子供の手が届かない本棚の高いところにチケットを置いて、一息ついてから、やっと、チケットが取れたんだと嬉しくなってきて、熱いコーヒーを飲んでから、飛行機のチケットを予約した。行けることになってしまったのだ。
 帰宅して調べたら普通にローソンにはローソンの番号もあって、よく仕事で起こすタイプのミスをこんな大事な時にもしてしまった自分に少しだけげんなりしてしまったけれども、もしかしたらローソンだと取れなかったと思うと良しとした。コンビニに行こうという閃きと、ミスによるラッキーでのゲットというのが何とも自分らしい。
 そして迎えた当日、ライブの開場時間の少し前に東京に着き、翌日に帰るというコロナ禍でなければ考えられないスケジュールの遠征。遠征という観点からいうと最悪だった。
 人はパンのみにて生くるものに非ず。遠征はライブのみにて行くものに非ず。たまの東京のために、SNSで美味しそうなお店を見つけたらメモをする癖がいつからか付いているが、行けていないお店がどんどん溜まっていっている。ただでさえ、一度行ってリピートしたいお店も大量にあるというのに、今回の遠征で食べたのは、チェーン店のテイクアウトと、コンビニの弁当。
 赤坂の「かおたん」から始まり、新宿のりんご飴専門店「ポンパドール」、友人と新宿の「四文屋」で飲みながら、見てきたばかりのライブの話とSNSでは話さないような芸人の悪口を言いたい。赤坂のレモンサワー専門店「瀬戸内レモンサワー専門店 go-go」、東京駅の「メルヘン」、新宿の「いわもとQ」、高円寺の「まら」、祐天寺の「ばん」、三軒茶屋のかき氷「バンパク」、少し遠出して、埼玉県の「正直もん」からの所沢航空公園で「エミール」のシュークリームを頬張る。下北沢のエビ専門店「シモキタシュリンプ」、神保町の「ボンディ」と「さぼうる」。「TSUBASA COFFEE」「飴のち珈琲、ところにより果実」というめちゃくちゃ美味しそうなパフェを食べたいし、新宿の「焼きあご塩らー麺 たかはし」にもまた行きたい。下北沢の「Rojiura Curry SAMURAI」のスープカレーを食べて腹パンパンになりたいし、阿佐ヶ谷の「シンチェリータ」で最高に美味いアイスクリームも食べたい。猿田彦珈琲店でコーヒーを飲んで一息ついて格好付けたいし、ルノアールナポリタンを食べながら、ブログの下書きをダラダラとしたい。下北沢の古着屋の「ニューヨーク」に行って、アロハシャツとか探して、そこから下北沢の眠亭で、ご飯が炊かれ 麺が茹でられる永遠を感じたい。ビールが苦手と思っていたけれど、麦で作られた麺が好きでコーヒー飲むくらい苦味が好きなんだからビール絶対好きじゃないとおかしいだろという理論を唱え始めたから新宿のクラフトビールの「BEER BOMB」にも行かないとだし、代々木の「Bistro ひつじや」で、焼きバナナの上にアイスクリームが乗ったデザートも食べたいし、寄席に行ってから上野の「みはし」の白玉クリームあんみつを食べながら、「問わず語りの神田伯山」の駄目なところと良いところを語り合いたい。
 それらが出来ない遠征には何の意味もなく、感染拡大防止対策を徹底したうえで、東京に行っても楽しくなかった。感染拡大防止対策を徹底して旅行に行ってきましたとSNSに載せていても、嘘つけ!路上飲みしてるだろ!と言われるのがいやなので、どういうことをしたのかというと、KF94という高性能とされているマスクの上からさらにマスクをし、医療用のゴーグルをし、お店での食事を避け、ホテルもカプセルホテルを辞め、その都度うがい手洗いを行い、極力何も触らず、手すりなどに触れば持っていったアルコールで消毒、ライブ前にライブ会場の近くの公園で1時間近くぼーっと座って、伊集院光爆笑問題田中裕二のピンチヒッターを務めた「爆笑問題の日曜サンデー」を聞くという、自分で考えられる徹底を遂行しました。これで感染したら已む無しというレベルまで持っていったつもりだ。こんなもの何も楽しくない。良いことと言えば、会場であるよみうりホールから少し歩いたところにある数寄屋橋公園岡本太郎が作った、太陽の塔の赤ちゃんみたいなオブジェを見つけたことくらいと、遠征に役立つはずと思って購入してから半年経過したapplewatchが役に立ったくらいだ。
 公園のベンチに座っていてもすることが無いので、Twitterを眺めていると、グッズはかなり売り切れていたという情報を見かけた。そうか、と思い早めに行くことに。そう決めたところから、耳元から聞こえるラジオの内容が入って来なくなるくらいにはまた胸の鼓動が早くなりだしていた。
 開場20分前。太陽の塔の赤ちゃんに別れを告げ、よみうりホールへと向かうことにした。
 さて、良いところですが、お時間となりました。

 続きはclubhouseでの朗読を予定していますのでそちらでお楽しみください。


 バンバン!!(張扇で豚の背中を叩く音)