石をつかんで潜め(Nip the Buds)

ex俺だって日藝中退したかった

第42回ABCお笑いグランプリでカベポスターが披露した二本目のコントが凄まじかった件について覚書

 設定は、ワールドカップの決勝を見ている男の家に友人が訪ねてくる。男は今日が誕生日で、友人はその誕生日をお祝いしたい様子だが、男は試合が気になるので、対応はおざなりだ。友人は友人でそんなことを気にせず、男を誕生日へのサプライズの手品を続けて、男を驚かせようとする。
 カベポスターの漫才は、友人を演じるのが永見がボケで、男を演じる浜田がツッコミで、基本的には、永見が独特のロジックを延々と展開させて、浜田が何とかついていこうとするという構図がメインだと認識している。
 漫才では、ボケが話しを展開させつづけ、ツッコミとコミュニケーションをとらずにネタを終えるというつくりのネタはままある。カベポスターの漫才では、永見の目線は観客に向けられ続け、浜田の目線は永見に向けられ続ける。目線がクロスすることなく、垂直であり続ける。今回のコントで衝撃を受けたところは、視線が垂直のままキープされ、基本的にはクロスしないまま終わるところだ。全く関係のないボケの傍観者としてツッコミ続けるのはあるが、このコントはそれらとは何か一線を画している。
 それは、きっと、この二人の関係性があるからだろう。友人同士なのに、視線がクロスしないということがこのコントの凄さを際立たせているのかもしれない。
 明確に仲が良い友人であるということは、ワールドカップの決勝の日に家に来ることを許可している、誕生日のプレゼントを用意するコントの設定で掴める。コントの前日に「明日お前の家に行っていい?」「来ても良いけど、ワールドカップ見るから、かまえないぞ」というやり取りがあったことが容易に想像できるわけだ。
 また、ワールドカップと友人の手品という対比もまた絶妙だ。友人が来ても視線がテレビにくぎ付けになるということに違和感がなく、全くの観客から当事者になってしまうというその悲劇の舞台としても突飛過ぎないし、コントを見ている人間も男に起きていることの壮大さを想像しやすい。その対極にある、友人からの誕生日プレゼントとしての手品というのも、絶妙に聞き流す、興味が無いものとしてリアルで最適解だ。
 手品の規模の大きくなり具合も気持ち良かった。

 一回しか見ていないので、間違えているところあるかもしれませんが、覚書として記録しなければいけないコントだと思いました。